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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百五十五話・嫉妬の魔王の因縁



数百を越える魔王軍の軍勢がたった一人のマルク目掛けて津波のように押し寄せてきた。

迫り来る軍勢を前に気を引き締めながら身構えるマルク。

だが、突如城の方角から水色の一筋の光が物凄いスピードで飛び出してきた。

兵士達とマルクの間に割って入るように水色の光は流れ星の如く地面に突き刺さった。


「な、何だ…… !」


落ちた衝撃で轟音が鳴り響き、砂埃が舞い上がった。

驚いた兵士達は思わず後退りする。


「アンタが伝説の鎧に選ばれた半魚人(マーマン)ね ?」


水色の光の正体は一人の少女だった。

少女は憎々しい表情でマルクを指差した。


「なんだてめえは、何故このブレスレットを知ってる」


マルクは警戒心を強めながら少女を睨み、身構えた。

突如現れた謎の少女……。

ただ者ではないことは明らかだった。


「まさかてめえ、魔王か ?」

「その通りよ、アタシは嫉妬の魔王レヴィアタン」

「レヴィアタン…… ?」


マルクにとっては聞き覚えのある名前だった。

かつて古代亀の島でレヴィアタンの部下だった海賊達と伝説の鎧を巡って激闘を繰り広げたことがある。


「成る程……てめえがレヴィアタンか……思ってたより幼い見た目なんだな」


マルクはニヤリと小馬鹿にした様子で言った。

確かにレヴィアタンの外見は魔王と呼ぶには少々幼く、その辺の村娘と大差無く見えた。


「アタシの名前を知ってるなんて光栄ね、態度がムカつくけど……言っとくけどこの身体は借り物よ、数千年前、本来の肉体がかなりのダメージを受けたせいで一人の少女の体を乗っ取って傷を癒してたのよ、忌々しい英雄のせいでね」


レヴィアタンはかつての屈辱を思い出しながら悔しそうに唇を噛み締めながら語った。


「だけどアタシってなんて幸運なのかしら……伝説の鎧に選ばれたアンタをこの場でぶちのめして復讐を果たすチャンスが訪れたんだから」


レヴィアタンは嬉しそうに恍惚の表情を浮かべた。


「アンタ達! 手出しは無用よ! この半魚人(マーマン)が無惨になぶり殺される様を見届けるのよ」

「「は……はぁ……」」


レヴィアタンに命令され、トレイギア、ゴブラ達は渋々従い、数百の兵達を下がらせ、闘技場に匹敵するスペースを作った。


「嫉妬の魔王レヴィアタンか……たく、こっそりヴェルを救出してやるつもりが、とんだ大物に目をつけられちまったぜ」


大軍を相手にしなくて済んだのはラッキーだったが、代わりに魔王と一騎討ちをしなければならなくなった。

どちらにせよ、マルクは人生最大の危機を迎えていた。


「悪く思わないでね、恨むなら、伝説の鎧に選ばれた己自身を恨むことね」


レヴィアタンは軽くジャンプをしながら準備運動をしていた。

マルクは緊張から汗で全身がぐっしゃり濡れながら戦闘の構えを取った。


「さあ、始めるわよ !」

「おう !」


数百の兵士達に囲まれながら、覚悟を決めたマルクと殺意を露にするレヴィアタン。

両者は同時に大地を蹴り上げ、土埃を巻き起こしながら激突していった。




不気味なまでの静けさに包まれた魔王城の城内……。

僅かに配備された見張りの目を掻い潜りながらヒュウはヴェルザードを探していた。


「あいつ……何処にいるんだ…… ?」


幸い殆どの兵士が外に出向いている為、ヒュウは自由に城の中を動き回れた。

そんな時、ヒュウはある部屋の前を通りかかった。

何やら中で複数の話し声が聞こえる。


「何だ……? 誰かいるのか…… ?」


気になったヒュウは扉にそっと近付き、耳を傾けた。


「どうして私達は待機ですの!? 私達だって戦いたかったですのに! 」

「まあまあレヴィさん、落ち着いて」


部屋の中では小さな悪魔の少女レヴィが駄々をこねていた。

どうやら悪魔三銃士(メフィラストリニティ)はヴェルザード親子の監視を任され、研究室から一歩も出るなと命令されていたようだ。


「二人が勝手な行動起こさないよう見張るのも大事な仕事だゾ」

「そうっすよ、だから落ち着きましょう」

「何を呑気なこと言ってますの? 私達は戦力外通告されたも同然ですわ !?」


ライナーとサイゴが宥めるも、レヴィの不満は止まらなかった。


「はぁ……どうすんだよ親父……」

「どうするって言われても……」


ヴェルゼルクは気まずそうに息子から目線をそらしていた。


「たく、兵士達が出払ってる今こそ脱出のチャンスかと思ったのに、これじゃ身動き取れねえぜ」


ヴェルザードは小声で愚痴を溢した。

本来ならばレヴィ達を蹴散らして脱出するのは訳はないのだが、特殊な拘束具で魔力を封じられている。

それに、無力な父親を連れて逃げ出すなど到底無理な話だった。


「はぁ……こうなったら暇潰しに外の様子でも見ますわよ」

「それが一番ですよ」


レヴィは魔王から承った水晶を取り出した。

水晶にはマルクとレヴィアタンが戦っている様子が映し出されていた。


「マルク…… !?」


ヴェルザードは水晶に映ったマルクに気付き、飛び付くように近付いた。


「ちょっ、くっつかないでくださいまし」

「……何であいつ一人だけなんだ……他に仲間は…… ?」


ヴェルザードは取り乱した様子で水晶を眺めた。

マルクが戦っているのは嫉妬の魔王レヴィアタン。

到底一人で太刀打ち出来る相手では無い。


「お気の毒ですが……あの半魚人(マーマン)はもう助からないでしょう……」


ライナーは一度共闘した事がある為、罰が悪そうに答えた。


「こうしちゃいられねえ !」


ヴェルザードは血相を変えて部屋を出ようとした。


「こら、お待ちなさい !」

「アンタは今人質ですよ !」


ライナーは全身に巻かれたロープを巻き付け、部屋を出ようとするヴェルザードを取り押さえた。


「それに、どの道今のアンタは魔力を封じられてまともに戦うなんて出来ないですよ !」

「うるせえ、離せ !」


ヴェルザードは興奮しながら拘束を無理矢理ぶち破ろうとした。

そして怒りと焦りが勝ったのか、拘束具の力で弱体化してるのにも関わらず、ライナーのロープを引きちぎってしまった。


「うわっ !」


床に叩き付けられるライナー。

ヴェルザードは脇目も触れず、研究室の扉を乱暴に開け、部屋を出てしまった。


「いでっ」


丁度扉の前で顔を近付けていたヒュウとヴェルザードはぶつかり、勢い良く転倒してしまった。


「たく、乱暴だぜ……全く……」

「いてて……ってヒュウ……」


尻餅をつきながらヴェルザードはようやく目の前のヒュウの存在に気付いた。


「よ、助けに来てやったぜ、親友」


ヒュウは額を擦りながら涙目で笑顔を浮かべた。


To Be Continued

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