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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百五十話・エルサvsアスモデウス



魔界へ続く人通りの少ない道でエルサと色欲の魔王・アスモデウスの一騎打ちが始まった。

キンキンと刃と刃が激しくぶつかり、金属音が木霊する。

一目惚れしたアスモデウスはエルサを自分のものにしようと目論んでいた。


「まずは小手調べをさせてもらうよ」


アスモデウスは己の身長の二倍はある長い太刀を器用に使いこなし、エルサを圧倒する。

彼女もかなりの達人だが、アスモデウスの剣術はそれを上回っていた。

風圧を巻き起こしながら放つアスモデウスの剣撃は速く、鋭く、エルサは防戦一方だった。


「長い眠りから目覚めて、数千年ぶりに外の世界を見てみたけど、暫く見ないうちに結構レベル高い娘が増えたね! 中でも君は別格さ !」

「お喋りをしていて、随分と余裕なんだな」


剣を振るいながら熱く語るアスモデウスに対し、エルサは押されながらも冷ややかな視線を送った。


「余裕が無いのは君の方だと思うよ」


アスモデウスは更にスピードを上げた。

益々加速する動きにエルサは剣で攻撃が防ぎきれなくなっていた。


ズバッ ズバッ


「うわっ !」


かまいたちに襲われたようにエルサの両腕に切り傷がいくつか刻まれる。

激痛が体を巡り、思わずエルサはアスモデウスから距離を取った。

もう一度構え直そうとしたが、そこで彼女は異変に襲われた。


「な……何だ…… ?」


突然立ち眩みがし、脱力感に教われながらふらつくエルサ。

その様子をアスモデウスはニヤリとしながら眺めていた。


「どうしたんだい、調子が悪いみたいだけど」

「くっ……」


エルサはキッとアスモデウスの持つ剣を睨み付けた。

刃には紫色の雫が滴っていた。

アスモデウスは毒属性使いなのだ。

毒が傷口に入り込み、内側から肉体を壊死させてしまう。


「その剣……毒が塗ってあるな……」

「その通り、しかもただの毒じゃないよ、普通の人間なら、掠り傷だけでも致命傷さ、最も君レベルならまだ耐えられるだろ? 」


全身に毒が回るのが早かったのか、エルサは苦しそうに呻き声を上げ、身体中をかきむしりながらその場で膝をついた。


「悪いことは言わない、敗北を認め、僕の女になると宣言してよ、そしたら解毒薬をあげる、いつまでも我慢したくないでしょ ?」


薄ら笑いを浮かべ、甘い言葉で誘惑してくるアスモデウス。

だがエルサはニヤリと口角をつり上げた。


「確かに強力な毒だ……私で無ければとっくに力尽きていただろう……」


エルサは先程までのたうち回っていたのが嘘のように、ケロッとしながら立ち上がった。

アスモデウスは意外そうに驚いていた。


「私には毒は効かん、以前散々毒に苦しめられたお陰で耐性が出来たからな」


得意気に胸を張るエルサ。

彼女はかつて虫の魔獣の毒針に射たれ、死の淵に立たされた事があった。

その他にも虫の魔術師シャロンとの戦いで毒を打ち込まれた経験もあり、毒に対する耐性はエルフの中でも群を抜いていた。


「そうか……苦痛じゃ君を屈服させられないね」


アスモデウスは少しがっかりしていた。


「だけど実力では僕の方が上……戦局は変わらないよ」

「どうかな……? 私はまだまだ全力では無いぞ」


エルサは深く息を吸い込み、腰を低く落としながら剣を構え、アスモデウスに突き刺すように視線を向けた。

冷たい殺気を感じ、アスモデウスは少しドキッとした。


「行くぞ !」


エルサは竜巻を纏いながら加速し、アスモデウスに突撃した。

先程までとは比べ物にならないスピードで剣を打ち込み、アスモデウスを果敢に攻め立てた。

アスモデウスは呼吸を止めながら意識を集中させ、彼女の剣撃に対処した。

だが時間が経つ度にエルサのスピードは上がっていき、今度はアスモデウスが劣勢になっていった。


「はぁぁぁっ !」



エルサは大きく剣を振りかぶり、風を真っ二つにする勢いでアスモデウスの頭上に振り下ろした。

アスモデウスは僅かに反応が遅れ、余波に巻き込まれ、かなりの距離を吹っ飛ばされていった。


「くぅ……」


これがハイエルフの本気……。

無限(メビウム)結束(ユナイト)のメンバーの中でも屈指の戦闘能力を誇るエルサ。

魔王であるアスモデウスですらも遊んではいられなくなった。


「良いね、この強さ……益々君が欲しくなった」


アスモデウスはペロッと舌舐めずりをした。

エルサは不気味に感じ、鳥肌が立った。


「僕は君を手に入れる為なら、手段は問わないよ、全ての美しき女性は皆僕のもの……色欲の魔王・アスモデウスのものなんだからね !」

「悪いが私は恋愛に興味は無い、この世界の平和の為、君を倒す !」


エルサの思いは揺らがず、アスモデウスをばっさりと切り捨てた。


「簡単に手に入らぬからこそ、価値があるんだね……面白い、僕の力で君を虜にしてあげるよ」


アスモデウスは剣についた毒の液体をねっとりと舐め取りながらエルサを見つめた。

まだまだ奥の手を隠し持っている。

エルサは警戒心をグッと強め、剣を強く握り締めた。


To Be Continued

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