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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百三十九話・暴食-グラトニー-



暴食の魔王・ベルゼブブはグレンを体内に吸収した。

更に本来の姿、巨大な蝿の怪物へと変身した。

グレンを失った今、クロス達は絶体絶命の窮地に立たされていた。


「……よくも弟を……魔王だがなんだが知らないけど、叩き潰してやるよ !」


怒りに身を震わせながら、棍棒を片手にブラゴはベルゼブブへと走り出した。


「ちっ……なんて無謀な…… !」


デュークはブラゴを心配し、鎌を握りながら彼女の後に続いた。


「どうしよう……グレンが死んじゃった……」


コロナは膝をつき、顔面蒼白で取り乱していた。


「しっかりしろコロナ、あいつはそう簡単に死ぬタマじゃない! それにグレンはベルゼブブに丸呑みされた……つまり、まだ五体満足で救出出来る可能性があるってことだ !」


正気を失いつつあるコロナをクロスは必死に説得した。


「今立ち向かわないとブラゴさん達も犠牲になるかもしれないんだ! コロナ !」


クロスはコロナの肩を揺さぶった。

コロナは涙を浮かべながらも首を縦に振り、立ち上がった。


「よし、行くぞ……手遅れになる前に……」


クロスの言う通り、グレンの命は完全には消えてはいなかった。

魔力の低いその辺の低級魔族と違い、魔力の高い者を完全に消化するにはかなりの時間がかかる。

時間が早ければ早い程助かる可能性は高くなる。

今は一刻を争っていた。


「グレンを返せぇぇぇぇ !」


ブラゴは鬼のような形相で棍棒を振り回し、後先考えずにベルゼブブに打撃を与えた。

だがオーガ族の中でも最強と言われた戦士長の攻撃はベルゼブブのダイヤモンドよりも硬い肉体にはひびすら入らなかった。

鈍く重い打撃音が虚しく響き渡る。


「幹部クラスの私が敵うはずも無いが、やるしかない! 死神(ジード)(サイズ)鎌刃(リッパー) !」


ブラゴを援護する為、デュークは鎌を力一杯一振りし、波状の光弾を放った。

しかしベルゼブブの体が光弾をあっさりと弾いてしまう。


「鬱陶しいわね !」


ベルゼブブは背中の巨大な羽を羽ばたかせた。

重く轟く羽音と巻き起こる風圧により、二人は意図も容易く吹き飛ばされてしまった。


「「うわぁぁぁぁぁぁ !」」


オーガ族最強の戦士長も元魔王軍幹部ですらもベルゼブブの前では赤子も同然だった。


「手応えがないわね、まださっきの子供の方が根性あったわよ」


地べたに這いつくばるブラゴとデュークを見下しながら冷笑するベルゼブブ。

その時、彼女の足元に無数の黒い手が出現した。


「何よこれ」


黒い無数の手はベルゼブブを包み込むように全身にまとわりついた。

クロスの技の一つ (シャドー)(ハンド)だ。


「こんなものでアタシの動きを封じたと思わないで !」


ベルゼブブは全身に力を込め、無理矢理影を引きちぎろうともがいた。

だが間髪入れずに今度は竜巻の牢獄が彼女を襲う。


「よし……やった…… !」


コロナは思わずガッツポーズを決めた。

二重の拘束には流石のベルゼブブも簡単には逃れられなかった。


「コロナ、このまま抑えていてくれ、後は僕がグレンを助ける !」

「うん…… !」


クロスは小さなカラスに姿を変え、翼を羽ばたかせながら加速し、低空飛行でベルゼブブに向かっていった。


「はぁぁぁぁぁぁ !」

「ふん……魔王を舐めないで頂戴 !」


ベルゼブブはおぞましい唸り声を上げると無理矢理拘束を引きちぎった。

そして一直線に突撃してくるクロスを黒い巨体から繰り出される体当たりで返り討ちにした。


「がはっ !?」


無情にも地面に叩き落とされるクロス。

全身の骨がぐちゃぐちゃだ。


「クロス! 今治すから…… !」


コロナはすぐに倒れたクロスへ駆け寄り、(ヒーリング)しの(ドロップ)をかけた。

どんな重傷を負っても完治できる魔法により、何とか一命を取り留めた。


「た……助かった……」


ホッと胸を撫で下ろすコロナ。

だが、息つく暇は無かった。

物凄い速さでベルゼブブがコロナ達の方へ突進してきた。


「きゃっ !」


ベルゼブブは六本の脚を巧みに操り、鮮やかな手腕でコロナを拐い、大空へと飛んでいった。


「こ……コロナァァァァァ !」


クロスの悲痛な叫びが空へ虚しく響いた。


「は……離して…… !」


六本の脚に鷲掴みにされながら必死に暴れるコロナ。

だがベルゼブブは加速しながら更に上昇する。


「今はオーガの子供を消化して最中だからアンタを食うのは後にするわ、アンタの回復魔法は厄介ね、先に潰しておくわ」


ベルゼブブの狙いは回復役のコロナを真っ先に倒すことだった。

空高くから叩き落とし、確実に息の根を止めるつもりだ。


「アタシに刃向かう者は全員殺してあげる! アタシの胃袋の中で血肉となるのよ !」


地上が見えなくなるまで飛んだベルゼブブはいよいよコロナをこの高さから落とそうとした。


「う…… !」

「アンタ達はみーんなアタシの餌! それ以外に価値なんてないのよ !」

「価値……があるかどうかは……私達が決める……私は……貴女の餌には……ならない…… !」


今から殺されそうになっているにも関わらず、コロナの瞳はまだ死んではいなかった。

恐怖を強引に押し殺しながら、邪悪な化け物を睨み付ける。

コロナの杖の先端が輝きを放ち始めた。


「この状態で何が出来るのよ ! さっさと殺すわよ、後で死体になったところを貪ってあげるから !」


ベルゼブブはコロナの気迫に気圧されながらも地上へ叩き落とす準備を始めた。


「グレン……今助けるから ! 」


コロナは杖を構え、ベルゼブブの巨大な口に標準を合わせた。


(ヒーリング)しの波動(ウェーブ) !」


コロナはベルゼブブの口目掛けて水の波動を発射した。


「んんっ……何これ…… ! 体が癒されてく……! 馬鹿ね、血迷ったのかしら? 敵であるアタシを回復させてどうすんの ?」


コロナの放った水の波動を飲み干しながら嘲笑うベルゼブブ。

だがこの時彼女は気付いていなかった。

コロナの意図を……。


バリバリバリ


「うぐっ……何よ……急に痺れが…… !」


突然ベルゼブブは謎の痺れに襲われた。

体の内側から電流が突き抜ける。

やがてベルゼブブは落雷に撃たれたかのように全身感電した。


「ぎ……ギャアアアアア !」


空中でのたうち回りながら絶叫するベルゼブブ。

ベルゼブブは電撃の正体に気付き、苦しそうに大きな何かを吐き出した。


「よし……死ぬかと思ったぜ…… !」


ベルゼブブが吐き出したのは全身唾液にまみれたグレンだった。

コロナは敢えて回復魔法をベルゼブブに直接注ぎ込み、体内で溶かされていたグレンにエネルギーを与えたのだ。

元気を取り戻したグレンは体内で暴れ、ベルゼブブからの脱出に成功したのだ。


「きゃあっ !」


ベルゼブブから振り落とされたコロナは地上へとまっ逆さまに落ちようとしていた。

だがグレンは急かさずコロナをお姫様抱っこした。


「ありがとう……グレン……」

「こっちのセリフだぜ」


グレンはコロナを抱き抱えたまま急降下していた。

このままでは二人とも助からない。


「心配すんな、俺に任せろ」


グレンは微笑みかけると全身に雷を纏い、落雷のように神速の勢いで一直線に落下していった。


To Be Continued

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