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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
鳥人の娘編
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第三十二話・銀の翼



魔獣の襲来により、盗賊団達は逃げ出した。

しかし、一難去ってまた一難。魔獣は私達に狙いをつけた。


「ミライちゃん…… !走れますか…… ?」

「う……うん…… !」

「よしっ…… !」


私達は一か八か、二人三脚の要領で縛られたまま走り出した。

魔獣は何処までも追いかけてきた。

無我夢中で走り回る中、私達は偶然にも小さな抜け道を見つけ、そこに逃げ込み、何とか魔獣をまくことが出来た。




ここはかつて蜘蛛の魔獣と戦った時に避難した場所だ。

あの時はエルサが毒に侵され、どうなることかと肝を冷やしたな……。


「はぁ……どうしよう……外れない……」


硬く縛られた鎖はそう簡単に抜け出せるものでは無かった。それにランプを奪われ、頼りになるリトもいない。

せめて剣が使えれば……。


「あ !そうだ~ !」


唐突にミライが声を上げた。


「ど、どうしたんですか ?」

「私、翼を硬くすること出来るの忘れてたよ~」

「硬く…… ?」

「見ててね~うぅぅぅぅぅ~ !」


ミライは顔が赤くなるほど力んだ。すると、汚れの無い白い翼が徐々に銀色に染まって行った。


「す……すごい……」

「名前はね~確か~(シルバー)(ウィング)だったかな~」

「そのまんまですね……」


ミライは強引に銀色に染まった翼を広げると、硬く縛られた鎖をいとも簡単に引きちぎった。

彼女には自らの翼を硬化する能力があるようだ。


「良かったぁ……やっとはずれた……」

「えへへ~もっと早く気づけば良かったね~」


私達はホッと一息ついた。だが悠長にしてる場合ではなかった。


「そうだ……リト……ランプを取り返さなくちゃ……」

「リトって……誰だっけ~……」


もう忘れてる……。


「えっと……炎の魔人で……。私にとって大切な人……です……」

「あ~、そうだった~思い出した~」


ミライは相変わらず忘れっぽかった。


「とにかく、一刻も早くランプを取り戻しに行かないと !ミライちゃんはここに隠れていてください」


私は立ち上がり、ミライの肩をポンと掴んだ。


「嫌だ、私も一緒に行くの !」

「え ?」

「私……ワカバちゃんにいっぱい助けられた……だから今度は私がワカバちゃんの力になるんだ」


ミライはいつになく真剣な表情だった。


「ミライちゃん……分かりました…でも無茶はしないで下さいね」


ミライはニコッと微笑んだ。


「分かったよ~」


私達はリトを取り返そうと決意を固めた。




一方こちらは森の奥深くに存在する盗賊団「(フリーズ)える鳥籠(バードケージ)」の秘密基地(アジト)


私は主に仕えしランプの魔人、リトです。不覚にも盗賊団のリーダー、ローヴとかいう男に捕まってしまいました。主がそばにいないのでなす術がありません……。


盗賊達は皆酒を飲んでいます。ローヴは高価そうなワインを飲みながら私の宿るランプを眺めていました。


「ふ~魔獣が出た時はどうなることかと思ったが、何とか逃げきれたぜ~。それに魔人の宿ったランプが手に入るなんて超~ラッキー ♪どっかの闇ギルドに高値で売るか~、俺達の切り札として取っておくか~」


ローヴは上機嫌でした。

その憎たらしい顔、今すぐ黒焦げにしてやりたいですよ。


「ふん、私は既に主と契約で結ばれてるのですよ。貴方には絶対に使いこなせません」

「実際に使えなくてもいい。だが強い力ってのは、存在するだけで抑止力になるんだぜ~ ?」


ローヴは意味深に笑みを浮かべました。


魔人(イフリート)という悪魔的な力をちらつかせるだけで大抵のやつらは恐れをなし、俺達に屈するようになるんだぜ ?楽で最高だろぉ ?」

「哀れですね、弱いものにしか強気になれないとは……盗賊団は臆病者の集まりなのですか ?」


私は嫌みったらしくローヴを煽りました。


「それはお前もだろぉ ?」

「何ですって ?」


逆上するかと思いきや、意外な答えが返ってきました。


「お前も自分の強さに酔い、格下の連中を相手に無双し、気持ちよくなってるだけ~。俺らと何ら変わりはしねえ~」


この男、痛い所をつきますねぇ…確かに今まで格下としか戦ってきませんでしたが……。


「所詮お前も俺も本質は同じ~、だったら敵対するより互いに仲良くなった方がWinWinじゃねぇの~ ?」


ローヴは口角をつり上げ、ニヤリと笑いました。


「私はあなた方のように欲望のためだけに戦ってるわけではありません。あらゆる脅威から主を守るために戦っています」

「魔人のくせに正義の味方気取りな発言……イライラするぜ~」


ローヴは気味悪くニヤニヤしていました。


「それに、主が私を奪い返しに助けに来るはずです」


ローヴは馬鹿にするように高笑いをしました。


「お前バッカじゃねぇの~ !?あんな小娘が助けに来るわけねぇじゃ~ん !精々あの白い魔獣の餌になって終わりだぜ~」

「主をただの小娘呼ばわりとは、人を見る目がありませんね。あの方は厳しい修行を重ねて強くなりました。あなた方など目ではありません」

「俺の(メタル)抱擁(チェーン)の前に苦しみ喘いでいたやつがぁ?笑わせてくれるぜ~ !」


私は主を侮辱されイライラしましたが、グッと堪えました。

主は絶対に助けに来ます !私と主は硬い絆で結ばれているのです !


ってこれじゃあ私はヒロインみたいじゃないですか !


「頭、これからどうしますか ?」


真面目そうな手下の一人が、すっかり出来上がったローヴに話しかけました。


「さぁてな ?あの小娘達が助けに来ないとも限らないし、その時は今度こそ奴等を捕らえ、奴隷にしてやるぜ~。俺達盗賊団は欲張りだからよ~ヒャヒャヒャ」


ローヴは下卑た笑い声を響かせました。



この屑共め……。私が実体化(リアライズ)した暁には徹底的に恐怖を叩き込んで差し上げますよ…… !

主、私は決して屈しません !だから主もこんなやつらに負けないでください !


To Be Continued

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