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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百三十六話・オーガの里の危機



魔王軍の勢力は全国へ広がりつつあった。

人間の住む国や都市に留まらず、半魚人(マーマン)の村、オーガの里、聖霊の森など、広範囲に及んでいた。




そしてグレンの故郷でもあるオーガの里にも魔王軍の魔の手が迫りつつあった。

里の入り口前の周辺を有象無象の魔族達が取り囲み、オーガ達が迎え撃つ。


「アンタ達! 一歩も里に近付けさせるんじゃないよ !」

「はい! ブラゴ戦士長 !」


グレンの年の離れた姉にして戦士長であるブラゴが指揮を取り、大勢のオーガの戦士達と共に魔王軍の侵攻を必死に防衛していた。

オーガ族は力が強く、並の魔族よりも高い戦闘能力を持っている。

だがそれでも数百もいる軍を里の戦士達だけで相手にするのは流石に厳しく、苦戦は免れなかった。


「全く、何でこの私がこんなことをせねばならんのだ !」


グチグチ文句を言いながら鎌を振るい兵士達を薙ぎ払う男がいた。

彼はオーガでは無く、デュラハンのデュークだ。

かつては魔王軍幹部「憤怒(サタン)災厄(カラミティ)」としてオーガの里を襲撃したがワカバとエルサのタッグに敗れ、捕虜となり、愛馬のコシュタバウワーまでも奪われてしまった。

現在はブラゴの家に厄介になり、雑用係をやらされている。


「デューク、口じゃなくて手を動かしな !」

「分かってますよブラゴさん !」


文句を言いながらも素直に言うことを聞くデューク。

最初こそオーガ族の捕虜にされ、屈辱だったが次第に慣れてすっかり里に馴染んでしまっていた。

現魔王軍を蹴散らすことにも抵抗は無い。


「次から次へと湧きやがって……さっさと降参しろ !」


デュークは鎌を大きく振り回し、衝撃波を放って兵士達を切り刻んでいく。

辺り一面は血塗れになっていった。


「はぁ……はぁ……でも流石に疲れてきたね……もう腕が痺れてきたよ……」


長時間ぶっ通しで戦い続け、ブラゴの腕に限界が訪れようとしていた。

その隙を狙い、魔族の一人がブラゴに飛びかかる。


「危ない! ブラゴさん !」


デュークが叫んだ瞬間、魔族の頭上目掛けて落雷が直撃した。


「ぎゃあああ !?」


魔族は絶叫し、黒焦げになりながら崩れ落ちていった。

ブラゴは驚きながら上空を見上げると、三体の小型のドラゴンに跨がった三人の少年少女達の姿があった。

グレン、クロス、コロナの三人による無限(メビウム)結束(ユナイト)年少組だ。


「グレン……それにアンタ達も……」

「ただいま姉ちゃん、俺も助太刀するぜ」


安堵の表情を浮かべるブラゴに対してグレンは微笑み返した。

三人はドラゴンから降りて兵士達の前に立ち塞がった。


「何だこのガキ共は」

「俺達とやろうってのか ?」


兵士達によって三人はあっという間に取り囲まれた。

まさに逃げ場無しの袋のネズミ。


「おいおい……あれは不味いんじゃないですか ?」

「心配いらないよ、あの子達は特別さ」


ブラゴは笑みを浮かべながら腕を組み、三人のことを見守った。


「行くぜクロス、コロナ! 魔王軍から姉ちゃん達を助けるんだ !」

「了解」

「ま、任せて !」


グレン、クロス、コロナは竜の里で鍛えられ、想像を越えるパワーアップを果たしていた。

その小さな体で並みいる敵達を次々となぎ倒していく。

気が付けばものの数分で相当の数の兵士達が辺り一面に転がっていた。


「こいつら……子供の癖につええ……」


残された数十人の兵士達は彗星の如く現れた三人の子供達の実力を思い知り、震え上がった。


「何だあの小僧……前戦った時よりも魔力が上がっている……」


一度交戦したことのあるデュークもグレンの成長ぶりに驚いていた。


「見違えたね……三人とも……」


ブラゴは三人の逞しい背中を見て、胸が熱くなっていた。


「何だ、大したこと無かったな」

「俺達が強くなりすぎたんだよ !」


グレンとクロスは互いに顔を見合わせながら拳をぶつけた。

コロナは二人の様子を微笑ましく見つめていた。


「へえ~、何だか面白い展開になってきたわねえ」


グレン達は異様な気配を感じ、空を見上げた。

すると上空には巨大な蝿のような羽を生やした女が浮遊しながら地上を見下ろしていた。


「ふふふ……最初の獲物は貴方達に決定ね」


女はニヤリと不敵な笑みを浮かべながらいやらしく舌舐めずりをした。


To Be Continued

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