第三十一話・凍える鳥籠
私とミライの前に、鎖を自在に操る飄々とした青年が現れた。
私達は瞬く間に鎖によって縛り上げられた。
「主 !貴方……不意打ちとは卑怯です よ!」
ランプの中でリトが青年に向かって吠えた。
「卑怯~ ?俺達盗賊団にとっちゃ最高の褒め言葉だぜ~ ?」
男は鎖を巧みに操り、私の懐からランプを捕らえ、奪った。
「あっ…… !」「主 !」
「お前、結構高価そうなもん持ってんじゃ~ん ?……いやよく見たらきたねえな」
男はジーっと奪い取ったランプを見つめていた。
「離しなさい !失礼ですよ !」
「ランプが喋ってるぅ~ ?そっか~ !お前召喚獣か~ !こりゃ高く売れるぜ~ ?ランプきたねえけど」
「一々一言多いんですよ !」
私達は身動きが取れず、ただ黙っているしか出来なかった。
「俺達は、泣く子も黙る盗賊団・凍える鳥籠 !そしてこの俺は~、リーダーのローヴだぜ~ !」
ローヴと名乗る男はゲスな表情を浮かべた。
凍える鳥籠……。こいつらが亜人達を拐って売りさばいてるのか……!
「そこの女 !俺の手下を倒した責任を取ってもらわなくっちゃなぁ~ !」
「貴方達がミライを襲おうとしたからですよ !」
私はキッとローヴを睨んだ。
「お ?その反抗的な目 !たまらないねぇ~ !でも生意気なのは気に入らねぇ~」
急に鎖の力が強まった。鎖が体中に食い込んで血が滲んだ。
「うわぁぁぁぁ !」「きゃああああ !」
私とミライは締め上げられ、痛みからたまらず悲鳴を上げた。
「主 !!!」
「アヒャヒャヒャヒャ!苦しむ女を眺めるのは最高だなぁ !俺も熱くなってきたぜぇ~ !」
ローヴは高笑いをした。
「……み、ミライちゃん……大丈夫ですか……」
「う……うん……大丈夫~……」
私は痛みに耐えながらもミライに語りかけた。
「こんな状況でも他人を思いやるなんて泣かせてくれるねぇ~ !でも~本当はもっとじっくりねっとり堪能したかったんだけど~そろそろ終わらせるか~ !」
ローヴはそういうと指をパチンと鳴らした。
するとローヴの後ろからゾロゾロと盗賊達が沸いて出てきた。
「お前らは~袋のネズミ !もう逃げられないぜ~ ?」
盗賊達はジリジリと私達を囲んだ。
「うぅ……怖いよ~……」
ミライは恐怖のあまり、泣き出しそうになっていた。
「大丈夫ですよ、ミライちゃんのことは、私がきっと守りますから」
私はミライを励ました。
「うぅ……ワカバちゃん…」
「おっと !淡い希望を抱くとかえって苦しむことになるよ~ん ?」
ローヴは不意に距離を詰めてきた。
そして懐から短剣を取り出した。
「早速だけど~、そこの鳥人ちゃ~ん ?その翼、刈り取らせてもらうぜ~ ?」
「ひっ…… !」
ローヴは短剣をペロッと舐めた。
ミライはぞっとしていた。
「そんなこと……させません !」
私はローヴに向かって叫んだ。
「あぁん ?小娘が、そんな格好で何イキってんだぁ !?」
「んっ !」
ローヴは私の頬を強く叩いた。
「お前はこの鳥人の翼がもがれる様を黙って見てろよ~そして己の無力さを呪ってな ♪」
ローヴは短剣をミライに近付けた。
「い……いやっ……!」
「鳥人として生まれたのが運の尽きだぜ~ !」
「やめてください !」
ローヴは短剣を掲げ、降り下ろそうとした。ミライは目をギュッと瞑った。
その時、物凄い雄叫びが聞こえた。
「あぁん ?何だ ?」
寸での所でローヴの手が止まった。
「頭 !あれを !」
ローヴの手下が指を指した。すると、目の前には巨大な魔獣が立っていた。
魔獣は白い毛に覆われた体をしており、大きく長い耳が特徴で、赤く鋭い瞳が光っていた。
「な……何だ~ !?こいつは…… !!」
「わ、分かりません !しかし…あれはただの魔物ではありません !」
「チッ !鉄の鞭 !」
ローヴは長い鎖を魔獣の頭に向かって鞭のように叩き付けた。だが魔獣は微動だにしなかった。
「間違いねえ…… !こいつは魔獣だぁ~ !こりゃ鳥人所じゃねえ~…… !ずらかるぞてめえらぁ~ !」
「はい !」
ローヴは叫ぶと盗賊団達は一目散に逃走した。
「こいつは戦利品として頂くぜ~ ♪」
「主ー!!!」
「あっ…… !こら…… !待ちなさい !」
ローヴはランプを持ってこの場から去った。
私達は縛られたまま放置されていた。
嫌な予感がした。
盗賊団を見失った魔獣は私達に目を向けたのだ。
「や……やっぱり…… ?」
魔獣は私達に向かって襲いかかってきた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」
To Be Continued




