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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百二十話・吸血鬼博士ヴェルゼルク



ヴェルザードが魔王軍に捕らえられてから早くも数日が経った。

古代亀の島から帰還した悪魔三銃士(メフィラストリニティ)はヴェルザードの教育係を任された。

元々顔見知りで因縁ある仲だったが特殊な魔力封じの拘束具を腕に嵌められている為、ヴェルザードは彼等に逆らうことは出来ない。

人質と言うよりは新入りのような扱いだった。


「これから貴方は私達の雑用係ですわ! さあ、まずは私達の部屋を掃除なさい !」


ヴェルザードは調子に乗って命令を言ってくるレヴィに渋々従うことにした。

格下に使われる屈辱に唇を噛み締めながら雑巾で棚を拭いていた。


「あの……レヴィさん、不味いんじゃないですか ?」

「後で仕返しされたりされても知らないゾ…… ?」


嬉々としてヴェルザードをこき使ってるレヴィと違い、ライナーとサイゴは躊躇していた。


「ご安心なさい、今の彼は魔力封じの腕輪で大幅に弱体化していますわ!これで今まで辛酸を舐めさせられた分の復讐が果たせますわよ !」


レヴィは口に手を当て、調子良く高笑いをした。


「はぁ……」


ライナーとサイゴは互いに顔を見合わせながらため息をついた。


「しかし、古代亀の島から帰って来てから、随分と状況が変わりましたね……」

「オラもうついてけねえゾ……」


臨機応変に立ち回ってるレヴィと違い、ライナーとサイゴは魔王軍の変貌ぶりに困惑していた。

軍のリーダーであったミーデは行方不明、かと思えば長い眠りについていた七人の魔王が復活して軍の指揮を取り始めた。

挙げ句に捕らえたヴェルザードの教育係を押し付けられる……

もう訳が分からなかった。


「あれこれ考えても仕方ありませんわ、それよりも今はライバルの少ない中、出世のことだけを考えますわよ !」


レヴィは細かいことまで考えず、ただ真っ直ぐに未来を見つめていた。


(ちっ……今に見ていろ……)


ヴェルザードは舌打ちしながら三人のことを恨めしそうに遠目で見つめていた。




軍のアジトには魔王復活の記念として魔王専用の大部屋が新たに作られていた。

奥には魔王達が座る為の豪華な装飾が施された玉座が七つ並べられている。


「魔王様、ご報告があります」


ペルシアが部屋に入り、赤いカーペットが敷かれた玉座の前に膝をついた。

ミーデに傷つけられた彼女だったが、何とか一命を取り留め、既に復帰していた。


「あのくたばった悪魔(ミーデ)のメイドか……我に報告とは何だ」


サタンは威圧感を放ちながら膝をつくペルシアを見下した。


「はい……約3000のはぐれ者達が我ら魔王軍の軍門に下りました」


ペルシアは七人の魔王達の圧力に震えながらも必死に報告をした。


「そうか……それはご苦労だったな」


上機嫌に笑みを浮かべるサタン。

魔王復活の知らせは既に町全体に広がっており、人生に絶望したり社会から爪弾きにされた者達にとって魔王軍は救いの神だった。

魔王が復活したという事実は大きく、結果としてミーデが統率していた頃より明らかに兵力は増加していった。



「僕らの人望もまだまだ捨てたものじゃないってことだねえ」


得意気になって鼻をならすアスモデウス。

その手には赤く染められた美しいバラが握られていた。


「だがそれでも3000……全盛期には程遠いな……もっと多くの兵士が欲しい……」

「そんなの簡単に上手くいかないわよ」


レヴィアタンはじと目でサタンに冷ややかな視線を送りながら言った。


「あの……魔王様方、実は興味深い研究をしている魔族を捕らえました」


ペルシアは言い終えると、部屋の扉に視線を向けた。

するとギギイッと扉が開く音がし、ペルシア親衛隊のトールとクラッカーが入ってきた。

彼等は二人がかりで一人の白髪の中年男を連れてやって来た。


「誰だ、その男は」

「彼の名はヴェルゼルク……魔族にして、優秀な研究者です」


白髪の中年はヨレヨレで汚れた白衣を纏い、キョロキョロと辺りを怯えた様子で見回した。


「その男が何だと言うのだ」

「彼は死者を甦らせる研究をしているそうです」

「死者だと…… ?」


サタンの目の色が変わり、興味ありげにヴェルゼルクを見つめた。

ヴェルゼルクはビクッと怯え、鳥肌が立っていた。


「この人、よく見たら吸血鬼(ヴァンパイア)じゃない、珍しいわね、吸血鬼(ヴァンパイア)で研究者なんて」


ベルゼブブはクスクス笑いながら言った。


「貴様、ヴェルゼルクと言ったな……死者蘇生の研究について、詳しく聞かせろ」

「は……はい……」


ヴェルゼルクは震えた様子でオドオドしながらも説明を始めた。

答えなければ殺されると判断したからだ。

ヴェルゼルクは亡くなった妻を甦らせることだけを考え、10数年もの月日をかけて死者を甦らせる為の方法を研究し続けていた。

死人を甦らせるなんて倫理観を壊しかねない禁忌を犯すと分かっていながら、ヴェルゼルクは研究に明け暮れた。

そして、やっと完成する直前までたどり着いた所で魔王軍に拉致されてしまった。


「も、もう少しだけ手を加えれば死人の魂をもう一度朽ちた肉体に憑依させ、生き返らせることが可能となるのです…… !」


全身汗だくになりながらヴェルゼルクは必死に語った。

魔王達は沈黙を続けた。

緊張した重苦しい空気が部屋全体を支配する。

ヴェルゼルクは生きた心地がせず、心臓が口から飛び出そうになっていた。


「ふん、面白い人材を見つけてきたな……ペルシアよ、貴様には報酬と側近の位を与えてやろう」


サタンは子供のようにみるみる胸を昂らせながらペルシアに告げた。

ペルシアとトール、クラッカーは膝まづき、頭を垂れた。


「ヴェルゼルクよ、貴様のその力、我ら魔王軍の元で存分に奮うが良いぞ」


サタンはとんでもないアイデアを思い付いていた。

込み上げてくる喜びを堪えきれず、邪悪な笑みを浮かべ、口角を三日月のようにつり上げる。


「サタン……何を考えてるの……」


猫のように拳で目を擦り、眠そうな瞳でベルフェゴールは尋ねた。


「ちまちま軍をかき集めるよりも手っ取り早く駒を増やす方法を思い付いたのだ、クックック」


サタンは玉座から立ち上がるとゆっくりヴェルゼルクのそばに近付いた。


「ヴェルゼルク……我に協力せよ、良いな ?」


目の前に自分の何倍もある長身の男が迫り、顔を近付けてくる。

ヴェルゼルクは半泣きになりながら首を縦に振るしか無かった。

このままだと自分の力が悪事に利用されるかも知れない……そう理解したが眼前にいる巨大すぎる悪の前には逆らえず、屈服するしかなかった。


謎多き吸血鬼(ヴァンパイア)の科学者・ヴェルゼルクの登場により、事態は最悪の展開を迎えることになるとはこの時の私達は知る由も無かった。


To Be Continued

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