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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百十八話・勇者の儀式



部屋に籠っていた私だったが、フレアと話をして少し気が楽になった。

それに、微かだけど希望が見えてきた。

リトはまだ生きている……何処にいるかはまだ分からないけど、きっとまた会える……。


「あの~……ご心配おかけしました……」


私は気まずそうにしながら居間に入ると全員は一斉に視線を向けてきた。


「ワカバちゃん……! もう大丈夫なんですか ?」


リリィはいち早く私の元に駆け寄った。


「ごめんなさいリリィちゃん……でももう大丈夫ですから」

「良かった……」


リリィは私の笑顔を見てホッと胸を撫で下ろした。


「そうだ……君に伝えたいことがあるんだ」


エルサは立ち上がりながら言った。


「この人が君のことを勇者の適性があると言っているのだが……」

「勇者の適性…… ?」


私はキョトンとしていると、ホムラは近付いてきた。


「勇者とはかつて古の大戦を引き起こしたとされる魔王を打ち倒し、平和な世を築き上げた伝説の英雄よ」

「いや……そこまでは知っていますが……」


私は苦笑いしながら言った。


「貴女にはその伝説の英雄ジャスミンと等しい力が眠ってるのよ」


ジャスミン……前にリトが話していた、大昔の彼のパートナーの名前だ。

魔王撃破後に別世界へと飛ばされ、行方不明になったとされる……。

その勇者と私に何の関係があるのは分からなかった。


「何でかは知らないけど、貴女からは勇者ジャスミンと似たような波動を感じるの……とは言え、まだその力は眠ってるけどね」

「ちょっと待ってください、何で貴女はそのことが分かるんですか ?」


私は思わず話を遮った。

ホムラは表情の読めない真顔で答えた。


「何故……? だって私はジャスミンの戦友だから」

「「「ええええええええ !!!」」」


ホムラの言った言葉に一同は驚いて声を上げた。


「ちょちょ、ちょっと待てよ! 勇者ジャスミンは数千年も昔の人間だぞ!? それと同期ってどういうことだよ !」

「待って、 彼女の種族は妖狐よ、数千年もの時を老いることなく生きていても不思議ではないわ」


博識なエクレアの説明に一同は納得せざるを得なかった。

リトやフレアは一度封印されている。

ホムラのように数千年間も生きられる存在は珍しかった。

強いて言えば元魔王軍四天王のゴルゴは数千年も前から存在している。


「で、でも……勇者ジャスミンの戦友なんて、凄いじゃないですか !」

「えっとえっと……! サインください !」


グレンとリリィは興奮を抑えきれずに彼女に近付いた。


「お前ら、落ち着け……」


ザルドは呆れた様子で興奮する二人を嗜めた。


「兎に角……勇者の力を目覚めさせるには、特別な儀式を行う必要があるの……お願いワカバさん、一緒に私の故郷に来て欲しい……」


ホムラは私の手を取りながら頼んできた。


「待て待て、話が急すぎるぞ、大体ワカバはまだ……」

「何が急なのよ、既に魔王は復活し、イフリートすらも消したのよ、いつ軍を率いて人間界を襲撃するか分からないそれは今すぐかも知れない……悠長にしている時間は無いのよ」


力強く言う彼女の言葉に、一同は何も言えなかった。

確かにホムラの言う通りだ。

今の戦力で魔王七人とその軍勢を相手に勝てるとは思えない。


「……唯一の希望は、ワカバさん、貴女だけよ」


ホムラは真っ直ぐな瞳で私を見つめた。

私の中に勇者の力が眠ってる……。

実感も湧かないし、未だに信じられないけど、リトのいない今、私が強くなるしか無かった。


「……分かりました……一緒に行きましょう……私、もっと強くなりたいです」


私の決意は固かった。

もう迷ってなどいられない。

周囲は心配そうにしながら私を見つめていた。

まだ皆はホムラという少女を完全に信じきったわけじゃなかった。


「心配ない、主の護衛なら私に任せろ」


突然ランプの注ぎ口からフレアが飛び出してきた。


「もしこの小娘が不穏な真似を起こしたら、私が焼き払ってやる」

「ふん、頼もしいわね……でも私と貴女の年齢に大差はそこまで無いはずよ」


フレアとホムラとの間にギスギスした雰囲気が漂った。


「まあまあ……でもフレアさんがいてくれるなら心強いですけど……」


何とか皆は納得し、私はホムラと共に勇者としての力を覚醒させる為、彼女の故郷へと向かった。

ホムラの故郷は竜の里から遠く、険しい道のりを長時間渡っていかなければならなかった。

地形も悪く、道中には強力な野生の魔物が生息しており、過酷だが修行には持ってこいの場所だ。




「気をつけるんだぞ、ワカバ」

「必ず無事で帰って来て下さいね」

「ワカバお姉ちゃん……頑張って」


いよいよ出発の時がやって来た。

リリィもエルサもコロナも私との別れを惜しみながら握手を交わしてくれた。


「ありがとう……皆……私、必ず強くなって戻ってくるから…… !」


私は皆に別れを告げると、ホムラと共に里を後にした。

目指すは北の方へ続く、彼女の故郷だ。

頼れる仲間はホムラにコダイとフレアだけ……。

皆と別れるのは寂しかったが、泣き言を言ってる場合じゃない。

もっと強くなりたい……。

私にとって長く過酷な修行の旅が始まった。


To Be Continued

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