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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
最終章・七大魔王降臨編
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第三百十五話・癒えない傷を抱えて



「うっ……ひぐっ……」


リトを失った事実を受け入れられず、リコの部屋で私は泣き崩れていた。

涙が湧水のように止まることなく、悲しみは深まるばかりだった。

ホムラは泣き続ける私にそっと掛け布団をかけると黙ってただ見守っていた。

リコは励まそうにも言葉が出ず、うつむくしか無かった。


「ワカバ……入るぞ……」


そんな中、エルサ達は私のことを心配して大勢で部屋に押し掛けてきた。


「ワカバちゃん……体調の方は大丈夫ですか…… ?」


恐る恐るリリィは声をかけたが、私は顔を覆いながら嗚咽を漏らし、応えることが出来なかった。


「怪我はしてないようだけど……あの様子普通じゃないよ……」

「何か強いショックでもあったのだろう……」


今の私は皆と話せる状態じゃなかった。

そう判断した一同は声をかけようにもかけられず、もどかしい思いをしていた。

そんな中、唐突にホムラがすっと立ち上がった。


「皆に話があるわ……一端部屋を出て頂戴」




ホムラの言葉に従い、エルサ達はリコの部屋から出て居間で話をすることにした。

ホムラは私が心を閉ざして泣き続ける理由を全員に話した。


「彼女は召喚獣だったイフリートを失って強いショックを受けてるの、簡単には立ち直れないわ」

「あのリトが…… !?」


衝撃の事実にエルサ達はショックを隠せなかった。

今までリトはどんな強敵だって倒してきた。

そのリトが魔王に敗北し、消滅するなんて世界が何度滅んでも有り得ない話だった。


「それだけ甦った魔王の力が強大だったってことよ、下手をすればあの娘の命も危なかった」


ホムラは偶然通りかかった所、七人の魔王に囲まれ、絶体絶命だった私を間一髪で救い、その場から逃走に成功した。

彼女は幻影の炎を操ることができ、魔王達を翻弄し隙を作った。


「でも見ず知らずのお前が、何でワカバを助けてくれたんだ ?」


ヒュウが疑問に思いながらホムラに尋ねた。


「それは……」


ホムラの言葉が喉元まで出かかった瞬間、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。

一同は敵襲かと思い、警戒心を強めた。


「ただいまー、俺だよ、ラゴンだぜ !」


聞き覚えのある陽気な声が扉越しに聞こえてくる。

どうやらラゴンが帰って来たようだ。


「お兄ちゃん !」


リコはすぐさま玄関に出て扉を開けた。

ラゴンだけじゃなく、メリッサやマルク、グレン、ルーシーらも後ろでずらーっと並んでいた。


「よ、よお……帰ったぜ……って言えるのかな」


マルクは罰が悪そうに頭を掻いた。


「マルク、君達一体今の今まで何処に行ってたんだ !」

「おめえらもだ !ラゴンにメリッサ! 里が大変だって時に二人でデートなんか行きやがって !」


エルサとザルドはもの凄い剣幕でマルク達に詰め寄った。


「ま、まあ落ち着けよ……」

「そうそう、これには深い事情かあってだな……」


マルク達はこれまでの経緯を説明した。

古代亀の島にて嫉妬の魔王レヴィアタンと深い関わりのある海賊団と死闘を繰り広げ、伝説の鎧を手に入れたことを……。


「でもよ、町に帰ってきたらなんか人間達の様子がおかしくてよ」

「俺達怖くなって逃げてきたんだ、後で皆竜の里にいるって聞いたからここまでやって来たんだよ」


マルク達は追っ手から逃れ、宛もなくさ迷っていたが途中で小型の竜から手紙を受け取り、今回の事態を知った。

途中でラゴンとメリッサと再合流し、里を目指して歩いていった。


「そうだったのか……」


マルク達の無事を確認し、エルサはホッと胸を撫で下ろした。


「しかし暫く見ね間に里メチャクチャになってんじゃねえかよ」

「相当激しい戦いだったようね」


新生魔王軍(ネオサタン)との戦いにラゴンが参戦していれば、結果は大きく変わっていただろう。


「ラゴン、残念だったな、お前の大好きなバトルを逃しちまって」


ザルドはからかい気味にラゴンを煽った。


「くっそおおお、俺も魔王軍と戦いたかったぜぇぇぇ !」


ラゴンは悔しそうに頭をかきむしり、地団駄を踏んだ。


「所でヴェルザードはどうした? 後ワカバもいねえけど」

「それは……」


マルクの何気無い質問に対し、リリィは気まずそうにしながら答えた。


「マジか……あいつ連れ去られたのか……それにリトまでやられちまうなんて……」


マルク達は驚きを隠せなかった。

特にマルクとヴェルザードは互いに切磋琢磨するライバルのような関係だった為、ショックは大きかった。


「たく、魔王の奴らめ……だが俺にはこの鎧がある、今度現れたら返り討ちにしてやるぜ」


マルクは片腕に填めたブレスレットを掲げた。


「何それ~」

「さっきも言ったろ、古代亀の島に封印されてた伝説の鎧・巨大魚幻獣(バハムート)(アーマー)だぜ、太古の昔、半魚人(マーマン)の英雄が着ていたらしい」


ミライは興味津々にブレスレットをまじまじと見つめた。


半魚人(マーマン)の英雄の鎧か……凄いじゃないかマルク」


エルサは感心しながらマルクを褒め称えた。

リトとヴェルザードを失った今、伝説の鎧の存在は大きかった。

それにラゴンも竜王の力をひっ下げて帰って来た。

魔王達との戦いに僅かながら希望が見えてきた。

だがそれでも戦力差は歴然で不安は拭い切れなかった。


「このままでは魔王には勝てないわ、またイフリートのような犠牲が生まれる……でも一つだけ方法があるわ」


突然部屋の隅で一人座っていたホムラが立ち上がり、口を開いた。


「そこの蛇男」

「蛇男 !?」


ホムラは先程質問を投げ掛けたヒュウを指差した。


「まだ貴方の質問に答えてなかったわね、何で私があの少女を助けたのか……答えは簡単……彼女が勇者の適性を持っているからよ」

「…… !?」


ホムラの言葉が何を意味するのか、エルサ

達は理解しきれていなかった。

彼女の登場で、運命は大きく揺れ動くことになる。


To Be Continued

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