第三百四話・ペルシア、折れる
こんにちは、烈斗です!
気付けば連載してから今日で一年経ちました!
これからも頑張って書いていきますのでどうぞ宜しくお願いします!
ペルシアの張った特殊な結界は透明で誰にも気付かれない。
そのはずだったが、突然何者かによって破壊され、解除されてしまった。
結界が消えた為、中の様子が外から丸見えとなった。
「だ、誰だ! ペルシア様の結界を無断で壊したのは !」
「許されないんだなぁ~ !」
親衛隊のトールとクラッカーが怒鳴り声を上げる。
そこへ一人の少女がツカツカとペルシアの前に現れた。
「貴女は……」
ペルシアはポカンと口を開けたまま呆然としていた。
「ワカ……バ……さん……」
リリィは涙を溜めながら安堵の表情を浮かべた。
「リリィちゃん……それに皆も……」
私は周りを見渡して状況を理解し、胸を痛めた。
ペルシアは何が起こったか分からず混乱していた。
「ワカバさん……なんで……」
「ふふ……私が教えたんですよ……」
実はリリィはペルシアを挑発している間、密かに超音波を発して外にいる私に知らせていたのだ。
リリィ達が見えない結界に閉じ込められていると知った私は剣を振るって結界を無理矢理壊した。
「ワカバさん……これは…… !」
リリィを離し、狼狽えながら弁明しようとするペルシア。
「ペルシアさん……友達を傷付けた貴女を……許さない……」
私はペルシアとその部下達を鋭く睨み付け、鞘から剣を抜き、構えをとった。
「ワカバさん……」
「ペルシア様、ここは下がってください」
「あの女はやばいんだな !」
危機を察知したのか、トール達はペルシアの前に立ち、四人一斉に戦闘体勢に入った。
「そんな……ワカバお姉ちゃんだけじゃ……無理だよ……」
「気をつけろ……そいつらは一人一人強いぞ……」
「大丈夫……すぐに皆を助けるから…… !」
私はコロナ達に笑顔を向けた。
「舐められたものですね……ではいきますよ !」
「まずは僕からだ !」
フィンが小さな羽を羽ばたかせながら飛び出した。
彼の恐るべき能力は相手の自由を奪う鱗粉。
標的の周りを飛び回るだけで動きを封じることが出来る、小さくても油断ならない相手だ。
「フィン !待ちなさい !」
ガシッ
私は一瞬の隙も見逃さず、フィンを素手で捕らえ、握り締めた。
例え蝿のように小さく俊敏に飛び回ろうとも、鍛え上げられた私の目にはエルサの剣技よりも止まって見えた。
「ちょっ……離してよ! 離せったら !」
フィンは全身を握り締められながら必死にジタバタと抵抗した。
手に噛みついたり引っ掻いたりされ、痛みを感じたが私は手を緩めなかった。
「つっ……ごめんね、手荒な真似はしたくないの」
私はもう片方の手で小さな紐を取り出し、フィンを拘束した。
これでもうフィンは自由を奪われたも同然だった。
「フィンがあっさり捕まるなんて……有り得ないんだなぁ……」
「怖じ気づいてる場合じゃあないよ、フィンの仇は僕らで討つんだ !」
「いや死んでないよ」
今度は道化師のワイドとジャックオランタンのクラッカーが襲い掛かってきた。
ワイドの俊敏かつ不規則な動きと体型に似合わずアグレッシブに立ち回るクラッカーのコンビが牙を向く。
しかし私は冷静さを保ちながら剣を振るい、二人の攻撃をいなしていく。
「この女、掠りもしないんだな !」
私は全身に風を纏い、舞を踊るように軽やかに回転しながら二人の攻撃を受け流した。
「す、すご~い……ワカバちゃん……」
「いつの間にあんなに力をつけたんだ……」
地べたに這いつくばりながらコロナ達はポカンと口を開けていた。
2対1の不利な状況だったが、私が優勢だった。
次第に二人に疲れが見え始め、動きが鈍くなっていった。
彼等が強いわけではない、実はペルシアが張った結界は味方の身体能力を上昇させ、逆に敵を弱体化させる効果があった。
結界が壊された今、親衛隊の実力は格段に弱くなっていた。
「神月疾風 !」
私は剣に渦巻き状の風を纏わせると加速し、目にも止まらぬ速さで二人に向かって神速の突きを繰り出した。
「「ぐわぁぁぁぁぁぁ !」」
クラッカーとワイドは目をグルグル回しながらその場で仰向けに倒れ、気絶した。
「う……流石は魔人イフリートの召喚士……お見事です……」
味方が次々と倒され、流石に焦りを見せるトール。
彼の頬を汗が滑らかに伝った。
「しかし……私は親衛隊をまとめるリーダー……そしてペルシア様に絶対的な忠義を誓った男……ここで背を向けるわけにはいきません !ずあああああ !」
キィンッ キィンッ
トールは細い剣を構えると、私に向かって
飛び掛かってきた。
閃光のように加速し、稲妻のような剣さばきで襲い掛かる。
剣と剣が絶え間なく交錯し、金属音がリズム良く鳴り響く。
結界が破壊されたことで身体能力効果は消失しているはずだが、それでも達人級の強さを見せつけた。
「私には、ペルシア様を守る使命があります !」
トールは距離を取ると腰を低く落とし、剣を構えながら精神を研ぎ澄ませた。
「はぁぁぁぁ !」
トールは瞬間移動をしたかのようにこの場から消え、一瞬で間合いを詰め、常人の目に追えぬ速さで剣を振るい、斬撃を浴びせてきた。
「疾風上昇 !」
けど私は全身に風の魔力を纏わせ、スピード能力を向上させ、大地を力強く踏み締め、彼の剣撃を上回る速さで剣を振るった。
次第にトールが押され、スピードが鈍くなっていった。
「竜巻激槍 !」
私はトールが怯んだ隙を狙い、渦巻き状の風を帯びた剣を突き出し、勢い良くトールを吹っ飛ばした。
トールは悲鳴を上げながら大地を削りながら滑っていった。
トールが倒れたことでペルシア親衛隊は全滅した。
「ペルシア……様……申し訳……ございません……」
申し訳なさそうに謝るトール達。
ペルシアは戦意を失い、茫然と立ち尽くしていた。
私は急いで倒れているリリィ達の元へ駆け寄り、回復薬を渡した。
幸い、結界によるダメージも消え、皆大した怪我では無かった。
「ありがとうワカバちゃん……」
「強く……なったな……」
ペルシアは涙目になり、青ざめた表情で私を見つめた。
まるで悪戯がバレた子供のように、その瞳は怯えていた。
「ワカバ……さん……わ、私は……ただ……貴女と友達でいたかっただけなんです……」
ペルシアは老婆のようによろめきながらゆっくりと近付いてきた。
「ごめんね……ペルシアさん……私のせいで、貴女をここまで追い込んでしまった……」
ペルシアは絶望した表情を浮かべ、私の目の前で膝をついた。
あまりにも痛々しくて見てられなかった。
「ペルシアさん、リリィ達に謝ってください、彼女達を傷付けたことを……」
うつむいたままのペルシアはゆっくりと顔を上げた。
私は微かに微笑みかけた。
ザシュッ
だがその時、ペルシアの背中を何者かが手刀で貫いた。
ペルシアは血を吐き散らし、ズルズルと崩れ落ちていった。
背後にはこの世で最も卑劣な悪魔が立っていた。
「ペルシアさんっ…… !」
「クックック……貴女はよく頑張ってくれました……しかしもう用済みです、ゆっくりお休みなさい」
彼の手にはべったりと赤く血で染められていた。
私は怒りの表情でミーデを睨みながら身構えた。
「ワカバさん……ようやくこの日がやって来ましたねぇ……貴女を倒すこの日が……」
ミーデはニヤリと笑みを浮かべながら手についた血をねっとりと舐め取った。
To Be Continued




