表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
半魚人の村編
30/400

第二十八話・宴-パーティー-


湖での激闘の末、水の魔獣を討伐に成功した。

私達は村に戻り、水の魔獣を倒したことをヴィオ村長に伝えた。


「おお !皆さん、有難うございます !おかげで村は救われました!何とお礼を言っていいか…… !」


ヴィオ村長は嬉しさのあまり、涙を流していた。


「ヴィオ村長、最後に手柄を取ったのはマルクですよ」


エルサはマルクの方を見た。

マルクは照れ臭そうにしていた。


「マルク……お前は本当によく頑張った。辛いことも沢山あっただろうに……」

「別に……俺は半魚人(マーマン)最強だからな……こんぐらいどうってことねえ」

「何かっこつけてんだよ」

「うるせえなヴェル !」


照れるマルクをからかうヴェルザード。

いつの間にか二人は仲良くなっていた。


「それで、ヴィオ村長。今回魔獣の肉が獲れたので、是非村全体で宴を行いたいのですが」

「おお、それは名案です !私が村の者達に呼び掛けます !」


ヴィオ村長はエルサの提案に笑顔で快諾した。



夜になり、村で宴が行われた。

宴には私達を始め、多くの半魚人(マーマン)達が集まった。


巨大な魔獣の肉を皆で分けあった。それでもまだまだ余ったが…。

リリィも料理の手伝いを自ら名乗り出た。流石メイドである。


「あの巨大な魔獣を倒すなんて流石兄貴っす !」

「俺達もいつか、兄貴みたいになりたいっすよ !」


マルクは舎弟達に慕われていた。マルクも満更でも無かったようだ。


一方私は、魔獣の肉とにらめっこをしていた。いくら香ばしく焼けたとは言え、魔獣の肉を食べるなんて……。


「あの、リト……魔獣って……美味しいんですか…… ?」

「そうですねぇ……食べたことが無いですからわかりません」

「そ……そうですよね……」


リトはランプの中にいるから毒味を期待することも出来ない。私は覚悟を決め、魔獣の肉を口に入れた。


「んっ……美味しい !」


秋刀魚の塩焼きに似たような味だった。

私は箸が止まらなかった。魔獣ってこんなに美味しかったんだ……。この世界では先入観は捨てた方がいいな。


「あぁ……主がそんなに美味しそうに食べて……羨ましい限りです」


リトは羨ましそうに私が食べている姿を眺めていた。


「ねえ、マルク。これから先アンタはどうするの ?」


メラが神妙な面持ちでマルクに話しかけてきた。


「そうだな……俺は村の中で一番強い男だと思っていた。だがそれは思い上がりに過ぎなかった……。あいつらの力がなけりゃ、魔獣を倒せなかった……」

「マルク……」


マルクは複雑な表情を浮かべながら天を仰ぎ、星を眺めた。


「世間ってのは広いもんだな……俺より強いやつがゴロゴロいやがる……。ヴェルザードにエルサ、リト……自分が恥ずかしくなるぜ全く……」


マルクは意を決していきなり立ち上がった。


「俺はもっと強くなりてえ !誰にも、自分にも負けねえくらい強くなる !」

「アンタは充分強いと思うけどね、その向上心は悪くないと思うわ」


メラはニコッと微笑んだ。


「メラ……。俺はこの村を出ようと思う。旅をして、見聞を広めて、修行して、今よりもずっと強くなってやる」

「勝手にすればいいんじゃない」


メラは何処か寂しそうにしながらも笑顔を浮かべた。


そこに、ちゃっかり話を聞いていたエルサが割って入ってきた。

酒を飲んでいた為、顔が赤く染まっていた。


「だったら丁度良い、私達のパーティーに入らないか ?」

「パーティー ?」

「私達のパーティー名は無限(メビウム)結束(ユナイト) !種族も年齢も実力も一切問わない、いつでも君を歓迎するぞ !」

「そうそう、お前も入っちまえよ」


すかさずヴェルザードも便乗した。


「お前との決着もまだついてないしな、一緒にいた方が都合が良いだろう」

「ヴェル……。へっ !早速スカウトされちまうとはな……お前らと一緒なら、俺もっと強くなれそうだぜ」


マルクは口角をつりあげながら鼻を擦った。


半魚人(マーマン)のマルク !改めて宜しく頼むぜ !」


マルクは手を差し出した。


「団長のエルサだ、此方こそ宜しく頼むぞ !」


エルサとマルクは熱い握手を交わした。

その場のノリではあるが、マルクは正式に加入したも同然だった。


「さ、今夜は朝まで飲むぞ !皆、覚悟は良いか !」

「おおおおおおおおお !!!」


エルサは高らかに宣言した。皆の声が何処までも響き渡った。

宴は夜明けまで続いた。




翌日、私達は半魚人(マーマン)の村を出ることになる。


「世話になりました、ヴィオ村長」

「此方こそ、また機会があれば、遊びに来て下さい」


エルサとヴィオは握手を交わした。


「おい、別れの挨拶しとけよ」


ヴェルザードはマルクの背中を叩いた。


「いってえな !わーってるよ !」


マルクはヴィオ村長の前に出た。


「ヴィオ村長、悪いけど俺……旅に出るぜ」

「そうか……頑張れよ」

「止めねえのか ?」


ヴィオ村長は優しく微笑んだ。


「お前の決めたことだ。私は何も言わない。村はお前を縛る為にあるのではない。お前を見守る為にあるんだ……」

「ヴィオ村長……」


マルクは目に涙を溜めた。


「今まで、一人だった俺を育ててくれて、ありがとうよ…… !俺は……アンタを父親のように思ってた……!」

「私も……お前を本当の息子のように思っていたよ……」


ヴィオ村長とマルクは互いに涙を流しながら熱い抱擁を交わした。


「じゃあ、行ってくるぜ」

「ああ、風邪引くなよ」


見てる私も目頭が熱くなった。リリィも感動のあまり鼻水を垂らしていた。


「じゃあ行こうぜ、皆 !」

「ああ !」


この日、私達のパーティーに、半魚人(マーマン)のマルクが加わった。

目的を果たし、私達は半魚人(マーマン)の村を後にした。



一方、魔獣の居なくなった静かな湖……。

そこに一人の男が立ち寄った。

その瞬間、異様な気配を察したのか鳥達が一斉に翼を羽ばたかせ、大空を飛び回った。


「ほう……私が密かに目覚めさせた水の魔獣の気配が全く感じられません……。恐らくあの小娘と魔人(イフリート)の仕業でしょう……。面白いことになってきましたねぇ」


謎の男はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、静かに去って行った。


To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ