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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
異世界探索編
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第一話・魔人-イフリート-

挿絵(By みてみん)


頭にターバンを被り、マフラーをし、上半身は裸でアラジンパンツを履いた若い青年……。

男は振り向き、優しく微笑んだ。


「主、無事ですか」


絶体絶命だった私の前にまるでコスプレイヤーのような、珍妙な格好をした男が現れた。そして男の放った玉を消し去り、私を守ったらしい。


「あの……貴方は……」


私は驚きのあまり、開いた口が塞がらなかった。


「良かったです、どこも怪我されてないようで」


男は下手な有名俳優よりも整った顔立ちをしていた。何よりも笑顔が眩しい。これが所謂世間でいう「イケメン」というものか……。それにしても、この人、初めてあった気がしないな……。何処かであったことが、あるような……私がそんな呑気な事を考えている一方で黒い玉を手から出したあの男は震え上がっていた。何やらただならぬ様子。


「あり得ません……この尋常ならざる魔力は…… !まさか…かつて古代の魔界にて悪逆非道の限りを尽くし、伝説の勇者によって封印された……最強の魔人、イフリートなのか…… !?もう目覚めたというのですか…… !」


男は汗を垂らしながら叫んだ。魔人 ?イフリート ?何の話をしているの ?このレイヤーさんのような人が魔人 ?そんな事を考えていると、魔人は男に近づいた。


「貴方ですね、主に危害を加えようとしたのは……」


魔人は男にたずねた。男はゆっくり後退りする。


「そ……そうですよ、あの女が悪いのです !大人しくランプを渡さないから !」


男は子供じみた言い訳を始めた。さっきまでの紳士っぷりが嘘のようだ。


「理由はどうあれ、主を殺そうとしたんですね」


魔人がキッと男を睨んだ。男はビクッとなった。


「いや、いくらとてつもない魔力とは言え、私だって上位種の悪魔 !今更目覚めた時代遅れの生きた化石ごときに、遅れをとるはずがありませんよ !」


男は気合いを入れた。その時、邪悪なオーラが男を包み込んだ。その勢いは凄まじく、こっちが飲まれてしまいそうだった。


「主は下がっていて下さい。主に害なす者は消し炭にして差し上げますよ」


魔人の言うことに従い、一旦離れることにした。確かに、あのままだと危険だ。それにしても、何故この人は私を主と呼ぶのか、何故こんな私に至り尽くせりなのか……細かいことはいい、とりあえず今は保留にしておこう。


「それにしても、数千年ぶりの外は空気が美味しいですねぇ、しかし同時に運動不足でもあります。貴方、私の準備運動に付き合ってください」


魔人は余裕たっぷりに屈伸したり腕を伸ばしたりしている。対して相手は邪悪なオーラを身に纏い、真剣な表情で殺す気満々のようで…


「相手は最上位種の魔人イフリート…… !お遊び抜きで本気で殺しますよ !」

「ご託は良いですから、かかって来なさい。」


魔人は指で挑発する。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ !」


男は雄叫びを上げて、こちらに向かってきた。私はその迫力に圧され、つい身構えた。その時、魔人は人差し指を相手に向けた。


指撃熱線(フィンガーヒート)!」


魔人の指先からオレンジ色の火の光線が一直線に放たれた。その光線は光の早さで男の胸に当たり、そのまま彼を包み込むように焼いた。


「ぎゃああああああ !」


男は業火に焼かれ、身悶えしながら絶叫した。私も絶句した。あんなの喰らったら私なら即死ですよ。


「どうやら基本技だけは使えるようですね」


あんな強力そうな熱線が基本技 !?


「主、驚くのも無理はありません。私は太古の昔に力を使い果たした状態で封印されたようで、本来の力を発揮できないようなのです。今の技は『指撃熱線(フィンガーヒート)』私が持つ中で最も弱い技です」


つまりこれ以上に破壊力のある技が隠されていると……恐ろしい……私はこの魔人が敵じゃなくて心底安心した。


「それにしても情けないですね、まだ指一本しか動かしていないというのに、もう終わりですか?さっさと灰にしても良いですか?」


比喩ではなく物理である。物騒な殺し屋を雇った気分だった……あの男が弱いというわけではないのだがこの魔人が化け物過ぎたのだ……。


「ま……まだ……まだぁ……」


何と、男は死んでは居なかった。全身を焼かれながらも気力で立ち上がったのだ。


「ほう、まだ立ち上がる力が残っていましたか……」


敬語も相まってこっちが悪役ぽくなってきた。


「まさか、最上位種である魔人と対峙することになるとは……クソ…… !」

「諦めなさい、相手が悪かったんですよ、さ、そろそろとどめを……」


その時、私は魔人の異変に気づいた。


「あの……透けてますよ……!」

「え……?あ……ほんとですね……」


かすかに魔人の体が消えかけていた。魔人は自分の手を見て異変を察した。


「ど、どうなってるんですか ?」


私は慌ててたずねると、困ったような顔をして答えてくれた。


「どうやら復活が不完全だったようです。実体化(リアライズ)には時間制限があるようで……」

「そんな……」


状況は逆転した。このままではせっかく助けてくれた助っ人が時間切れで消えてしまう……。


「何やら慌ててる様子……あの魔人、消えかかっているぞ……どうやら復活は不完全だったらしい、チャンスです !」


最悪だ、敵もどうやらそれに気付いたらしい。


「お願い、もう一回あのビームを撃って下さい!えーと…ハンガー……ハート ?」

「フィンガーヒートです。えっとえっと」


人間もそうでないものも、一度パニックになると手元が狂うのは変わらないものだ。


「しかしかなり体力を消耗したのも事実…このまま続けるのも時間の無駄です……これだけは使いたくありませんでしたが、仕方ありません…… !はっ !」


男は躊躇いながらも謎の水晶を取り出した。


「異次元転移魔法 !発動 !」


水晶が発光したその時、急に雲行きが怪しくなり、快晴だった空があっという間に漆黒に包まれた。まるで空に穴が開いたように赤黒く巨大なブラックホールが現れた。そのブラックホールのようなものは、無差別に辺りのものを吸い込んでいった。


「さぁ、貴方も来てもらいますよ、私の故郷へ !」


男はブラックホールの方へと飛び、消えていった。

そして、人間では逆らえない重力が私を拐おうとした。私も踏ん張ろうとしたが、虚しく足は地面からあっさり離されてしまった。


「きゃあああああああ !」


私は悲鳴を上げながらブラックホールに吸い込まれていった。どんどん地面から離れていく。


「主ぃぃぃぃぃぃ !」


魔人は消えそうになりながらも私の元へ向かっていった。そして、私を強く抱き締めた。初めて男の人に抱かれたが、嫌悪感は一切無かった。吊り橋効果なのかは分からないけど、とても温かかった。


「あ……魔人さん……」

「主、私は再びこのランプの中に消えます。ですがこのランプをずっと離さず持っていて下さい」


魔人は私の手にランプを託した。


「もし再び、貴方に危機が訪れた時、必ず貴方を救いに現れます。それまでご武運を !」


そういうと魔人は完全に消えてしまった。


「魔人さぁぁぁぁぁぁぁん !」


私は必死に手を伸ばしたが結局最後まであらがえず、ブラックホールに、完全に飲み込まれてしまった。その直後、何事も無かったかのように空はいつもの青さを取り戻した。


この日から私は現実世界から姿を消した。私は一体何処へ向かうのだろうか……。それは誰にも分からなかった。


To Be Continued


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