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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
半魚人の村編
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第二十七話・打倒!水の魔獣!



私達は再び水の魔獣が住む湖にやって来た。魔獣を倒さない限り、半魚人(マーマン)達に平和は訪れない。


今回は私の案が採用され、釣竿を使うことになった。


私は小さいカエルを餌にして釣糸を足らした。後は魔獣が食いつくのを待つだけだ。

こんな方法で魔獣を釣りあげることが出来るのか半信半疑だったが、正面からぶつかるよりはマシだった。


「本当にこんな方法で魔獣をおびき寄せるなんて出来るのか ?」

「やっぱ直接殴りに行った方が早くね ?」


ヴェルザードとマルクは早く魔獣と戦いたくてうずうずしていた。


「まあそう慌てるな。今はこの方法だけが頼りなんだ」

「待ってる間暇ですよね~」


釣りの秘訣は忍耐力だとはよく言ったものだ。


「でも魔獣ってこんな小さなカエル食べますか…… ?」

「確かに……あれだけ大きいんだ。カエル程度じゃ物足りないだろう……」

「いっそのこと半魚人(マーマン)を餌にすれば良いのではありませんか ?」


リトは残酷なアイディアを思い付いた。

皆一斉にマルクを見つめた。


「ば、バカ野郎お前ら !生け贄と変わらねえじゃねえか !俺は餌になんかならねえぞ !」


マルクは顔を真っ赤にして取り乱した。


「冗談ですよ、ホッホッホッホ」

「冗談に聞こえねえよ……」


雑談で盛り上がっていたその時、竿がピクッと動いた。


「まさか……かかった…… ?」


次の瞬間、腕に重力がかかり、私ごと飲み込もうとした。


「んっ…… !この重さ…… !普通の魚じゃない…… !」

「魔獣がかかったのか !」


私は餌にかかった魔獣の力は尋常じゃないほど強く、腕ごと湖に引き摺られそうになった。


「ワカバ一人では危険だ !」


エルサが後ろから私を抱き、強く引っ張った。


それでも魔獣は負けじと二人ごと引きずろうとする。


「女どもに任せてられるかよぉ !」


ヴェルザードとマルクもエルサを後ろから引っ張る。


「ひゃあっ !君!何処を触ってるんだ !」

「わっ悪い…… !ってそれどころじゃねえだろ !」


ヴェルザードはエルサの大事なところをうっかり触ってしまったらしい……。

エルサって意外と可愛い声出るんだな……。


私達は大きな株状態になった。

これだけの力が合わさってもなお魔獣を釣りあげられない。

このままでは竿の方が限界を迎える……。


「わ、私に任せてください !」


リリィは湖に近付き、顔を水の中に突っ込んだ。


水中爆音(ウォーターエコーボム) !」


リリィは超音波を直接水中で発した。

ショックで魔獣は勢いよく湖から飛び出した。

私達はついに釣りあげることに成功した !


「や、やったぁ !」


釣り上げられた魔獣は地面に叩きつけられ、しばらくビッチビチ跳ねていた。


「チャンスだ !行くぞぉ !」

「おう !」


エルサとマルクとヴェルザードは倒れてる魔獣に向かっていった。

硬い鱗に覆われているが、腹部は無防備で柔らかかった。


魚人斬撃(フィッシャーブレイド) !」

神月疾風(ムーンウィンド) !」

(ブラッド)(テンペスト) !」


マルクは肘のヒレ、エルサは剣、ヴェルザードは拳で魔獣の腹部を徹底して攻撃した。

剥がれた鱗が飛び散り、魔獣は苦しそうに蠢く。


魔獣は負けじと巨大な尾びれを振り回し、三人を一掃した。


「くっ…… !」


エルサレ達は吹っ飛ばされながら何とか踏み留まった。

魔獣は立ち上がり、体勢を立て直すと長い首で私達を見下ろし、咆哮を上げた。


「タフなやつめ……」

「だがダメージをかなり与えたはず……後一撃決められれば……」


魔獣は口を大きく開けると剣のように鋭い水のブレスを吐いた。

その威力は地面が削れる程のものだった。

高威力の水は鉄をも切り裂く。

私は直撃こそしなかったものの、水のブレスの余波で湖の方まで吹っ飛ばされ、落ちそうになった。


「きゃああああ !」

「ワカバぁぁぁぁ !!!」


その時、持っていたランプが赤く光った。


「主、叫んで下さい !」

「は、はい!召喚!イフリート !!!」


ランプから勢いよく煙が噴射された。

煙はみるみるうちに私を包み込んだ。


「主、ご無事ですか」

「リト……」


煙が消えると私は宙に浮いたリトにお姫様だっこされていた。


「ふう……間一髪だったな」

「ひやひやさせるぜ全く……」


エルサとヴェルザードもホッと胸を撫で下ろした。


「あれは……炎の魔人(イフリート)じゃねえか……まさか本物をこの目で見れるなんてな…… !」


マルクはリトの姿を前に驚きを隠せずにいた。


「さて、水の魔獣さん。私も参戦させて頂きますよ」


リトは私を地面に下ろすと、魔獣に近付いて行った。


「でもリト !炎は水に弱いんじゃ……」

「見くびらないでください、主。私の力は属性の優劣すら凌駕します。それに、今の魔獣は得意な水中ではなく、地上での戦いを強いられている。ハンデがあるのはお互い様です」


魔獣は口を開け、水のブレスをリトに浴びせようとした。


「やはり地上では動きがぬるいですねぇ。指撃熱線(フィンガーヒート) !」


リトは人差し指から熱線を放った。

熱線は水のブレスを裂くように貫き、そのまま魔獣の口を貫き、爆発した。

魔獣は涎を垂らしながらのたうち回った。


「つ、強ぇ……俺が苦戦した魔獣を……一方的に圧倒してやがる…… !」

魔人(イフリート)め……美味しいとこばっか取りやがって……」


魔獣はフラフラになりながらもリトを睨み付けると長い首を伸ばし、リトを食い殺さん勢いで噛みつこうとした。


炎輪(フレイム)抱擁(リング) !!!」


リトは円をなぞり、炎の輪を作り出した。

炎の輪は巨大化し、魔獣を縛り上げ、燃え上がらせた。

魔獣は熱に悶えながら、全身に炎を浴びた。

だが魔獣も負けていなかった。魔獣は上を向くと口から水のブレスを放ち、自らの体に向けてシャワーのように浴びせ、炎を鎮火したのだ。


「馬鹿な……そんな方法があるなんて…… !」

「あの魔獣さん、器用ですね…… !」


プスプスと香ばしい臭いを放ちながらも魔獣は立ち上がり、再びリトに襲いかかった。

だがリトはニヤリと笑っていた。


「うぉぉぉぁぁぁぁぁぁ !!!」


マルクが全速力で走り、魔獣に向かっていった。


魚人斬撃(フィッシャーブレイド) !!!」


マルクのヒレが魔獣の皮膚を切り裂いた。

魔獣の体から血飛沫が舞った。


「硬い鱗に攻撃が通っただと !」


私は理解した。魔獣の体は先程のリトの炎に焼かれ、鱗の強度が劣化したのだ。どんなに硬い食材でも、火を通せば柔らかくなる。リトはそれを狙ったんだ !


ボロボロになった魔獣は湖に飛び込もうとした。

逃げる気だ。


「逃がすかよおおぉぉぉ !」


マルクは飛び込もうと高く飛んだ魔獣に向かってジャンプし、その体に掴まった。


「今日こそてめえに引導をくれてやるぜ !はぁぁぁぁぁぁぁ !!!!」


マルクは目にも止まらぬ速業で魔獣を空中で捌いた。


魚人三連斬(トライスラッシュ) !!!」


魔獣は綺麗に三枚に下ろされ、地面に落下した。


「はぁ……はぁ……」


マルクは息を切らしていた。そこにリトが近づいてきた。タイムリミットが迫り、体が消えかけていた。


「お前は……」

「よく頑張りました。貴方には強者としての素質が秘められているようですね」

魔人(イフリート)様に褒められるとは光栄だぜ…でもよぉ、分かってんだ……お前が俺にとどめを譲ったこと……最初から炎輪(フレイム)抱擁(リング)で倒すつもりは無かったってことをよ……」

「はて ?何のことでしょうか ?」


リトはとぼけていた。


「ま、あの魔獣はあなたが倒すべき相手でしたからね。私は手を貸しただけです」


そう言うとリトは光となって消えた。


「食えねぇ男だな……」


私達はマルクの元へ駆け寄った。


「よくやったぞ、マルク !」

「これで半魚人(マーマン)の村に平和が戻るな」


マルクは少し照れていた。


「お前ら、ありがとよ……お前らの力がなけりゃ、魔獣を倒すことは出来なかった……」

「魚臭いですよマルクさん!困った時はお互い様です !」


リリィはドヤ顔でウインクした。


「水臭いな」


ヴェルザードが冷静に突っ込んだ。


「でもこの魔獣……どうするんですか……」


私は三枚に下ろされた魔獣を指差した。


「にしてもでけえな……」

「美味しそうな匂いです」

「ああ…食欲をそそるな……」


このまま放置して腐らせるのもあれだし処分するのも勿体無いし……。


「そうだ !魔獣を倒した記念に皆でパーティーをやろう !」


エルサが手を叩き、提案した。


To Be Continued

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