表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
半魚人の村編
28/400

第二十六話・兄貴との約束



私達はマルクを連れ戻し、半魚人の村に戻ってきた。

マルクは命に別状はなく、気を失っているだけだった。

ヴェルザードも濡れたマルクに触れたせいでダメージを受け、休んでいた。吸血鬼(ヴァンパイア)は水が苦手らしい。


「ったく……このバカ……」


メラは眠ってるマルクの頭を撫で、悪態をつきながらもホッとしていた。


「ご主人様、大丈夫ですか ?」

「ちょっと水がかかっただけだ。これくらい何ともねえ」


ヴェルザードは苦しさを耐え、リリィを心配させないよう笑って見せた。


「ワカバの血さえ吸えれば即回復出来るんだがなぁ」

「え……」


私は思わず低い声が出た。ランプの中のリトが睨みをきかせていた。


「でもリリィのおかげで助かりましたよ、まさかあんな声が出せるなんて」


リリィの秘められた能力に私はすっかり驚かされた。


「私はこうもりですから、超音波を出せるんです。あの魔獣、相当耳が良いみたいですね」


リリィは胸を張った。


「魔獣は大きな音が弱点……ということがわかったな…だが問題は湖の敵とどうやって戦うかだ」

「確かに、泳ぐのが得意な半魚人(マーマン)ですら魔獣には及びませんでした。やつと同じ土俵で戦うのは厳しいですねぇ」

「おまけにあの硬い鱗…。私の剣でも通るかどうか……」


湖の魔獣の恐ろしさ目の当たりにして、無策で戦うのは危険だと言うことを思い知らされた。

皆は慎重に対抗策を練っていた。


「あの……近づくのが難しいなら、こっちが引き寄せればいいんじゃないでしょうか」

「はぁ ?何言ってんだお前」


私はふとあることを思い付いた。


「えと……魔獣を釣り上げるんですよ。陸地に上げてしまえばこっちのもの……みたいな」

「なるほど…… !相手を不利な領域に追い込ませるということか !」


エルサは感心した。


「でも釣りって……どうやるんですか…… ?」

「えーっと……」


釣りなんてアウトドアなこと、今までやったこと無かった……。


「釣りだと……ど素人が何抜かしやがる……」


マルクが目を覚まし、目を擦っていた。


「マルク !」

「ちっ……結局余所者に助けられちまうとはな…だがこれっきりだ…… !」


マルクは面白くなさそうな顔をしながら立ち上がった。


「あいつとの決着は俺がつけなきゃならねえ…… !」


マルクはそう言うと出ていこうとした。


「マルク……アンタまた……」


メラが止めようとするより早くヴェルザードが勢いよくマルクを殴り倒した。


「マルク !」

「ヴェル !あなた何やって…… !」


マルクは頬を押さえていた。


「折角拾った命、無駄にする気か ?」

「あぁ ?」

「俺との決着がまだ着いてねえ、今死んでもらったら俺がモヤモヤしたまま生きなきゃならねえだろ、わざわざ水に濡れてまでお前を助けた意味がねえ !」

「ちっ……それがどうした……」


マルクはよろめきながらも立ち上がった。


「俺がこの村を守らなきゃいけねえんだ !それが兄貴との約束だ !」


マルクが幼い頃に交わした、お兄さんとの約束……。




「兄貴はすごいぜ !魔物をいっぱい倒せるし、村の人達皆から慕われてる !」


少年は目をキラキラ輝かせていた。


「お前もいつかなれるさ、俺みたいな強い男にな」


マキリは優しく少年に微笑んだ。


「そうかな……」

「胸を張れよ、この俺と同じ血が流れてんだからさ」


マキリは少年の背中をバンっと叩いた。


「いてえよ兄貴~」

「アハハハハハ!」


マキリは涙が出るほど高笑いをした。


「なあ、マルク。俺と一つ約束をしてくれないか ?」

「何だい兄貴」


マキリはしゃがむと少年と同じ目線になって両肩を掴み、見つめた。


「この先、辛いことや苦しいことがこの村に降りかかるかも知れない。もしそうなった時、お前が皆を守ってやってくれ。お前には力がある、優しさと勇気もある。何かを守ってこそ、人は強くなれるんだ」

「兄貴……」

「心配すんな、お前は俺の自慢の弟だ」


マキリはそう言うと少年を強く抱き締めた。


「兄貴……あったけえな……」

「本当に強い奴ってのはな、心も体もあったかいんだぜ……」


二人の強い兄弟の絆を夕日いつまでも赤く照らしていた……。




マルクにとってかけがえのない、いつまでも色褪せることのない、兄マキリとの記憶だった。


「俺はいつも兄貴の背中を追いかけてきた…。だが兄貴はいなくなった……。頼れる存在を無くした俺は、ただ強くなるしか無かった…… !ポッカリ空いた穴を埋めるには、俺が兄貴の代わりになるしかねえんだよ !」


マルクは怒りと寂しさの合わさった複雑な表情を浮かべた。


「いなくなった人間との呪縛(やくそく)に、いつまで縛られてるつもりだ」

「何だと…… !」


ヴェルザードは容赦なく一蹴した。


「お前は兄貴との約束に拘るあまり、大事なものを見失っている」

「何がだよ !」

「お前は兄貴じゃねえ。お前はマルクだろ」

「…… !」


ヴェルザードは鋭く指摘した。


「人ってのは多種多様でな、どんなに頑張っても、誰かの代わりになんてなれないんだ」

「じゃあどうしろってんだよ !」

「どうしようもなくなった時に誰かを頼れ」


マルクはハッとなり、辺りを見回した。

彼の瞳には私、ヴェルザード、リリィ、エルサ、メラが映っていた。


「人は一人じゃ生きていけねえ。村の連中がお前を頼るように、お前も誰かを頼って良いんだぜ」

「くっ……」


マルクは拳を震わせ、唇を噛み締めた。

しばらく下を向いていた。


「……頼む…… !一緒に……魔獣を倒して……下さい…… !」


マルクは私達の前で土下座をし、額を擦り付けた。


「最初から素直になれよ」


ヴェルザードはしゃがむとマルクの両肩をポンと叩いた。そしてニカッと微笑んだ。


「ご主人様……こんなにも親身になって相手を想うなんて……」


リリィはハンカチで涙を拭っていた。

コミュ障のヴェルザードが何故マルクに説教したのか…前に手合わせをして、友情を感じたのか…孤独なところを自分と重ねたのか……。


「よし、仲直り出来て何よりだ、何はともあれ、私達は再びやつに挑むぞ !今度こそやつの息の根を止めるぞ !」


エルサは皆を鼓舞した。


「ああ、借りは返してやらねえとな」

「焼き魚にして差し上げますよ」

「今度こそ村を守ってやるぜ !」


皆、やる気充分のようだ。

私達は力を合わせ、再び水の魔獣と相見えることとなる……。


To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ