第二百七十六話・伝説の鎧、復活
マルク、ライナー、サイゴは力を合わせ、幹部の一人、カリブを倒した。
だがこのまま洞窟の中へ進むか否か、三人は迷っていた。
洞窟の入り口前で立ち往生しているマルク達。
そんな時、彼らを呼ぶ声が聞こえた。
マルクが振り向くと、グレンやルーシーを始め、大勢の人達が駆けつけてくるのが見えた。
グレンはラゴン、メリッサを、ルーシーとメラはレヴィを連れていた。
だがそこにマキリの姿だけなかった。
「お前ら、無事だったか !てか数増えたな !」
「レヴィさぁぁぁん !無事で良かったですぅぅぅ !」
マルク、ライナー、サイゴは歓喜の声を上げた。
ライナーは感激のあまり、滝のように涙を流しながらレヴィに抱きついた。
「ちょっと!ライナー離れなさい !汚れますわ !」
レヴィは嫌そうに泣きながら抱きつくライナーをひっぺがそうとした。
「所で何で皆で集まってんだ ?」
「さっきでかい爆発が見えたからそこを目印に皆で駆けつけたの」
メラはマルクに色々と事情を詳しく説明した。
グレンは浜辺でラゴンとメリッサに助けられ、幹部のシーボースを倒したこと、ルーシーとメラはレヴィと一時共闘し、渓流で幹部のクライを撃破したこと……
「そっか……まあ皆無事で何より……と言いたい所だけど、兄貴だけがいねえな」
「マルク……」
マルクはよりによって兄がいないことに複雑な表情を浮かべた。
「きっと見つかるって! 兄貴の兄貴なんだから強いんだろ! だったら大丈夫だぜ ! 」
グレンはマルクを気遣い、励ましの言葉を送った。
「ありがとよ、グレン」
マルクはグレンの頭を優しく撫でた。
「所で、この洞窟は何なの ?」
洞窟の入り口を覗きながらメリッサが問いかけた。
「この先に伝説の鎧が眠ってるらしいんだ、そこで伸びてる海賊が洞窟の外で見張りをしてたんだ」
マルクは縛られて目を回しながら気絶してるカリブを指差した。
「良かった……もう吸収されずにすむね……」
ほっと安堵するルーシー達。
マルク達の活躍により、カリブ、シーボース、クライの三人の幹部は片付けた。
問題は副船長と船長が洞窟の中で今も探索を続けているということだ。
「海賊達は伝説の鎧を狙ってるのよね ?」
「ああ……先代の半魚人の英雄メイツが遺した遺産を海賊なんかに奪われるわけにはいかねえ」
マルクは拳をぎゅっと握りしめた。
「副船長は恐らく俺の知り合いだ、昔里を出てった不埒者がいた……多分そいつかも知れねえ……俺が目を覚まさせてやらねえとな」
ラゴンはいつもより真剣な眼差しを洞窟へと向けた。
「レヴィさん、どうするんすか ?」
「決まってますわ、こいつらに協力するふりをして隙を狙って伝説の鎧を手に入れますわよ」
レヴィとライナー、サイゴは気付かれないようにひそひそと計画を企てていた。
「兎に角、これだけ人数が揃ったら心強い、皆で洞窟に入ろうぜ !」
「「「おー !」」」
無限の結束、爬虫の騎士団、新生魔王軍の悪魔三銃士……。
三つの勢力が手を組み、悪党から秘宝を守り抜くべく立ち上がった。
マルク達は意を決し、漸く洞窟の中へと足を運んだ。
「船長、遂に着きました」
一方、船長エレインと副船長シーザーは洞窟の奥地へと進んだ。
洞窟内は地下深くで海と繋がり、海水が流れ込んでいる為水が豊富で巨大な泉ができていた。
「ああ……実に神秘ね……」
船長エレインはうっとりしながら泉へと近付いた。
同じくマキリは隠れながら後をつけていた。
「船長、これを」
シーザーは懐から鍵らしきものを取り出し、エレインに手渡した。
エレインは鍵を受け取り、ぎゅっと胸に抱き、自らの魔力を鍵に注いだ。
「うふふ……いよいよ手に入るのね……伝説の鎧が……レヴィアタン様……見ていてください……このエレインが貴女の遺志を継ぎ、海の支配者となってみせます…… !」
エレインはそう言うと鍵を手放し、泉の中へと放り投げた。
ぽちゃんっと音を立て、小さな銀色の鍵は泉の中へと沈んでいった。
その瞬間、泉全体が眩い光を放った。
あまりの眩しさにその場にいた全員が目を覆った。
「うっ……」
少し経ってから恐る恐る目を開くと、泉から勢い良く水飛沫を上げ、何かが飛び出した。
神々しい光を放ち、澄んだ蒼い魚竜の鱗に覆われ、赤い棘が所々にあしらわれた甲冑が透明な球体に包まれ、宙を浮いていた。
「これこそが……かの英雄メイツが愛用していた伝説の鎧……巨大魚幻獣の鎧よ !」
甲冑を見上げながらエレインは狂気をはらみながら歓喜の声を上げた。
シーザーはその様子を黙って見ていた。
「すげえ……あれが……英雄メイツの着ていた鎧……」
伝説の鎧を目の当たりにし、マキリは魅力され、あんぐりと口を開けながら茫然としていた。
「船長、何やら部外者が紛れ込んでる模様です」
シーザーは後ろに隠れていたマキリに気付き、エレインに忠告した。
「そんなのとっくに気付いてるわよ、シーザー、片付けておいて」
エレインは一切鎧から目をそらさないままシーザーに指示を出した。
「分かりました」
シーザーは軽くお辞儀をすると、マキリの方を見て鋭く睨んだ。
「や、やべっ !」
ここに来て尾行がバレ、焦ったマキリはすぐに逃げ出そうと走り出した。
だが時既に遅く……シーザーは驚異的なスピードでマキリを先回りした。
「うっ…… !?」
「お前か……覚悟は出来てるんだな」
シーザーはニヤリと口元を歪ませた。
もう無事では済まないと悟ったマキリは已む無く戦闘体勢に入った。
マキリはこの窮地を逃れることが出来るのか……。
To Be Continued




