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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
巨大魚幻獣(バハムート)の鎧(アーマー)
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第二百七十二話・紅の渓流



海魔人海賊団の幹部、クラーケンのクライによる触手により、ルーシー、メラ、レヴィはなす術無く拘束された。

じわじわと締め付けは強まり、体力が奪われていく一方だった。


「もっと良い声で鳴いてくれよ、苦痛に耐える表情を見せてくれ」


ぎゅうううう


「あぐっ……」「うぅ……」


骨が軋むような音を立て、呻き声を上げる三人。

特に非力なレヴィはぐったりし、虚ろな目でだらーんと項垂れていた。


「くっ……卑怯な…… !」

「卑怯? それはオイラにとって褒め言葉になるんだぜ ?」


グシャアッ


クライは邪悪な笑みを浮かべるとルーシーを吊し上げ、そのまま岩壁へと叩きつけた。


「がはっ !」


勢い良く全身を岩壁に打ち付けられ、ルーシーはあまりの衝撃に目を見開き血を吐いた。


「他二人はどうってことはねえが、お前はダークエルフ……しかも魔王軍幹部だった女だ……念入りに痛みつけておかねえとなぁ ?」


ルーシーが元魔王軍だったということは把握済みでクライは彼女の実力を警戒していた。

二人とは違い、徹底的に痛みつけて抵抗する力を無くさせる気だ。


「心配はいらねえよ、殺しはしねえ……船長の命令に背くことにはなるが、三人共後でオイラのペットにしてやるぜ」


ルーシーを長い触手で持ち上げながらクライは舌舐めずりをした。

ルーシーは痛みに耐えながらも鋭い眼光を放ち、クライを睨み付けた。


「このままじゃルーシーが……私のせいで……何とかしないと……」


真っ先に人質に取られてしまったメラは責任を感じていた。

元々戦闘員では無く、マルクやマキリと違って敵と戦ったことなど一度も無かった。

ここに来たのも、無茶をするマルクを心配してのことだった。


「ルーシーもレヴィちゃんも武器が使えない状態……私の力じゃ……待って……」


メラは自分にはとっておきの武器があることを思い出した。

正確には武器ではなく、半魚人(マーマン)なら誰しもが備わっているものだ。


「マルクみたいに上手く出来るか分からないけど、やるしかないわ !」


メラは気付かれないように腕に力を込めた。

すると腕に備わっていた鋭いヒレが伸び、更に鋭利に変化し始めた。


魚人斬撃(フィッシャーブレイド)…… !」


ズバァッン


メラは縛られた状態で全身に絡み付く触手をヒレで内側から切り裂いた。

ヒレの切れ味は当然マルクより劣るがそれでも触手を切り落とすには充分だった。

ボトボトと切り落とされた触手が川へと落ちていく。


「いってぇ!? 酔いが覚めるぅ !?」


触手を切られるのは人間で言うと歯を引っこ抜かれるのと同じ痛みのようでクライは涙目で絶叫した。


「はぁ……はぁ……上手くいったわ……」


メラは何とかクライの触手から逃れることが出来た。

息を切らしながら、両腕をクロスさせ、技を発動する構えをとった。


「マルクがいつも使ってた技……ぶっつけ本番だけど……お願い、当たって !」


メラは両腕のヒレ同士を擦らせ、水の魔力を帯びた衝撃波、「魚人水刃(フィッシュリッパー)」を放ち、レヴィとルーシーに絡み付いている触手に命中した。

触手はバラバラに切り落とされ、二人は拘束から解放され、川へと落ちていった。


「うぎゃあああああ !!!」


切られた触手の断面から大量の血を噴き出させ、激痛に身悶えしながらクライは泣き叫んだ。

青く澄んだ川はクライの血が浸食し、赤く染まっていった。


「はぁ……はぁ……メラちゃんありがとう……助かったよ……」

「貴女、か弱そうなくせに中々やりますわね、見直しましたわ」


ルーシーとレヴィは息を切らしながらメラにお礼を言った。


「良かった……私も……役に……立て……」

「おっと……」


長時間強い力で拘束されてたせいで、メラは力尽き、膝を落として気を失った。

レヴィが慌てて彼女の肩を支えた。


「レヴィちゃん、メラちゃんをお願い、後は僕がやっておくから」


ルーシーは怒りに満ちた表情でなおも悶絶するクライを睨み付けた。


「わ、分かりましたわ……」


レヴィはメラを連れて後ろへと下がった。

ルーシーは深呼吸をし、カッと目を見開くと怒濤の勢いで水飛沫を上げながらクライに向かって走っていった。


「おのれぇぇぇ、もう許さねえぇぇ !」


激昂し、冷静さを完全に失い、クライは発狂しながら触手を勢い良く伸ばし、ルーシーを再び絡め取ろうとした。

だがルーシーは風のように俊敏に動き、襲い来る触手を全て見切り、一瞬のうちに間合いを詰めた。


「うおらぁぁぁぁぁ !」


クライは我を忘れ、無我夢中で剣を振り回した。

だが冷静さを失ったクライの剣捌きは最早ルーシーにとって脅威でも何でも無かった。


闇風斬波(ダークウインドースラッシュ) !」


ズバァッ ズバズバ ズバァッン


ルーシーは黒い影を纏い、目にも追えぬ疾風の如く素早い剣撃を放ち、クライを滅多切りにした。


「ぐふぁっ !」


全身を切り刻まれ、大量の血を流しながらクライは白目を向き、ゆっくりと後ろに倒れた。

ルーシーの勝利だ。


「やっ……やった……はぁ……はぁ……」


力を使い果たし、疲労困憊のルーシーは緊張が解けたのか、その場で膝をついた。


「ル、ルーシー……さん? 勝ちましたの…… ?」


レヴィはメラの肩を支えながら恐る恐るルーシーに呼び掛けた。


「うん……何とかね……」


ルーシーは振り返り、笑顔で言った。


「さ、流石元魔王軍幹部ですわ…… 」


レヴィは顔をひきつらせながら思った。

この女を敵に回しては厄介だと。




三人は気絶しているクライを縛り上げ、身動きできぬよう拘束した。

ルーシー達は傷が癒えるまでの間、この渓流で静かに身を潜める事にした。

下手に動いて魔物や他の海賊に見つかっては元も子もない。


「う……」


程なくしてメラは目を覚ました。

慣れない戦闘で疲れただけで大した外傷は無かった。


「ルーシー……あいつは……どうなったの ?」

「やっつけたよ、メラちゃんのお陰だよ、ありがとう !」


ルーシーは嬉しそうにメラを抱き締めた。


「えへへ……良かった……私も役に立てた……」


メラは照れながら掠れた声で笑った。


「それにしても、こいつは何なんですの ?」


レヴィは気絶しているクライを見ながら言った。


「さあ、でもこの島にやって来た侵入者を排除しようとしていたのは確か……この島には他人に横取りされたくない何か貴重な宝とかが眠ってるのかな……」


ルーシーは腕組をしながら考察した。

事情を聴こうにもクライは絶賛気絶中だ。

目を覚ますのを待つしかなかった。


To Be Continued

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