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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
精霊の森編
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第二百五十六話・精霊パーティー



「以上が……我々精霊界に起こった話だ……」


精霊女王は精霊の森にまつわる話を語り終えた。

私はあまりにも救いの無い話に愕然とし、言葉を失った。

リトに酷い仕打ちを受け、数千年もの長い間、苦しみを抱えていたジン……。

魔王に操られていたとはいえ、自らの手で故郷を焼き、同胞を殺し、たった一人の友達を手にかけようとした。

そんな二人が今更友情を取り戻そうなんて天地がひっくり返ろうが不可能だった。


「そんな……」


私は現実に打ちのめされ、落胆した。

リトとジンはこれからも互いにすれ違ったまま生きるのだと思うと胸が締め付けられた。


「ジン……私は……なんて愚かな男なんでしょうか……数千年も間……親友が苦しんでたのを知らずに……最低です……」


ランプの中のリトは真実を知り、自分の犯した罪の重さを再認識した。

罪悪感が十字架のように重くのし掛かり、息苦しそうにリトは下を向いた。

その様子を見てフレアは何も言えなかった。


精霊女王は優しく微笑み、私の頭をそっと撫でた。


「君は優しいな……リトとジンを想ってくれて……」

「え ?」

「今更とぼけなくても大丈夫だよ、君はリトの新たな友達だろ ?」


なんと精霊女王は私がリトの召喚士(サモナー)だということを既に見抜いていた。

精霊女王ともなれば、私の心を読むことも造作もないことのようだ。


「それにさっきの君の取り乱しよう……どう見ても他人事には見えなかったからね、そうか……リトは生きていたか……」

「ええ、いつも私を見守ってくれています…… 」


私は女王の前にランプを差し出した。

女王はマジマジとランプを見つめた。

ランプの中のリトは合わせる顔が無いのかばつが悪そうに目を背けていた。


「あの……女王様は……リトのこと、恨んで無いんですか…… ?」


魔王に操られたとは言え、リトは精霊の森を焼き尽くし、精霊女王が弱体化し、子供の姿になってしまうまで魔力を使わせた。

恨まない方が不自然だろう。

だが女王はそっと目を瞑り、切ない表情で微笑んだ。


「恨んでなどいないさ……寧ろ女王でありながら彼を救ってやれなかったことが今でも悔しい……」


リトへの怒りより、自分への不甲斐なさの方が勝っていたようだ。


「ジンは今でも恨んでるの? リトのことを…… 」


ミライはマイペースさを抑え、いつもより冷静なトーンで女王に尋ねた。


「いや、リトを恨むのは筋違いだと言っていた……リトは魔王に操られ、正気では無かったからな……それよりも……森を、仲間を、友を守れなかった自分自身への怒りの方が強いだろう……今でも彼は自分を責め続けている……」


女王は悲しげな表情を浮かべながらジンが去っていった方向を見据えた。


「私……このままではダメだと思うんです……」

「ワカバちゃん ?」


私は真っ直ぐ精霊女王の目を見つめた。

十数年しか生きてない私なんかが数千年も溝が深まってる二人の仲をどうこうしようなんて身の程知らずなのかも知れない……。

それでも放っておけなかった。


「リトもジンさんも、互いに憎み合ってるわけじゃありません……本当は仲直りしたいはずです……もし可能性が少しでもあるなら……私は二人の絆を取り戻す為の力になりたいです !」

「主……」


私は心から強く言い放った。

精霊女王はそんな私を見つめながら感心していた。


「リトめ……暫く会わない間にこんなに素敵な友を作っておったとは……罪な男だ……」


精霊女王はランプに視線を送った。


「人間の娘よ……私からの頼みだ……リトとジンの絆を取り戻してくれ……」


精霊女王は小さな体で深々と頭を下げた。


「そ、そんな……顔を上げてください !」


女王に頭を下げられ、申し訳ない気持ちになった。

そんな時、リリィ達がニコニコしながら戻ってきた。

パーティーの準備が出来たようだ。

どうやらジンの姿が見えないようだが……。


「ワカバちゃーん! 皆さん、お待たせしましたー! パーティーの時間でーす !」


そこには巨大な長方形のテーブルに袖にレースのついた純白のテーブルクロスがかかっていた。

テーブにはお洒落なティーセットが置かれ、高級そうなカップには紅茶が注がれていた。

ホール状のケーキ、パイ、サンドイッチなども白銀に輝くお皿に盛り付けられ、まさに豪勢なパーティーという感じがした。


「リリィちゃんが的確にアドバイスしてくれたお陰でいつもより美味しく作れた気がするわ」

「流石洋館で長年メイドを務めていただけのことはありますね……師匠と呼ばせて下さい」

「えへへ、それほどでもありますよ」


精霊達の間でもリリィは好評のようで、いつの間にかリアとサラとも仲良くなっていた。


「さ、湿っぽい話は一旦終わりにして、今日はお客様を盛大に歓迎するぞ! 乾杯 !」

「「「乾杯 !!!」」」


皆それぞれ丸太で出来た椅子に座り、テーブルを囲った。

精霊女王は声高に宣言し、楽しいパーティーが始まった。

ケーキも程好い甘さでお店のものよりずっと美味しい。

精霊も人間も関係無く、皆で楽しく談笑した。


「所でアンタ達、どうしてこの森にやって来たの ?」


話の流れで唐突にサラが聞いてきた。


「えっと……私達は蟲の……ゴホンゴホン、魔獣討伐の依頼を頼まれてこの森にやって来たんですが、道に迷ってしまって……」


危うく口を滑らせる所だった。

食事中のこともあり、蟲の部分はボカした。


「へえ……魔獣の依頼ね~道理で強いわけよ」

「魔獣ですか……最近この森の近辺にも小さい個体が何匹か現れるようになりましたね……まあジンや私達で駆除出来るレベルでしたが……恐らく貴女達が倒そうとしているのもその魔獣ですよね ?」


リアは優雅に紅茶を啜りながら言った。


「しかし妙なんですよ……その魔獣……いくら倒しても際限なく現れるんです……結界も弱まってますし……このままでは他の精霊達が犠牲になってしまいます……」


それで侵入者に対して過剰に警戒していたのか……。


「大丈夫だよ~私達も強いし~皆で一緒に戦おうよ~」


ミライは呑気にサンドイッチを頬張りながら言った。


「相変わらずですねミライちゃんは」


リリィはミライを見ながら笑い、紅茶を啜った。

皆でワイワイ談笑しながらのパーティーは楽しかったが、心の何処かでジンが気がかりだった。


「あの、すみません、お手洗い行ってきます……」


私は皆の前で嘘をつき、そそくさと席を離れた。


「主……? 何処へ行くおつもりですか」


ランプの中のリトは不思議そうに私に聞いてきた。


「ジンさんと話がしたいんです」


私は歩きながらランプを見つめ、リトの質問に答えた。

リトとジンの友情を取り戻すには、まず彼と腹を割って話し合い、本心を知る必要がある。

私はジンのいる場所を探しに行った。


To Be Continued

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