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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
精霊の森編
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第二百五十三話・精霊女王



森で迷ってしまった私達は紆余曲折を経て精霊達と和解し、樹の上級精霊ドリアードのリアに精霊達の住む世界へと案内された。

普通の人間は滅多に入ることを許されない神聖な場所だ。




「ここが、私達の住む森です」


そこはまるで別世界のようだった。

木々に囲まれ、広大な草原が広がっていた。

辺りは宝石のようにキラキラと輝きを放ち、お伽噺のように幻想的な雰囲気に包まれていた。

色鮮やかな光に包まれた小さな妖精達が楽しそうに飛び交っている。

夢を見てるような気分になった。

とても現実とは思えない。


「凄い綺麗ですね……」

「そうだね~……」


リリィとミライは辺りを見回しながらうっとりとしていた。

一方ジンはムスッと気に食わなそうにそっぽを向いていた。

やはり部外者を森に招き入れるのは抵抗があるのだろう。


「…………」


リトはランプの中から外の景色を懐かしむように覗いていた。


「リト、もしかしてここがお前の言ってた故郷なのか ?」


フレアがリトに尋ねる。


「いえ、そんなはずはありません、私が確かに森ごと燃やしてしまいましたから……それにかつての故郷と似てますが、何処かが微妙に違うんです」


リトは自身なさげに答えた。


「どういう風に違うんだ ?」

「だいぶ昔のことなんで記憶が曖昧なんですが、私がいた精霊の森はもっと広かったはずです……それに比べるとここは小さすぎます」

「だが、お前の知り合いは確かにここに存在しているぞ」


恐らく故郷を焼かれ、逃げ延びた生き残りがここを新たな拠点にしたのだろうとフレアは推測した……。

リトにとっては複雑な心境のはずだ。


「精霊女王、お客様を連れてきました」


リアは何もない空間に話しかけていた。

すると光の粒子が散りばめられ、一人の小さな女の子が舞い降りるように姿を現した。

見た目は10歳くらい……コロナよりも幼いように見えた。

透き通るような金色の長い髪をなびかせ、虹色のワンピースを身に纏い、金持ちの貴族のご令嬢のように気品に満ちていた。

どの精霊よりも桁違いに高い魔力を感じた。


「精霊女王様……」


少女がこの場に現れた途端、空気が一変した。

リアを始め、ジン、サラは彼女を崇めるように一斉に膝をついた。

見た目は幼いが彼らの態度を見る限り、この森で一番偉い立場なのは確かだ。

私達も空気を読み、リアのように少女の前で膝をついた。


「精霊女王様、彼女達は森に迷い込んで来た者達です、悪意ある者達では無かったので、ここに連れてきました……」


リアは私達に目配せをした。


「わ、私は無限(メビウム)結束(ユナイト)のワカバと言います……よ、宜しくお願いします……」

「リリィと申します、メイドを務めさせて頂いてます」

「ミライだよ~見ての通り鳥人(ハーピー)だよ~」


私は緊張しながらたとたどしく、リリィは胸を張りながらはっきりと、ミライはマイペースにそれぞれ自己紹介をした。


「そうか……とても可愛らしいお客さん達だな……それにしても……私の結界もだいぶガタが来てるようだな……後何年持つかも分からん……」


少女は見た目の幼さに反して威厳のある固い口調で言った。

日に日に力が衰えてるらしく、切ない表情を浮かべていた。


「まあ君達に罪は無い……うちの精霊達が迷惑をかけたお詫びだ、君達を歓迎しよう、宴の準備だ」

「はっ !」


少女もとい精霊女王は穏やかな笑みを浮かべながら宣言した。

小さな妖精達は慌ただしく空中を飛び回った。


「せ、セッティングは任せてください !」


サラは精霊女王にお辞儀をすると、セッティングをする為急いで準備に取り掛かろうとした。


「あの、私も手伝って良いですか ?」


セッティングと聞き、メイドの血が騒いだのか、リリィはワクワクしながらサラに尋ねた。


「そんな、客人にそんなことさせられません」

「気にしないで下さい、私はメイドですから !」


リリィは遠慮するサラを強引に説得し、セッティングの手伝いに行ってしまった。


「ちっ」


ジンはそっぽを向いたまま、不機嫌そうに黙って突っ立っているだけだった。

手伝う気は微塵もなさそうだ。


「ジン、貴方も手伝いなさい !」

「ふん、何で俺がこんな奴等の為にパーティーの準備をしなくちゃいけねえんだよ」


リアの注意も聞かず、ジンはイライラした様子でその場を去ろうとした。


「何処へ行くつもりですか ?」

「最近は結界が脆くなってる、いつ悪党が侵入してくるかわかんねえだろ、俺は見張りに行ってくる」


ジンはふて腐れながらパトロールをしにこの場を去ってしまった。


「全く……ジンには困ったものですね……」


ため息をつきながら、リアはジンを放ってサラ達の手伝いに向かった。


取り残された精霊女王と私、ミライとの間に微妙な空気が流れる……。


「ジン……昔は優しくて、気遣いの出来る性格だったのだがな……」


沈黙を破り、嘆くように精霊女王は呟いた。


「……精霊は元々弱い種族だ……昔の大戦で同胞を沢山喪い、上級精霊であるジン、リアやサラくらいしかこの森を守れる者はいない……昔は一人いたんだがな……ジンと肩を並べ、共に戦っていた親友と呼べる存在が……」

「それって……」


間違いない……リトのことだ。

やはりリトとジンは親友だったようだ。


「あの出来事以来……ジンは友を失い、心が荒んでしまった……もう戻ることはないのか……」

「あの……その親友について、聞きたいことがあります……」


私は思いきってジンの親友について尋ねてみた。

どうしても確かめなきゃいけないと思ったからだ。

リトとジンとの間に何があったのか……。

もし二人の友情を修復出来るのなら、是非そうしたい。


「何故君がそのことについて知りたいんだ ?」

「えっと……詳しいことは言えませんけど……それでも知りたいんです……お願いします !」


昔から隠し事は下手な方だと自負していたけど、明らかに変な人だなと思われたな……。

だけど私がリトの召喚士(サモナー)であることは一応伏せておくことにした。

今の所良好な精霊達との関係が壊れてしまいかねないからだ。


「……良い目をしているな……君ならば信用できそうだ」


精霊女王は真っ直ぐに私の目を見つめながら言った。

全てを見透かされている感じがした。


「宴まで時間があるし……長くなるが君達にも話しておこうと思う……ジンに起こった悲劇と……精霊の森の歴史を……」


精霊女王はスーッと深呼吸をして息を整え、ゆっくりと語り始めた。

精霊の森に起こった全貌が今明らかになろうとしていた。


To Be Continued

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