第二十三話・吸血鬼と半魚人
魔獣退治に半魚人の村に向かった私達はそこで半魚人最強の男・マルクと出会う。彼を倒さなければこの村に入ることすら許されない。
そこでヴェルザードがマルクと戦うことになった。
吸血鬼と半魚人の戦いが今始まろうとしていた。
「でも何でご主人様やる気なんですかね」
「さ、さあ……」
「主の前で良いとこ見せたいとかではありませんか ?」
リトが嫌みっぽく邪推をした。いやいやいや、そんなはずは……と思ったものの……。
ヴェルザードは素直じゃないから口より行動で示そうとしても不思議じゃない。
「ヴェルザードか……戦う姿を見るのは初めてだな。どれ、お手並み拝見といこうじゃないか」
エルサは腕を組ながら胸を踊らせていた。
「女の前だからってカッコつけてっと痛い目を見るぜ」
「お前こそ外を出歩けなくなっても知らねえぞ」
ヴェルザードとマルクは互いに近寄り、睨み合った。
「オラァッ魚人斬撃 !!!」
先に仕掛けたのはマルクだった。肘に備えられたナイフのように鋭いヒレがヴェルザードを襲う !
「その動きはもう見た !」
ヴェルザードはかわすとマルクの顔を鷲掴みにし、高く持ち上げた。なんて馬鹿力なんだ…… !
マルクは振りほどこうと必死に足をバタつかせた。
「はぁぁぁぁ !!!」
ヴェルザードはマルクを振り回すと地面に叩きつけた。マルクは後頭部に強い衝撃を受け、吐血した。地面にはメキメキとヒビが入った。
「す……すごい……」
「ご主人様は吸血鬼。その強大な魔力のほぼ全てを純粋な怪力に変換することが出来ます」
リリィは私に解説してくれた。そういえばリトも似たような攻撃を受けていたっけ。
「ほう……この俺をダウンさせるとはやるじゃねえか…… !」
仰向けになりながらもマルクはニヤリと笑い、すぐに反撃に出た。
「オラァ !!!」
マルクは拳を強く握り、ヴェルザードの腹にパンチを喰らわせた。
「くぅッ…… !」
ヴェルザードの腹はメコッとめり込み、苦しい表情を浮かべた。
「まだまだ行くぜぇ !オラオラオラ !!!」
マルクは息をつかせぬ程に連続でパンチを繰り出し、ヴェルザードをタコ殴りにした。
マルクのパンチは鋭く、速く、ヴェルザードの顔面を容赦なく襲った。鈍い音がリズムを刻むように響く。
「何て速さだ……これが半魚人の実力なのか…… !」
エルサも関心していた。
「ご主人様ー !負けないでくださーい !」
リリィは声を張り上げ、ヴェルザードを応援した。
「エイヤぁぁぁぁぁ !!!」
マルクは最後の一発を叩き込もうとしたが、ヴェルザードはその腕をとらえた。
「何ぃ !?」
「お前のパンチは速いが、重さが足りない。リトの方が遥かに痛かったぜ !」
ヴェルザードは腕を掴むと背負い投げでマルクを投げ飛ばした。
「ウオアアアアア !!!!」
投げ飛ばされたマルクは空中で回り、体勢を立て直すと地面に水かきの備わった足を引っかけ、飛ばされた時の勢いに引きずられながらも何とか足を止めることに成功した。
「はぁ……はぁ……この村以外でこんなに強いやつと出会えるなんてな…… !お前、名前は何て言うんだ !」
マルクは息を切らしながらもワクワクしていた。
「俺は吸血鬼のヴェルザードだ。覚えておけ」
「吸血鬼 ?少数しか存在しない伝説の最上位種魔族…… !?道理で強いわけだ……だが !本当の戦いはこれからだ」
「おしまいよ !」
ガッ !!!
「いてっ !?」
マルクが立ち上がろうとした瞬間、後ろから女が彼の後頭部をチョップした。
「アンタは何でいつもケンカばっかりしちゃうの !?折角来てくれた人達追い返してどうすんのよ !」
「う、うるせえなメラァ !余所者の力なんて借りるまでもねえんだよ !」
「ヴィオ村長が依頼したんでしょ!?アンタに口出しする権利は無いの !」
突然マルクと女の痴話喧嘩が始まった。
ヴェルザードはポカーンとし、呆気にとられた。
女はメラと呼ばれ、マルクと同じヒレ耳で人と同じ顔をしており、おまけに可愛らしかった。性格きつそうだけど……。
「おーい、何やら騒がしいのう」
そこへ、小柄で白髪の老人が杖をつきながらゆっくりと歩いてきた。
「ヴィオ村長 !」
「村長 ?」
場のピリピリした空気が一気に和んだ。このおおらかで優しそうな老人こそが、半魚人の村を治める村長のようだ。
「貴方がこの村の村長ですか !私達は貴方に魔獣退治の依頼を受け、ここにやってきました。無限の結束と申します !」
エルサはすぐさまヴィオ村長の元へ駆け寄り、膝まづいた。
「おお !あなた方がかの巨大蜘蛛魔獣を倒したと言う無限の結束ですか…… !お会いできて光栄ですぞ !」
エルサとヴィオ村長は熱い握手を交わした。
「それで、魔獣について詳しくお話を聞かせて欲しいのですが……」
「分かっております。ただ立ち話も何ですから、私の家で話をしませんか?おい、マルク、メラ !彼らを案内して差し上げなさい。」
「はい!ほら、マルクも行くよ !」
「ちっ、わーったよ !」
ヴィオ村長に指示され、マルク達は私達を村長の家に案内した。
後に私達は驚くべき事実を知ることとなる。
To Be Continued




