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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
スライムの来襲編
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第二百四十七話・自由



蒼燃焼巨砲(ブルーバーナーキャノン)渦流最高光(ボルテックスプリーム)は激しくぶつかり合ったが最後にはリトが競り勝ち、スライは彼方へと消えていった。

王都を巻き込んだスライとの戦いはようやく終わった。

半壊した街を眺めながらリトは地上に降り立った。

長い時間戦った為、リトの体は透けて消えかけていた。


「主、スライは倒しました」


リトは私の元に駆け寄り、ニコっと微笑んだ。

私もリトの顔を見上げ、ホッと胸を撫で下ろした。


「所で……スライは……どうなったんですか…… ?」


私は恐る恐るリトに尋ねた。

多くの人間の命を奪ったとは言え、純粋な悪人とは言い切れない。

スライの安否がどうしても気になった。


「遠い遠い森の中へ消えていきました……あの生命力の高さです……簡単には死なないでしょう……最ももう悪事を働くことはないと思いますがね」


リトは森のある方向を見つめながら言った。

その瞳は確信を秘めていた。

拳を交えた事でスライを理解出来たようだった。

私もスライの無事を信じることにした。

グラッケンの呪縛から解放されて、誰にも邪魔されず、自由に生きてほしい……。


「では、そろそろ私は消えますよ、お疲れ様です、主」

「お疲れ、リト」


リトは穏やかな笑顔を浮かべ、光の粒子となって消え、ランプの中に戻っていった。


「へ、相変わらずの化け物だぜ、リトの奴」

「俺達が束になっても敵わなかった相手を一人で倒しちまうなんてな……」


イリスとラゴンは悔しさ混じりに感心していた。


「それにしても、どうするよここ」

「だいぶ派手に壊れたね~」


ミライは他人事のように街中を見渡しながら呟いた。

王都ガメロットはスライの襲撃により、酷い有り様だった。

幸いにも死人は出なかったが、機能を完全に回復させるにはかなりの時間がかかるだろう。


「ガメロットの国王は大金を貯えてる、あのケチなジジイだ……街の復興はガメロット側に負担させようぜ」

「隣の国もいくらか支援してくれると思いますし」


イリスは笑いながら言った。

王都の復興なんて想像以上に大変そうだ。

王国騎士団も皆スライにやられたし……。

一応動ける私も街の復興を手伝うつもりだ。


「所で……エルサ達の方は大丈夫なのか ?」

「今頃はグラッケンの研究所を見つけて破壊してるだろうな」


マルク達はそんな話をしていた。

まあスライが倒れた今、グラッケンが捕まるのも時間の問題だろう。

皆は救援が来るまでゴーストタウンと化したガメロットでいつまでも雑談をし、時間を潰した。


その様子を影から監視している者がいた。

ペルシアだ。

ミーデにスライと無限(メビウム)結束(ユナイト)の戦いの行く末を見届けるよう命じられ、ずっと影に隠れていたのだ。


「イフリート……スライを消し去るとは恐ろしい存在ね……ミーデ様に報告しなければ……」


ペルシアはそれとは別にワカバの事をじーっと眺めていた。

魔界で出来た唯一の友達……。

しかし立場の違いから二人は一緒にはいられなかった。


「ワカバ様……いつか貴女を私のものにしてみます……」


ペルシアは低い声で呟くと疾風のように一瞬でこの場から消えた。

彼女の存在に気付く者は誰一人として居なかった。




日が沈む頃、他国の騎士団が駆け付けた。

ラゴンを始め、怪我人は皆担架で療養所まで運ばれていった。

怪我を負ったものの、全員命に別状は無かった。

マルク、ミライ、グレンは軽傷で済んでいたが念の為救護班に連れていかれた。

スライの生死は実際には不明だが、表向きは死亡扱いとなった。


私とコロナとクロスは残り、他国の騎士団達と共に被害を受けた王都ガメロットの復興に尽力した。

スライの脅威から王都ガメロットの被害を最小限に抑えた功績から、無限(メビウム)結束(ユナイト)爬虫(レプティル)騎士団(ナイツ)堅固(ソリッド)山猫(キャッツ)は国から表彰を受けた。


一方エルサ達は捕らえたグラッケンを衛兵に引き渡し、危険な研究によって甚大な被害をもたらした罪で投獄させた。

一時的に解放されたフライも約束通り牢屋に戻った。

ルーシーは少し寂しそうにしながらもフライと別れの挨拶を交わした。




「じゃあな、ルーシー」


牢屋に戻り、鉄格子越しにルーシーに呼び掛けるフライ。

ルーシーは複雑な表情を浮かべながらうつ向いていた。


「……辛い事があったら、俺にも相談しろよ、最も、お前には姉ちゃんや、仲間達が居るからそんな心配は無用なんだけどな」


フライはルーシーに向かって不器用な笑顔を浮かべた。


「……フライ……」

「何だ? ルーシー……」


ルーシーは小声で呟いた。


「風邪には気を付けてね……さよなら……」


それだけ言い残すと、ルーシーはエルサ、ヴェルザードの元へ駆け寄り、牢獄を去っていった。

フライは複雑な表情をしながらルーシーの背中をいつまでも見送った。


「元気でやれよ、ルーシー……」




リトとの戦いに敗れ、彼方まで吹っ飛ばされたスライ。

だがスライは運良く森に向かって落下し、九死に一生を得た。

落ち葉にまみれながらスライは大の字に仰向けになっていた。

目を覚ましたのは一週間ぶりだ。

脱力感に襲われ、体が重かったが、痛みは感じなかった。

魔力を使い果たしたのか、体も少年のような体型に戻っていた。

スライの生命力は凄まじく、致命傷を受けた体が嘘のように再生、回復していた。


「ここは……」


辺りを見回すと見慣れた緑に囲まれた景色が広がった。

最初の頃は森に足を運んだ冒険者を殺して吸収していたっけ……。

そうスライは懐かしんだ。


「あ!スライムのお兄ちゃん !」

「これはこれは、またお会いしましたね!」


そこに通りかかったのは、以前スライが助けた少女とその父親だった。

偶然の再会である。


「今は娘と一緒に山菜採りの最中何ですよ」

「今夜は森で採った食材でシチュー作るんだよ !」


ボーっとしているスライに二人は楽しそうに話をした。


「良かったら、またうちに来てご飯をご馳走にならないかい ?」


少女の父親はスライに気さくに誘った。

だがスライはゆっくりと首を横に振った。


「悪いが、やめておく……俺には行く所がある」


そう言うとスライは背を向け、何処かへ去ろうとした。


「待って !」


少女が切なそうな顔で呼び止めた。


「何処へ行くつもりなの……また会えるよね…… ?」


少女の声は少し震えていた。

スライは少女の方へ振り返った。


「また会えるかは……分からない……だけど俺には……やらなきゃいけないことがある……」


スライは空を見据えながら言った。

彼を縛る者は何もなく、自由だった。

何をすべきなのか、何がやりたいのか……その答えを探す旅に出ることにした。


「じゃあな……」


スライは呆然と立ち尽くす二人を置いて歩き出し、森の中へと消えていった。

少女は小さな少年の背中をいつまでも見つめることしか出来なかった。


スライがこの先何処へ向かうのか、何を目指していくのか……それを知る者は誰も居ない……。

ただ一つ言えることは、スライはもう自由だということだ。


To Be Continued

こんにちは!烈斗です!

これにて「スライム編」完結でございます!

ここまで読んで下さった方々、ありがとうございます!

次回からは新章になります、今後とも宜しくお願いします!

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