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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
スライムの来襲編
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第二百四十六・空の決戦、決着



王都ガメロットを舞台にリトとスライの激闘は続いていた。

短時間のうちに相手の強さに対応し、戦い方が洗練され、手のつけられない程急成長を遂げていくスライ。

リトは魔人形態に変身し、溢れんばかりのパワーでスライを圧倒する。

だがスライは持ち前の吸収能力で得た技を駆使し、逆にリトを追い詰めた。

後が無くなったリトは切り札である「蒼炎形態」へと変身した。


「この私にここまで力を出させるとは……スライさん、誇っていいですよ」


リトは顔を上げ、青く光り輝く瞳でスライを見据えた。

にこやかに微笑むと次の瞬間、疾風のようにスライの視界から姿を消した。

混乱し、辺りを見回すスライ。

その背後をリトの凄まじい蹴りが襲う。


バァァンッ


リトの回し蹴りが炸裂し、スライは盛大に吹っ飛ばされた。

すぐさまバランスを保ち、滑りながらも何とか踏み留まり、体勢を立て直すスライ。

だが息つかせる間もなくリトが加速しながら飛びかかってきた。


ドガドガドガドカドカ


常人の目には負えない程速く凄まじい肉弾戦が繰り広げられた。

音速で放たれる拳と拳がぶつかり、火花を散らす。


「ぐっ……ぐおおっ…… !」


やがてスライの顔が険しく歪む。

リトが押し始めたようだ。

更に加速し、スライを上回るスピードで怒濤の連続パンチを打ち込む。

スライはリトのスピードについていけず、一方的に攻撃を受け続けた。


「ふんっ !」


スライは反撃に出ようと体を瞬時に液体に変化させ、リトに覆い被さろうとした。

吸収するのでは無く、動きを封じる為の手段だ。

だがそれを見抜いたリトは疾風のようにスライの目の前から姿を消した。


「くっ、何処だ…… !」


リトを見失い、人型に戻って辺りを見回すスライ。

空を見上げると空中にリトが浮遊して手招きをしていた。


「こっちですよ」


リトの挑発に激昂し、スライは背中から巨大な炎に包まれた翼を生やした。

フレアの能力の一部の体現である。

スライは炎の翼を羽ばたかせ、大地を蹴りながら飛び上がった。

二人は戦いの舞台を大空へ移した。




「すげえ……」


マルク、グレン、ミライはリトが戦っている間、ラゴン達が隠れている場所まで避難した。

全員呆然としながら天を仰ぎ、リトとスライの空中戦を眺めていた。

常人の目では最早点と点がぶつかり合ってるようにしか見えなかった。

二人の戦いは既に神の領域にまで至っていた。


「悔しいが……俺達に出来ることはもう何もねえ……後はリトの勝利を信じるだけだ……」

「うん…… 」


私はぎゅっとランプを抱き締めた。

大丈夫……リトなどんな時だって勝利してきた……今回だって負けるもんか……。




「はぁ! でやっ !」

「くっ !ぐおっ !」


ドンッ バンッ


サファイアのように澄み渡る青空を二人の超人が縦横無尽に飛び回る。

空を裂くように加速しながら両者は激突し、爆音を轟かせた。

リトが拳を繰り出すとスライも負けじとパンチを返す。

互いに一歩も譲らず、目にも止まらぬ殴り合いを展開する。


「うおおおおおおおお !!!」


だが時間が経つに連れ、拮抗していた二人の間に少しずつ変化が訪れた。

最初こそ互角だったが、「蒼炎形態」となったリトの力が徐々にスライを凌駕していった。

スライの攻撃が見切られ、空振ることが多くなっていった。

流石のスライでもこれ以上リトを上回る成長は望めなかった。


「ぐっ! ごおっ!? がはぁっ !」


速く、重いリトの一撃がスライを追い詰め、じわじわとダメージを蓄積させる。

スライの中に敗北するかも知れないと言う恐怖と焦りという感情が芽生え始めた。

だがそれと同時に楽しいという感情も生まれていた。

その証拠にあれだけボコボコにやられていながらも何処か嬉しそうに口角をつり上げていた。


「どうしました? もしかして楽しんでませんか ?」

「さあな、俺にも分からない」


リトとスライは拳を交えながら雑談に近い会話を始めた。

スライの行動原理はグラッケンの命令が全てだった。

グラッケンの望み通りに生き、人間を補食し、成長していく……スライが戦う理由はそれだけだった。

だがリトと戦うことは命令に関係なく、楽しかった。

一方的な蹂躙でもなく、相手の命を奪わない、純粋な力と力のぶつかり合い……。

そこに善も悪も無かった。


「こんな気持ちになったのは生まれて初めてだ……心が踊る……」

「誰かの命令ではなく、自分の意思で行動しているからですよ、今の貴方は自由です」


リトも理解していた。

以前戦った時は操り人形のようで生気を感じ無かったが、今のスライは生き生きとしていた。

破壊するだけの化け物ではなく、戦いを楽しむ戦士の顔になっていた。

だからこそ全力でぶつかり、スライの全てを受け止める、そう決めたのだ。


魔人五分身(イフリートマルチファイブ) !」


リトは炎を手のひらから召喚し、四人の分身を作り出した。


「さあ、行きなさい」


本体の命令を受け、四人の分身達は一斉にスライに襲い掛かった。


「うおおおおおお !」


咆哮を上げ、迎え撃つスライ。

四人の分身達を相手に臆することなく孤軍奮闘した。

だが流石に数には勝てず、絶え間無く繰り出される攻撃の連鎖に対処しきれずに防御を崩され、一方的に袋叩きに遭った。


「ぬぅ……ヌオオオオオオオオオオオ !」


ピシャアアアア


スライは血管が浮き出る程全身に力を込め、口から高出力の水のブレスを放ち、四人の分身を薙ぎ払った。

分身達は水のブレスを浴び、瞬く間に消滅した。


「はぁ……はぁ……」


流石のスライも疲れが見栄始めたのか、息を切らし始めた。

背中に生えた炎の翼も心なしか小さくなっていた。


「そろそろ決着をつけましょうか」


リトはそう言うと、スライから距離を取り、ゆっくりと両手を上下に重ね、必殺技を放つ準備を始めた。

それに気付いたスライも同じように両手を重ね、魔力を溜めた。

スライの手のひらから光の粒子が溢れ、七色の輝きを放った。

コロナの持つ究極魔法「渦流最高光(ボルテックスプリーム)」だ。


蒼燃焼巨砲(ブルーバーナーキャノン) !」

「グオオオオオオオオオオオ !!!」


チュドォォォン


青白く輝く高密度の熱線と七色に煌めく光の波……二つの巨大なエネルギーが大気を引き裂くように激突した。

閃光がほとばしり、無音の爆発が広がった。


「貴方は強いです……たった一人でよくぞ最後まで戦い抜きました……これは私からの手向けです」


リトは腕に力を込め、熱線の威力を高めた。

青い熱線が七色の光線を飲み込むように徐々に侵食していく。

スライは最後まで抵抗するが、熱線は容赦なくスライの光線を押し潰す。

衝撃で炎の翼も遂にかき消えた。


「ぐっ……グワァァァァァァァァ !!!」


壮絶なエネルギーの撃ち合いはリトが競り勝った。

熱線の勢いに押し出され、スライは絶叫を響かせながら彼方まで飛んでいった。




「はぁ……はぁ……」



全力を出し切り、リトは肩で呼吸しながら浮遊していた。

制限時間が迫り、体が半透明になりかけていた。

スライは何処へ消えたのか、死んでしまったのか、生きているのか……それはリトにも分からなかった。

リトとスライによる大決戦はリトの勝利に終わり、王都をも巻き込んだ長きに渡るスライム事件もようやく幕を閉じた。


To Be Continued

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