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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
スライムの来襲編
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第二百四十三話・分身体の逆襲



グラッケン研究所にて遂にスライを裏から操っている黒幕、グラッケンを追い詰めたエルサ達。

だがグラッケンは侵入者が攻めて来ることを見越して研究所内にスライの分身体を用意していた。

分身体達は操り人形のようにエルサ達に襲い掛かった。

スライに比べて戦闘能力や魔力では劣り、吸収と補食する力は無いが、それでも四人を苦しめるには充分だった。


「くっ…… !」

「何なのこいつ……! ベトベトするし攻撃が効かないよ !」


エルサとルーシーがいくら斬ろうとも、分身体には傷一つつけることが出来なかった。

体の大部分が水分で出来ているため、剣で斬れず、物理的にダメージを与えることが

出来なかった。


ニュルルル


「んっ……これはっ…… !」

「やだ、ちょっと離れてよ !気持ち悪い…… !」


分身体の恐るべき能力、それは搦め手だ。

人型から不定形に体を変化させると粘性の身体でエルサやルーシーに覆い被さり、彼女達の動きを封じた。


「離れろ……!くっ……何処触って……! んっ…… !?」

「力が……入ら……ない……! あっ…… !」


エルサとルーシーは必死に抵抗し、体にべったりとくっついたスライムを引き剥がそとした。

だがスライムの粘性の身体はヌルッと触手のように鎧の中に入り込み、直に肌にまとわりつき、彼女達から魔力を吸い取った。

ヘドロのようにヌメっとした気持ちの悪い感触が彼女達を襲う。


「あっ……」

「んんっ……」


騎士にあるまじき生娘の如く情けない声を上げる二人。

魔力を吸われる度、ビクッと痙攣を起こし、体をよじらせ、仰け反った。


「ハッハッハ、こいつらに補食能力は無いが、じわじわと相手の魔力を吸い尽くす事が出来るのだ! 何も出来ぬまま、無様に悶えていろ !」


高笑いをしながら、スライムにされるがままの二人を侮辱するグラッケン。

二人は屈辱を味わい、怒りに身を震わせながらも、徐々に抵抗を失っていった。


「くそ……こんなスライム……すぐにでも……はんっ…… !?」

「はぁ……はぁ……もう……だめぇ……お姉……ちゃぁん……」


息を荒げ、苦しそうに頬を赤らめながら二人は膝をついた。

なおも分身体は彼女達から容赦なく魔力を奪い続ける。




「たく、二人共情けねえなぁ……くそっ」


醜態を晒す二人に悪態をつきながら、ヴェルザードは分身体と交戦していた。

だがヴェルザードは分身体から必要以上に距離を取っていた。

スライムは水属性……。

対してヴェルザードもとい吸血鬼(ヴァンパイア)は水が苦手な種族だ。

エルサやルーシーみたいに全身にまとわりつかれたらシャレにならない。


「ちっ……! 迂闊に近付けねえな……」


へっぴり腰になりながらヴェルザードは分身体から一定以上の距離を保ち続けていた。


「こうなったら、赤槍(レッドランス) !」


ヴェルザードは自らの血で槍を創り出し、即座に分身体に投げつけた。


ザシュッ


槍は分身体の胸を貫いた。

だが分身体は何事も無かったかのようにケロッとしていた。

痛覚の概念も無いようだ。


「これも意味がねえか……」


分身体は腕を突き出すと手のひらから水の波動弾を連発した。


「くっ…… !」


雨あられのように降りかかる水の弾丸の中をヴェルザードは必死に掻い潜る。

だが、走り疲れた所に一発の水の弾丸がヴェルザードの膝に命中した。


「がぁぁぁぁぁぁぁ !」


ヴェルザードは膝に直接肌を焼かれるような激痛を覚え、膝を抱えながら悶絶した。

その場でうずくまり、痛みで動けないヴェルザードにゆっくりと分身体の魔の手が迫った。


「くそぉっ……」


万事休すか……目を瞑りながらそう思ったヴェルザード……。


「情けないな、お前は仮にもこの俺を倒した男だろう」


フライの声が聞こえ、ヴェルザードは恐る恐る目を開けた。

すると目の前でフライが分身体の体を素手で貫き、ビー玉くらいの大きさの球体を掴んでいた。

分身体は激痛に襲われたかのように顔を醜く歪ませていた。


「フンッ !」


フライはビー玉状の球体を一瞬で粉々に砕いた。

分身体は原型を留めぬ程に泥々に溶け、水溜まりのようになり、やがて消滅した。


「なっ……どういうことだ…… ?」

「スライムにも心臓は存在する。さっき俺が砕いたのは核、どれだけ再生しても、こいつを失えばスライムは死ぬ」

「何でお前その事知ってるんだよ」

「俺が研究所に居た頃からグラッケンはスライムの研究をしていたからな……その程度の知識ぐらいある」


フライは手を叩いて埃を払うと乱暴にヴェルザードの腕を掴んで無理矢理立たせた。


「所で、お前が相手していた分身体は……」

「とっくに核を潰して消滅させたよ」


フライの目線はグラッケンの方へ向いていた。


「俺にはやることがある……スライムごときにかまけてる暇はねえ……」




「はぁ……はぁ……」

「うっ……くっ……」


エルサとルーシーは今もなおスライムにまとわりつかれ、じわじわと魔力を吸われていた。

スライムは一気に魔力を吸うのではなく、獲物を弱らせる為、ゆっくりと時間をかけて吸っていた。

エルサは手に力が入らなくなり、剣を地面に落としてしまった。


「ハッハッハ! ハイエルフとダークエルフともあろうものが、スライムに、しかも分身に翻弄され、なすがまま弄ばれるとは愉快だなぁ !」


グラッケンは身動きのとれない二人に近付くとエルサを蹴り倒し、頭をジリジリと踏みつけた。


「あっ……ぐう…… !」

「お姉……ちゃん……」

「どうだ、何の力も持たぬ無力な人間に良い様に踏みつけられる気分は……」


グラッケンは舌を舐めずり、エルサを見下して悦に入った。


「調子に……乗る……なよ……! 魔力を吸われるのは……これが……初めてでは……ない…… !」


エルサは苦痛に顔を歪めながらもルーシーに目配せをした。

ルーシーも呆けた面を浮かべながらもエルサの顔を見て静かに頷いた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ !」


エルサとルーシーはスライムにまとわりつかれた状態で全身に力を込めた。

すると内側から風の魔力が膨張し、スライムの身体が震え始めた。


「何……何だ……? この現象は…… !」


突然の事にグラッケンは怖じ気づいたのか、足をどけ、後退りをした。


「「はぁっ !!!」」


パァンッ


エルサとルーシーにまとわりついていた分身体が風船のように破裂し、四方八方に飛び散った。

彼女達の持つ風の力が内側から分身体を破壊したのだ。


「ば、馬鹿な…… !」


自分を守ってくれるはずだった分身体達が全滅し、余裕だった態度が一変してグラッケンは取り乱した。

慌てて逃げようとするも転んで尻餅をついた。

すかさずエルサはグラッケンの胸ぐらを掴み、剣を突き立てた。


「ひっ……」

「終わりだな、グラッケン……」


To Be Continued

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