表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
スライムの来襲編
244/400

第二百四十二話・突入、グラッケン研究所



ワカバ達が王都ガメロットでスライと死闘を繰り広げているのと同じ頃、エルサ、ヴェルザード、ルーシー、フライの四人は森の奥地にあるグラッケンの研究所に突入した。


「ここがグラッケンの研究所か……」


研究所内は薄暗く、蝋燭で灯りを灯していた。

お化けが出そうな怪しい雰囲気で、あちこちに資料やガラスの破片が散乱しており、異臭が漂っていた。

絵に描いたようなマッドサイエンティストの研究所そのものだった。


「嫌でも思い出すぜ、あの頃と何も変わってない……」


フライは顔をしかめながら辺りを見回した。

彼の脳裏には忌まわしき幼き日の記憶が甦っていた。

愛情も受けず、幼少期をずっとこの場所で過ごしていたと思うと、胸が痛んだ。


「しかし、肝心のグラッケン博士の姿が見当たらないな……」

「僕らが来たことを察して何処かに隠れたんじゃないの ?」


意外と研究所内は城ノ中のように広く、隠れられそうなスポットはいくらでもあった。


「グラッケンは地下室に籠っている……」


そう言うとフライは端の方に配置された本棚を持ち上げ、乱暴に投げ飛ばした。

大きな物音を立て、本棚は地面に叩きつけられた。

衝撃で何十冊もの本が散乱した。


「おい何を…… !って……」


本棚が置いてあった場所に隠し扉が現れた。

フライがドアノブを握って扉を豪快に開けると地下への階段が何処までも続いていた。


「地下室への入り口だ……行くぞ」


フライは地下への行き方を今でも鮮明に覚えていた。

彼に案内され、エルサ達は気を引き締めながら階段を降りていった。




「地下室か……不気味な所だな……」


フライの後に続いて果てしなく階段を降りていくうちに、遂に地下室へとたどり着いた。

地下室は闘技場のように広く、いくつもの培養液の入った巨大なカプセルが至るところに並べられていた。

あまりにも悪趣味な場所にルーシーやヴェルザードは苦い顔を見せた。


「出てこいグラッケン! 隠れても無駄だ! 研究所ごとぶっ壊してやる !」


フライは怒りの形相を浮かべながら怒鳴り声を上げた。


「ククク……よく来たな……侵入者共……」


フライの声に反応し、奥の方からヌッと何者かが姿を見せた。

金髪のオールバックで眼鏡をかけ、白衣を身に纏っていた長身の中年男……。


「君が……グラッケンなのか…… !?」


エルサは男の存在に気付くと即座に鞘から剣を抜き、身構えた。


「如何にも……俺こそが天才科学者、グラッケンミラインだ……」


グラッケンは不敵な笑みを浮かべながら丁寧に自己紹介した。


「私達は無限(メビウム)結束(ユナイト)、グラッケンミライン、君を捕まえに来た !」


エルサは前に出ると鋭い目付きでグラッケンを睨み付け、剣をを突き立てた。

だがグラッケンは微動だにせず、余裕の態度を崩さなかった。


「しかし、良くこの場所が分かったな……王都直属の騎士団が一週間かけても探し出せなかったというのに」

「簡単だ、彼が案内していたからだ、ここは彼の実家らしいからな」


エルサはフライに目線を配った。

フライはヅカヅカと鼻息を荒げながら前に出て、威圧感を醸し出しながらグラッケンに詰め寄った。


「俺は一時的にこいつらに協力しているだけだ、フランケンシュタインって言えば分かるだろ ?」

「フライ……? ああ、思い出した! 十数年前くらいに初めて創り上げた第一号だ! だが成長の見込みが無くてな、結局失敗作として捨ててしまったよ…… 」


可笑しそうに笑いながら語るグラッケン。

神経を逆撫でされ、フライは目を血走らせながら今にも襲い掛からんばかりの勢いだった。


「落ち着けフライ……」


目の前の敵を前に興奮を抑えきれないフライを何とか宥めるヴェルザードとルーシー。


「君は人工生命体スライムを創り出し、命を弄び、多くの人々の命を奪った……これ以上罪を重ねる事は許されない、よって君を連行する !」

「困るな……折角誰の邪魔も入らぬこの研究所で自由に研究をしていたというのに……」


グラッケンの声には憎悪の感情が入り混じっていた。

エルサ達はいつでも斬りかかれるよう、それぞれ戦闘体勢に入った。

フライはグラッケンの顔を睨み、ワナワナと身を震わせた。

全体に緊張が走る。


「悪いが貴様らにはここで死んでもらうぞ、俺はまだ捕まるわけにはいかん、命の研究はまだ終わっていないからな」

「寝言言ってるんじゃないよ、ただの科学者のアンタが、どうやって僕達を倒すって言うのさ」


ルーシーは軽蔑の目でグラッケンを見下した。


「俺が何の準備もなく貴様らの前に姿を現したと思うのか ?」


グラッケンがニヤリと笑うと、突然謎の魔物らしき物体が四体現れ、エルサ達に襲い掛かった。


「何 !?」


四人は即座に身構え、謎の物体達の不意打ちを受け止めた。


「何なんだこいつらは…… !」

「これがグラッケンの創ったスライムなのか !?」


謎の物体はよく見ると人の姿をしており、薄暗い青色の肌をしていた。

無表情で生気が感じられず、まるで人形のようだった。


「惜しいな……そいつらは確かに私が創ったが、本体ではない……こいつらはスライの分身体だ……出来損ないではあるが、貴様らのような侵入者を撃退するには充分な戦闘能力を持っている……ククク……」


現在スライ本体は王都ガメロットを襲撃中だ。

グラッケン自体に戦闘能力は無い。

万が一研究所を襲われた時の為の保険としてグラッケンは分身体を用心棒として用意していた。


「何処まで命を弄べば気が済むんだ !」

「あくまで研究の副産物だ……さあ分身体共よ……こいつらを皆殺しにしろ !」


グラッケンの言葉に従い、分身体達はゾンビのようにゆらりと近付き、四人に襲い掛かった。

グラッケンを捕まえる前に、まずは分身体達を何とかしなければならなかった。


「皆、こいつらを先に片付けるぞ !」

「ああ !」


エルサ、ルーシー、ヴェルザード、フライは寂れた研究所の地下室内でスライの分身体達と戦うことになった。


To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ