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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
スライムの来襲編
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第二百四十話・マルク達の奮戦



戦火に包まれた王都ガメロットを舞台にスライとの決戦が始まった。

マルク、グレンは接近戦に挑み、ミライは空から二人の援護をする形になった。

コロナは三人が戦っている間に魔力を溜めていた。




「大丈夫ですか ?」


一方私とクロスはスライにやられた騎士達の手当てをしていた。

イリスやラゴン達も酷い怪我を負っていたが命に別状は無かった。


「ありがとよ、お嬢ちゃん」


手当てを受けながら、イリスは少し照れ臭そうに言った。


「それにしても、何なんだ、あの化け物は……」

「グラッケンミラインって化学者が人工的に生み出したスライムだ、奴は人間や魔族の持つ魔力を吸収して、無限に強くなる……とんでもない化け物だよ」


クロスはスライの方を見ながら静かに語った。


「成る程……道理で俺が敵わないわけだ……」


ラゴンは苦笑いをしながら言った。


「そんな奴相手に、お前らだけで倒せんのか ?てかエルサ達はどうしたんだよ」

「エルサさん達はグラッケンの研究所を探しに森へ向かいました」

「マジかよ……」


イリスは眉を潜め、不安そうに私を見つめた。

最初こそ目の敵にしていたが何だかんだでエルサの実力を理解しているのは彼らだった。

よりによって肝心な時にエルサがいないと知り、イリスは不安を隠せずにいた。


「大丈夫ですよ、きっと倒せます……」




マルクとグレンはヒレと剣をそれぞれ振り回し、スライに接近戦で挑んだ。

スライは片腕を禍々しい巨大な剣状へと変質させ、二人を迎え撃つ。


キィン キキィン カキィン


二人がかりの怒濤の剣撃をスライは淡々といなす。

以前のような獣じみた野生の戦闘スタイルではなく、洗練され、一人前の剣士のような戦いぶりを見せた。


「くっ…… !スライムのくせに、まるで達人みてえだな !」

「俺達を子供扱いしやがる !」


どれだけ剣を叩き込もうとスライは全て受け止めてしまう。

純粋な剣術ではスライが完全に上回っていた。


「私もいるよ~それ~ !」


ミライは翼を広げ、上空から羽根の弾丸をスライに浴びせた。

だがスライは微動だにせず、棒立ちのまま降り注ぐ羽根の弾丸を浴び続けた。

だがスライの皮膚に突き刺さった羽根は沼のように体内へ沈んでいった。


「駄目だ~効いてないよ~ !」


スライはニヤリと笑うと上空で飛んでいるミライを見上げて手をかざし、手のひらから無数の羽根を放った。


「きゃあああ~ !」


スライはミライの羽根乱針(シャトルラッシュ)を体内に取り込み、即座に自分のものにした。

無数の羽根が矢のようにミライを容赦なく突き刺す。

悲鳴を上げながら、ミライは地面へ落下していった。


「ミライちゃん! てめえ !」


激昂したマルクは拳を握り、勢い良くスライの頬に渾身のパンチを喰らわせた。

だがプルンと頬がゼリーのように震えるだけで衝撃が吸収され、大したダメージにはならなかった。


「もう終わりか」


スライはマルクの腕を掴むと軽々と持ち上げ、ブンブンと振り回し、そのまま投げ飛ばした。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ !」


豪快に投げ飛ばされたマルクは地面に叩きつけられた。

衝撃で石畳が砕け、宙を舞いながら飛び散った。


「兄貴ィ! くそぉ…… !」


兄貴と慕うマルクを投げ飛ばされ、グレンは怒りを燃やしながらスライを睨み付けた。

だが目の前のスライは体躯が大きく、威圧され、グレンは萎縮した。

震えが止まらない。


「くそ……俺はもう、子供じゃないのに…… !」


悔しさと恐怖でガチガチと歯を震わせた。

ゆっくりと近付くスライに対し、グレンは一歩も足が動かなかった。


バンッ


「うわっ !」


スライは手を突き出すとエネルギー弾をグレンの足元に向けて放った。

石畳が爆発し、風圧でグレンは吹っ飛ばされ、宙を舞った後地面に叩きつけられた。


「グレン !」


想像以上だ……三人がかりでもスライにはダメージすら与えられなかった。

地面に這いつくばるマルク達。

スライは辺りを見回すと今も魔力を溜め続けているコロナに目をつけた。


「さ、させねえぞ…… !」


マルクはよろめきながらも何とか立ち上がった。


「てめえの相手は俺達だろうが…… !」


マルクは歯を食い縛り、果敢にスライに挑みかかった。

まだ倒れるわけにはいかない。

コロナの魔力がまだ充分に溜まっていないからだ。


「諦めろ……お前では相手にならない」


リトやラゴンですら勝てなかった相手だ。

それに劣る自分が太刀打ちできるはずがない。

頭では理解していた。

だからと言って目の前の敵から逃げるわけにはいかない。


「でりゃあああああ !!」


マルクは叫びながらがむしゃらに腕に備えられたヒレを振り回し、スライに斬りかかった。

だがスライは反撃すらせず、スピードを上げてマルクの攻撃を悉くかわした。

マルクがどれだけ速く動こうともスライにとっては止まっているようにしか見えなかった。


「何度やっても同じ……ぜや !」


ドゴッ


スライは鬱陶しがりながら膝蹴りをお見舞いし、マルクの動きを止めた。

血を吐きながらマルクは腹を押さえ、その場にうずくまった。


「何を企んでるか知らんが……終わりだ……」


ガシッ


スライの大きな手がマルクの頭を鷲掴みにし、軽々と持ち上げる。

凄まじい握力でマルクの頭を締め上げる。


「がぁぁぁぁぁ !?」


孫悟空が頭にはめている緊箍児きんこじみたいに頭が締め付けられるような激痛に襲われ、マルクは白目を剥きながら絶叫した。


「はぁぁぁぁぁぁぁ !」


突然ミライが空から急降下し、スライに向かって飛び蹴りをお見舞いした。

不意打ちに流石のスライもたまらず仰け反り、マルクを手放してしまった。


「よっと」


すかさずミライは脚の爪でマルクをキャッチし、持ち上げながら上昇した。


「た、助かったぜ……ミライちゃん……」

「困った時はお互い様だよ~」


空を飛びながらミライはにっこりと笑った。

まだ頭に痛みが残るが、マルクはミライの笑顔を見て表情が和らいだ。


「なあミライちゃん、あの技をやるぜ」

「あの技~……あっ! うん、わかったよ~ !」


ミライはすぐにマルクの言いたいことを理解した。


「いつまで空に逃げるつもりだ…… !」


スライは空を仰ぎながら手をかざし、飛び回るミライ達に向けて電撃を放とうとした。


「やべっ、そろそろやるぜ !」

「うん !」


ザァァァァァァァ


不幸豪雨(アンハッピーレイニー) !」


ミライは雲を突き破りながら上昇し、雲の上にある高い青空まで飛ぶと、空中で翼を羽ばたかせながら停止した。

マルクは全身に力を込め、口から大量の水を放ち、シャワーのように降り注がせた。


「何だ……これは…… !?」


スライは空から降り注いだ雨を身体中に浴びた。

すると雨に濡れたスライの体がドロドロに溶け出した。

マルクが放ったのは体内で生成された酸性の水だ。

魔獣の骨すら溶かす程の効力を持ち、スライの体を蝕んでいった。


「ふん……無駄なことを……」


だが恐るべきはスライの回復力の速さ。

溶かされた箇所が一瞬のうちに再生していった。

どれだけ酸性雨を浴びようと、スライは原型を保ち続けた。


「完全に溶かしきるのは無理みてえだな……だが……グレン !」


マルクが叫ぶと、グレンはスライと向かい合わせに立っていた。


「はぁぁぁぁ !」


グレンは剣を握った片腕を上に掲げた。

バチバチとスパークを全身に纏う。

その瞬間、雲行きが怪しくなり、巨大な積乱雲が王都全体を包み込んだ。


ピカッ……チュドォォォォン


突然空が光り、獣の咆哮のように雷鳴が轟いた。

次の瞬間、空を裂くように凄まじい勢いの落雷がスライを直撃した。


鬼落雷(オーガサンダーボルト) !」


天から放たれた放電がスライを焼き尽くす。

酸性の豪雨と落雷の合わせ技により、スライにかなりのダメージを与えることに成功した。

だがその代償に、マルク達はかなりの魔力を消耗させた。

ミライは地上に降り立ってマルクを降ろすと飛び疲れたのか、その場で崩れ落ちた。

マルクもグレンも肩で呼吸をしながら膝をついた。


「はぁ……はぁ……流石のスライムも、これは効いたろ……」

「私もう動けないよ~……」


だがマルク達の抱いた淡い希望はあっさりと打ち砕かれた。

煙を発生させながら、スライは五体満足で立っていた。

溶けた体も一瞬で元に戻っていた。

透き通るような水色の綺麗な体には傷は愚か埃すらついていなかった。

こうなったらもう最悪だ。

酸性雨も落雷も吸収して自分の物にしてしまった。

まるで自分達でスライを育てているようだった。


「マジかよ……もう打つ手無しだぜ……」


どう足掻いてもスライには勝てないことは薄々分かっていた。

だがいざ現実を突き付けられると結構堪えた。

マルクは乾いた笑い声を出すしか無かった。


「ウオオオオオオオオオオオオ !」


天に向かって野獣のように雄叫びを上げるスライ。

もうこの怪物を止められる者はいないのか……。

皆が諦めかけた、その時……。


「皆……! 準備……出来たよ…… !」


輝かしい光が王都全体を照らした。

スライは振り向くと、そこには杖を構えたコロナの勇ましい姿があった。

全身を七色の光が覆っていた。

その姿が何を意味するか、マルク達は理解し、安堵の表情を浮かべた。


「コロナ…… ちゃん……」

「間に合ったようだな……」


マルク達がスライを相手に長時間奮闘したお陰で、コロナは究極魔法を放つ為のフルチャージを完了させることに成功した。


「皆、遅れてごめん……でも、これで決めるから !」


コロナはそう言うと勢い良く杖を前に突き出した。

スライはこれからこの小娘によって大技が放たれようとしていることを本能で察し、妨害しようとコロナに猛然と襲い掛かった。


「させねえよ !」

「「はぁぁぁぁぁぁ !」」


ビリリリリ

バサバサバサ

ピシュウウウウ


マルク達は水ブレス、電撃、羽根の弾丸を浴びせ、スライの足止めをした。

大したダメージにはならないが、スライを怯ませるには充分だった。

絶え間無く放たれる攻撃を前にスライはこれ以上進むことは出来なかった。


「ぬぅ…… !」

「今だ !」


マルクの叫びを聞いてコロナは頷くと、杖を振るい、大きな円を描いた。

杖の先端から虹色に輝く巨大な光が放たれ、スライを包み込んだ。


渦流最高光(ボルテックスプリーム) !!!」


チュドォォォォン


虹色の光に飲み込まれたスライを中心に大爆発が起こり、風圧で石畳が砕け、宙を舞いながら散乱した。

震動で民家が揺れ、窓ガラスが割れ、飛び散った。

周辺に甚大な被害を及ぼしながらも、遂にスライを消し去ることに成功した。


かに思えたが……。


To Be Continued

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