第二十二話・半魚人無双
私達は魔獣討伐の依頼を受け、半魚人の村へ向かった。
村の近くには川辺があるらしい。
「半魚人は気性が荒く、敵対する者には容赦がない戦闘民族だ。気を付けるんだぞ」
エルサは皆に忠告をした。何だか怖くなってきたな……。
「ふん、もし襲ってきたとしても、俺が返り討ちにしてやるさ」
「主に危害を加えるのなら、村ごと燃やしても構いませんよね ?」
男どもは揃いも揃って過激派だった。
「くれぐれも穏便に済ませてくださいね……」
そうこうしてるうちに私達は半魚人の村にやって来たのだが……そこでは何やら揉め事が起こっていた。
「ん ?一体何の騒ぎですか…… ?」
よく見ると堅固な山猫の人達と半魚人の男達が言い争っていた。半魚人は想像した通りに全身が鱗で覆われ、魚に似た頭をしていた。
「だから俺達は依頼で来てやったって言ってるじゃねえか !」
「そうそう !魔獣退治は俺達に任せておけって !」
「余所者の出る幕じゃねえ!帰れ帰れ !」
「魔獣退治は俺達村の者達だけで充分なんだよ !」
堅固な山猫はあまり歓迎されていないようで門前払いを喰らっていた。
「あいつら……半魚人相手に何をやってるんだ……」
エルサは相変わらずの三人に呆れていた。
「ほう、そんなに腕に自信があるなら、俺と戦ってみねえか ?」
そこへ、堅固な山猫の前に強そうな若い男が一人現れた。
他の半魚人達と違い人間に似た容姿をしており、半魚人らしく耳は魚のヒレのようで、手には水かきが備わっていた。
一目見ただけでただ者ではないことが分かった。
「俺は半魚人のマルクだ。お前ら俺に勝てたら魔獣退治に協力させてやるぜ」
「マルクの兄貴 !良いんすか ?」
「こういう連中は口で言ってもわからねえからな」
マルクと言う男は目付きが鋭く筋肉質な体つきで他の半魚人とは異質な雰囲気を醸し出していた。
「あ、そうそう、1対3でも構わないぜ ?」
マルクは余裕綽々だった。
「随分舐めたこと言ってくれるじゃねえか、後悔すんなよ ?」
「まあハンデとして剣は使わず素手でやってやらぁ」
「約束は守ってもらうからな?卑怯だと思うなよ ?」
三人は剣を捨て、拳を握り構える。
マルクは水かきの備わった指をクイクイして挑発する。
私達はその様子をじっと眺めていた。
「「「うおおおおおおおお !!!」」」
三人は一斉にマルクに殴りかかった。
「いくらなんでも止めなきゃ…… !」
私はやめさせようとしたがヴェルザードが静止した。
「ヴェル ?」
「黙って見てろ」
マルクはニヤリと笑うと三人の攻撃をゆらりとかわした。そして目にも止まらぬスピードで肘についてる鋭利なヒレを使い三人を一撃で切りつけた。
「ぐはぁぁ !!!」
「なっ……何が起こった…… !」
「何も見えなかったぁっ…… !」
三人は急所を一撃でやられ、マルクの目の前でバタバタと倒れた。
「魚人斬撃……安心しな、峰打ちだぜ」
「流石はマルクの兄貴っす !」
「人間なんて相手じゃないぜぇ !」
取り巻きが嬉しそうにはしゃいだ。
マルクは倒れてるリーダーの頭を踏みつけた
「俺一人に勝てない余所者に用はねえ。おい、こいつらをつまみ出せ」
「うっす !」
他の半魚人は気絶してる三人を運んでいった。
「中々やるじゃねえか……」
「ああ…私の剣撃以上のスピードかもな……」
「あの半魚人…ただ者ではありませんね」
ヴェルザードもエルサもリトも関心していた。
その様子にマルクも気付いた。
「何だお前ら、あいつらの仲間か ?」
マルクは眉を潜め、嫌そうな顔をした。
「あ、えーと、私達は……」
「あいつらはただの知り合いだ、それより、私達はこの村の村長に頼まれ、魔獣を」
「おっと、その先は言わなくても分かるぜ ?」
マルクはエルサの言葉を遮った。
「ヴィオ村長の頼みだろうと余所者を関わらせるわけにはいかねえんだ。どうしてもというなら、この俺を」
「倒せと言うんだろ ?」
ヴェルザードが一歩前に出た。
「ヴェル !?」
「ご主人様 !?」
「俺が勝ったらこの村に入れてもらう、それで良いな ?」
「何だお前、良い瞳をしてるじゃねえか……」
マルクはヴェルザードに近付いた。
「この魔力……あの三人よりかは楽しめそうだな」
「安心しろ、存分に楽しませてやる。勝つのは俺だがな」
「そういう自惚れ、嫌いじゃないぜ」
魔獣を倒しに来たのに何でこうなるの……。
タイマンを張る不良二人……。吸血鬼と半魚人……。二人の魔族が今まさに激突しようとしていた。
To Be Continued




