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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
スライムの来襲編
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第二百三十四話・スライvsミーデ



小さな村を襲い、村人を一人残らず吸収したスライ。

その無限の可能性が秘められたスライの力に狙いをつけ、新生魔王軍(ネオサタン)がやって来た。

統率官ミーデが直接スライに勝負を挑む。

部下達は後ろに下がり、戦いの様子を見守っていた。


「はぁぁぁぁぁぁぁ !」


ミーデは素早く飛びかかるとスライを殴り飛ばした。

スライは体調不良に陥っていたせいか反応が僅かに遅れ、モロに喰らってしまった。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ !」


スライは勢いよく無人の民家に激突し、壁を破壊した。


「ククク、今のはほんのご挨拶です」


ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべるミーデ。

崩れた民家の壁からスライが這い出てきた。

流石にたった一撃ではダメージのうちには入っていないようだ。


「この力……吸収してやる…… !」


スライは今も全身を駆け巡る激痛に耐えながらミーデに向かって飛び出した。

殴られて凹んだ頬が一瞬で元に戻った。

右手を前に突き出し、人差し指から一直線に熱線を放つ。


「その技……恐らくイフリートのものですね !」


スライムが何故イフリートの熱線が使えるのかは分からない。

だが一度喰らったことのある技など恐れるに足らなかった。

ミーデは涼しい顔で熱線をかわし、拳を握りしめるとスライに接近した。

行き場を失った熱線が民家を貫き、爆発させた。


ドガドカドガドガドカドガ


ミーデとスライは壮絶な殴り合いを繰り広げた。

お互い風を切るように相手に石のように硬い拳をぶつける。


「流石は最高悪魔(アークデーモン)だ……だがそれ以上に恐ろしいのはあのスライムだ」

「確かに、ミーデ様と互角に渡り合っている……やはりただ者ではないな」


トレイギアは一撃でミーデに倒されたからこそ、彼の実力を知っている。

スライはそんなミーデと互角に戦えるという恐るべき素質を秘めていた。


「はぁぁぁぁ !」


ドンッ バキッ


スライの放つ拳がミーデの腹を突き破るように命中する。

腹筋が凹み、ミーデは血を吐きながら激痛に顔を歪めた。


「ククク……中々の攻撃力……私の目に狂いはありませんでしたよ……」


ミーデはニヤリと笑うとスライの腕を強く掴んだ。


黒雷(ブラックサンダー) !!!」


ミーデは体内から黒い電撃を放ち、スライに感電させた。


「ぐわぁぁぁぁぁぁ !!」


全身に電撃を浴び、絶叫するスライ。


「ククク、ハッハッハッハ !」


やがてスライは煙を吐きながら膝を落とし、その場に崩れ落ちた。


「ふう、これでスライムは動けなくなりました……我々の勝利です、連れ帰るとしましょうか」


勝利を確信してミーデは横たわるスライに触れようと手を伸ばした。


「……! 待てミーデ !」


何かの異変に気付き、トレイギアは叫んだが遅かった。

次の瞬間、スライの体の一部が触手のように伸び、ミーデの腕に絡み付いた。


「な、何ですか !?」


完全に油断していたミーデは意表を突かれ、スライに動きを封じられた。


「離しなさい !このスライムがぁ !」


ミーデは暴れてスライの拘束から逃れようとしたが、粘りついて引き剥がせなかった。


バチバチバチバチ


「ぎゃああああああ !!!」


スライは全身から黒い電撃を放ち、拘束してるミーデを感巻き込み、感電させた。

口から泡を吹き、白眼を向きながら絶叫するミーデ。


「あいつ……ミーデの技をコピーしたのか…… !」

「さっきの熱線も誰かの技を吸収したようだな…… !」


スライの恐るべき能力を前にトレイギア達は震え上がった。

スライは黒焦げになり、ぐったりしているミーデをボロ雑巾のように放り捨てた。

そして次の狙いを部下達に向けた。


「「「ひっ……ぎゃああああああ !!!」」」


魔王軍の手下達はトレイギアとゴブラを置いて一目散に逃げ出した。

トレイギアとゴブラだけはスライから目を離さずにじっと身構えた。

だが一人逃げ遅れ、盛大に転んだ者がいた。

トレイギアの部下にして元幹部のギラだ。


「ひっ……トレイギアさん……! 助けてくれぇ !」


這いつくばりながら必死に手を伸ばすギラ。

スライは彼に狙いをつけ、触手を伸ばしてギラの足にしがみついた。


「ぎゃああああああああ !!!」


悲鳴を上げながらスライの元へ引き摺られるギラ。


「ギラ !」


想像を絶する光景だった。

獲物を完全に取り押さえたスライは形状を変え、アメーバ状になり、ギラに覆い被さると、ゆっくりと補食した。


「助けて……トレイギア……様ァ…… !」


スライの体内で溺れながらギラは必死に助けを呼んだ。

だが最早絶体絶命だった。

やがて声は聞こえなくなり、骨も皮も全て溶かされた。


「あ……あ……」


幹部の一人を失い、トレイギアは言葉を失った。

スライはギラを補食し終えるとアメーバ状からゆっくりと人の姿に戻った。

だがスライの体に変化が起きていた。

子供くらいの身長だったのが背が急激に伸び、180センチ程になり、髪も腰辺りまで伸び、童顔だった顔は面長で精悍な顔立ちのものへと変化した。


「ば、馬鹿な…… !」


ギラは種族を特定出来ぬ程に複数の魔族達の血が混じり合っていた。

スライはそのギラを取り込んだ事で一度に複数の魔族の持つ魔力を手に入れたのだ。

急激な体に変化はその為だった。

当然変わったのは外見だけではない。

スライの魔力は先程とは比べる物にならないくらい急上昇を遂げた。

トレイギアとゴブラはスライの放つ威圧感に圧倒され、震えながら後退りした。


「どうする……ゴブラ……最早俺達ではどうすることも出来んぞ…… !」

「ここは退却するしか…… !」


勝機は完全に失われた。

これ以上戦いを継続すれば、犠牲が増える一方だ。

既にこちらはギラという貴重な人材を失った。

この短時間でここまで進化する化け物は他に居ない。


「な、何をおっしゃっているのですか……お二人共…… !」


ボロ雑巾のように投げ捨てられたミーデがボロボロになりながらも立ち上がった。

プライドをズタズタにされ、怒りで冷静さを失っていた。


「この私によくも好き勝手してくれましたね……もう部下にするのはやめです、今すぐ死ねぇぇぇぇ !!!」


ミーデは鬼のような形相でスライに向かっていった。


「やめろミーデ !」


トレイギアの制止する声も耳に入らず、ミーデはがむしゃらに拳を振り上げ、スライ目掛けて繰り出した。


ガシッ


だがスライはミーデの拳をあっさりと受け止めた。

完全に動きを封じられたミーデ。

スライはがら空きになったミーデの腹に重い蹴りを一発入れた。


「ぐぼぉあっ !!?」


腹に致命的なダメージを受け、たまらずおう吐するミーデ。

スライは間髪入れずにミーデの頭を鷲掴みにして持ち上げた。

手のひらで脳が潰れるほど強く握り締め、ミーデは激痛に襲われ、白眼を向きながら絶叫した。


「んぎゃああああ !!!」


ズバッ


ミーデの頭部を締め付ける腕が綺麗に切り落とされ、地面に落ちた。

解放され、ミーデは気を失いながら落下し、横たわった。

すかさずゴブラがミーデを担いだ。


「お前は……」


スライの腕を切り落としたのはトレイギアだった。

右腕を剣状に変化させ、身構えた。


「ゴブラ、お前はミーデを連れてアジトへ帰れ……時間稼ぎは俺がやる」


トレイギアは汗を垂らし、緊張しながらスライを睨み付けた。


To Be Continued

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