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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
スライムの来襲編
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第二百三十三話・スライと魔王軍



町から遠く離れた場所にある、人口が数十人程しかいない小さな村。

決して豊かとは言えないが、皆穏やかで平穏に暮らしていた。


だがその村に、スライが何の前触れもなく現れた。


「な、何だ……お前は…… !?」


村人達は突然現れた謎の生命体に恐れ、ブルブルと身震いしながら武器を取った。


「お前達は……俺の……餌になる……」


スライはそう言うとアメーバ状に姿を変え、村人達に襲い掛かった。


「「「ぎゃああああああ !!!」」」


村人達は恐怖と絶望に襲われ、断末魔を上げながら一人残らずスライの餌になった。

次々と吸収され、衣服所か骨すら溶かされ、そこに存在していたという痕跡すら失われた。

建物は破壊されず、傷一つ無く、綺麗なままだった。

だがそこに人間は一人もいなかった。

虚しく風の吹く音だけが聞こえる。

人間だけが綺麗に村から消滅した。たった一人のスライムの手によって……。


「御馳走様……」


スライは舌なめずりをしながら呟いた。

彼は生まれた時から自分を持っていなかった。

創造主であるグラッケンに言われるがままに生き物を、人間を殺し続けた。

何の為かは分からない、ただグラッケンの命令に従うことが彼のアイデンティティーだった。

誰が死のうとスライにとってはどうでも良いことだった。


「う……」


スライは目眩がしたのか、突然頭を押さえながら膝をついた。

一度に沢山の人間を吸収したせいで消化が追い付かず、体調に異変が起こった。

本来ならポッドに入って体を休めるのだが、今のスライは休む間もなく魔力を吸収し続けていた。


「はぁ……はぁ……」


スライは苦しそうに息を荒げた。


「おや? 随分と苦しそうですねぇ」


そこへ、謎の男の声が聞こえた。

スライはその声がした方向を振り向いた。


「誰だ……」


いつの間にか、スライは数百人もの魔族達に包囲されていた。

先頭にはミーデが立っていた。


「お初にお目にかかかります、我々は新生魔王軍(ネオサタン)、私は統率官のミーデと申します」


ミーデは懇切丁寧に挨拶をした。

トレイギア、ゴブラを始め、後ろに控えている部下達が身構えていた。

スライを新生魔王軍(ネオサタン)に加えるべく、大軍を率いて来たようだ。


「貴方の事を噂で耳にしました……村をたった一人で壊滅させるとは中々素晴らしい才能をお持ちのようですねぇ、スライムさん……単刀直入に言いますが、我々の仲間になりませんか ?」


ミーデは長々と語るとスライを勧誘した。


「断る……俺の主は……グラッケンだけだ……」


迷う事なくスライはミーデの勧誘を一蹴した。

自分を道具のように扱っているグラッケンだが、スライにとってはかけがえのないたった一人の肉親だった。

歪んでるとは言え、スライはグラッケンに対して絆を感じていた。


「そうですか……ならば力ずくで貴方を屈服させて差し上げますよ、これ程の逸材、逃す手はありませんからね !」


ミーデは指を鳴らすと十数人の部下達が一斉にスライに襲い掛かった。


「「「でやあああああ !!!」」」


部下達はそれぞれ武器を振りかざし、スライを滅多斬りにした。


「おい、仲間にするんじゃないのか ?」

「いえいえ、あのスライムはそう簡単には死にませんよ」


スライは斬られた箇所を即時に再生させると部下達から武器を奪い、体内に取り込んで消化した。

部下達は青ざめた表情で後退りした。


ピシュンッ ピシュッ


スライは人差し指から熱線を高速で連続発射をした。

放たれた熱線は弾丸のように速く部下達の胸を正確に貫いた。

部下達は胸に開いた小さい穴からドクドクと血を垂れ流し、棒倒しのように倒れていった。

即死だ。


「あぁ…… !」

「あの熱線……何処かで見たことがありますねぇ……」


他の部下達が呆気に取られている中、ミーデだけは冷静に分析していた。

スライは腕を触手のように伸ばすと部下達の亡骸を次々に取り込み、吸収した。

その様子を目の当たりにし、ミーデの部下達はショックを受けた。

青ざめ、おう吐するものもいた。


「ああやって冒険者達を取り込んで強くなっていったのか……」

「良いですねぇ、益々気に入りました…… !」


ミーデは歓喜の声を上げながらスライに近付いた。

彼にとって先程犠牲になった部下達はスライの力量を測る為の捨て駒に過ぎなかった。


「皆さんは下がっていて下さい、このスライムは私が相手をします」


最高悪魔(アークデーモン)の力を得た自分が負けるはずが無いとミーデはたかをくくっていた。

スライはミーデを睨み付け、腰を低くすると戦闘体勢に入った。


「圧倒的な力を見せつけ、屈服させる……かつて俺を、俺達「混沌(カオス)反逆者(トレイター)」を従えさせた時と同じだな」


トレイギアは苦い顔で見つめた。

ミーデは首をゴキゴキと鳴らし、スライを視界に捉えながら戦闘体勢に入った。

新生魔王軍(ネオサタン)は最強の人工スライム、スライを部下に引き込む事が出来るのか……。


To Be Continued

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