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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
スライムの来襲編
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第二百二十八話・餌になりたくない!



草原で召喚の練習をしていた私達の前に突然二人の怪しい男が現れた。

一人は白衣を着た長身の中年の男、もう一人は水色の肌をした全裸の少年だった。


「誰…… !?」


私は剣を構え、警戒心を強めた。

少年の放つ異様な殺気が空間を支配する。

明らかにただ者ではなかった。


「お前、無限(メビウム)結束(ユナイト)だろ ?」


白衣の男は私に問い掛けた。

何で初対面なのに私のことを知ってるの ?


「えっと……私は……」

「主、明かしてはなりません !こいつらはどう見ても怪しいです !」


質問に答えようとする私を遮り、リトは警告した。


「ハッハッハ、誤魔化しても無駄だ、お前が無限(メビウム)結束(ユナイト)のメンバーであることは調べがついている」


白衣の男は手に持っていた資料をめくりながら高笑いした。


「私は天才科学者、グラッケン……お前には我が最高傑作が更に力を得るための餌になってもらう」


グラッケンは目をやると少年は頷き、ゆっくりと私に近付いてきた。

後退りしながら私はスライから目を離さず、身構えた。


「彼の名前はスライ……まあこれから死に行くお前には要らぬ情報だったな……やれ !スライ !」


グラッケンの声に呼応し、スライと呼ばれる少年は私に猛然と襲い掛かって来た。


「主 !」


私は咄嗟に剣を取り、スライの繰り出す拳を受け止めた。

キィンと重い金属音が鳴り響く。


「くっ…… !」

「ほう……スライの動きを読んだか……」


感心しながら腕を組むグラッケン。


「主…… !大丈夫ですか…… !」

「はい…… !」


この少年の放つ拳は速く重い。

剣越しに振動が伝わってくる。

だけど勝てない程の脅威では無かった。

私は押されながらもスライの動きを読みながら剣で対処していった。

繰り出される一撃一撃を剣でいなし、ダメージを最小限に抑えた。


「やはり英雄と呼ばれるだけはあるな……押されてるとは言え、我がスライにここまで食らいつけるとは……並の冒険者なら一撃で食われていたぞ」


感心しながら高みの見物を決めるグラッケン。

何気に恐ろしい事を口にした。

今までこの少年は何人もの冒険者を殺しているというのか。

私はゾクッと身震いした。


「どうした……手が止まってるぞ……」


スライは感情の籠っていない声で呟くと私に容赦なく攻撃を仕掛けた。

小柄な体躯を生かして俊敏に動き、パンチとキックを繰り出した。

先程よりも動きが速く、私は防戦一方だった。


「お前はそこそこ強い……弱らせてから食ってやる……」


攻撃を続けながらスライは小声で呟いた。

この子、私を食べる気だ。


「主……この魔物はどうやらスライムのようですね……しかし本来のスライムに比べると強さが段違いのようです」


スライム……私が剣術を習い始めたばかりの頃、森で練習相手にしたことがある魔物た。

しかし人型でこんなに強いスライムは見たことも無かった。


「本気でやらねば殺されますよ !主 !」

「わ、分かってますよ !」


私は剣を振るいながら全身に風を纏い始めた。


「何だ……それは……」


スライは異変に気付くと直ぐに私から距離を取った。

私は風を帯びた剣を強く握り、構え直すと息を吸い込み、スライに向かって思い切り振り下ろした。


ブゥンッ


空刃(エアロエッジ) !」


振り下ろされた風の斬撃がスライの体を一撃で真っ二つにした。

豆腐のように綺麗に切り落とされ、崩れ落ちるスライ。


「はぁ……はぁ……やった……の…… ?」


息を切らしながら私は膝に手を置いた。

休む暇もなく長時間スライの攻撃を捌いていたのもあり、体力をかなり消耗してしまった。


「素晴らしい……何とい腕前……何という魔力……」


拍手をし、褒め称えるグラッケン。

自分の相方が倒れたというのに何と呑気なんだろう……。


「一見ただの冴えない小娘にしか見えんが実力は確かのようだな、スライよ、この女を喰らえ !」


グラッケンの声を聞くと、真っ二つにされて倒れていたスライは何と起き上がり、斬られた体をくっつけて元通りに再生した。


「そんな…… !」


私に斬られたダメージも綺麗に消えていた。

再生を終え、ゆっくりと首を回すスライ。

私は震えながら剣を握り、構えた。


「今の風の魔力、美味しかった……」


そう言うとスライは加速し、瞬間移動をしたかのように一瞬で私との間合いを詰めた。


「ひっ…… !?」


咄嗟に剣を振ろうとするも遅かった。

スライは先程とは比べものにならないスピードで私に殴りかかった。

私が放った風属性の技を体全体で吸収し、逆に自分のエネルギーに変え、パワーアップをしたようだ。


ドガッ バギッ ズガッ


「うっ…… !くっ…… !きゃっ…… !」


スライは息もつかせぬ攻撃を私に叩き込んだ。

剣で防ぎきれず、私はスライの攻撃を何度も受けてしまった。

風の力を吸収して動きが更に速くなった為、私は翻弄され、ついてこれなかった。

顔、胸、腹に重いパンチを何発も喰らい、

体は悲鳴を上げた。

殴られる度に血を吐き、足がガクガクと震えた。


「うっ……」


ドサッ


何度も重い一撃を叩き込まれ、私は力尽き、膝をついてしまった。

立ち上がろうにも足に力が入らない。


「そろそろ動けなくなったな……」


スライは力無く項垂れる私の髪を無理矢理引っ張った。


「お前を食ってやる……」


そう言うとスライは人型から水色の粘ついた液体に変化し、動けない私を津波のように飲み込もうとした。


「あっ……」


もう駄目だ。

私はスライムに殺される……。

そう思った次の瞬間……。


「主はよく頑張りました、ここからは選手交替です !」


寸での所でリトが私を抱き抱え、スライの捕食から逃れた。


「り……リト……」

「主、あのスライの強さは異常です、ここは私に任せて下さい」


スライから離れた距離まで移動し、リトはニコッと微笑むとそっと私を置いた。


「あれは……伝説の炎の魔人、イフリートか…… !?まさか小娘は召喚士(サモナー)だったと言うのか……」


リトの姿を目の当たりにし、驚愕するグラッケン。

だが直ぐに邪悪な笑みを浮かべた。


「スライ、イフリートを捕食出来ればお前は国を揺るがす程の力を手に入れる事が出来るぞ !」

「分かった……」


スライはリトの放つ圧倒的なオーラを肌で感じ、警戒心を強め、鋭く睨み付けた。

本能で理解したようだ。次の標的(ターゲット)は私より強いと……。


「主を痛みつけて、ただで済むと思わないで下さいね ?スライムさん」


リトはにこやかに笑顔を浮かべたがその実計り知れない怒りに満ちていた。

スライは拳を握り、身構えた。


リトvsスライ……。

早くも第二ラウンドが始まろうとしていた。


To Be Continued

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