第二百二十三話・古の怪物達
リトはコダイの頭に乗ったまま、人差し指を不死鳥に向け熱線を放った。
不死鳥は熱線をものともせずにコダイに突撃した。
グオオオオオオオオオオ
コダイと不死鳥が取っ組み合い、巨大生物同士の接近戦が始まった。
コダイは大剣のように巨大な爪で不死鳥の皮膚を切り裂き、不死鳥は鋭い嘴をコダイの体に突き刺し、一進一退の攻防戦を繰り広げた。
「魔獣ごときが、私の神聖な体を汚すなど、思い上がるな !」
不死鳥は嘴だけではなく、強靭な脚の爪でコダイを引っ掻き、苦しめる。
真っ赤な引っ掻き傷が体に刻まれ、苦しそうに咆哮を上げるコダイ。
「ハハハハハハハ !」
魔獣と幻獣ではレベルが違う。
不死鳥が優勢だ。
だがコダイも負けては居なかった。
大ぶりに巨大な尻尾を振り、不死鳥に叩きつけた。
「ぐっ…… !」
樹木で殴られたような痛みが不死鳥を襲った。
一端距離を取ろうと飛び去ろうとした。
コダイは口から高出力の熱線を吐き、不死鳥に浴びせた。
「くおおおおおおお !」
不死鳥は熱線の勢いによって押し出され、後方まで吹っ飛ばされた。
「はぁ……はぁ……」
コダイとリトが今こうして戦ってる間にも私の魔力は急激に消耗していた。
目眩に襲われ、私は立っていられず膝をついた。
高熱に冒されたかのように顔が紅潮した。呼吸をするのも苦しくなっていた。
「ワカバお姉ちゃん……大丈夫…… ?」
コロナは心配そうに私の背中をさすってくれた。
「大丈夫だよ……私は……まだやれる……」
私は息を荒げ、ランプの取っ手を握り締めながらリト達の戦いを見守った。
「次は私の番ですね」
リトは高くジャンプをすると加速して不死鳥に向かって一直線に飛んでいった。
青白い閃光のように風を斬り、八の字を描くように不死鳥の巨体の周りを縦横無尽に飛び回り、全身を槍のようにして身体中を貫いた。
「ぐほおおあっ !」
再生が追い付かない程の攻撃が叩き込まれ、不死鳥の身体中に穴が開き、大量の血を撒き散らしながら悲鳴を上げた。
「知らない……知らないぞ……何なんだ……その姿……そのスピードは…… !」
不死鳥は見たこともないリトの新たな力を前に狼狽え始めた。
「数千年も経てば私だって変わりますよ……この蒼炎形態は炎のコントロールを極め、スピードが高められた形態なんですよ」
リトは穏やかな表情で語った。
「だが……どれだけ貴様がどれだけ強くなろうとも……不死の私を倒すことは出来ないぞ !」
不死鳥は翼を広げ、全身に赤いオーラを纏うと勢いつけて突進し、鋭い嘴でリトを突き刺そうとした。
だがコダイが割って入り、豪腕を生かし、不死鳥の翼を掴んで動きを止め、体に密着させ、強く締め付けた。
「離せ !離せ !」
コダイの怪力が必死に暴れる不死鳥を完全に押さえ込む。
手数やスピードは不死鳥が上だが力はコダイに軍配が上がった。
「ナイスですコダイさん、そのまま抑えてて下さい」
リトは腕を伸ばすと指に炎を纏い、巨大な円を描いた。
すると不死鳥の足元全体に巨大な魔方陣が一瞬で描かれた。
「何だ……これは…… !?」
「コダイさん、離れてください……蒼炎魔陣 !」
コダイは手を離し、不死鳥から離れ、後退りした。
魔方陣から巨大な青い炎が燃え上がり、不死鳥は炎の牢獄に囚われた。
「まさか…… !また私を封印する気か !」
彼女の予想は当たった。
不死鳥を閉じ込める青い炎の牢獄は徐々に縮小していった。
中で不死鳥は必死に暴れ、牢獄を突き破ろうとするが無駄だった。
「主 !ランプを掲げてください !」
「はぁ……はぁ……わ、わかりました…… !」
リトの指示を受け、私は息を切らしながらも震える腕を伸ばし、ランプを掲げた。
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉ !」
不死鳥を閉じ込めた巨大な炎の牢獄は水晶程の大きさまで小さくなるとあっという間にランプの注ぎ口に吸い込まれていった。
不死鳥の断末魔だけが響き渡った。
「はぁ……はぁ……」
ドサッ
不死鳥をランプの中に封印出来たことで気が緩んだのか、私は倒れてしまった。
「お姉ちゃん !」
「ワカバ !」
倒れた私の元にヴェルザード達も駆け寄った。
魔力が尽き、コダイは光の粒子となって消滅し、ランプの中へ戻っていった。
「主……ありがとうございます……お陰で不死鳥を封印に成功しました……念の為様子を見に行ってきます」
そう言うとリトは粒子となって消滅し、コダイに続いてランプの中へ戻っていった。
長きに渡る魔術師の集団、不死鳥の涙、そして不死鳥との戦いも漸く終止符が打たれた。
To Be Continued




