第二百二十一話・不死鳥の猛威
伝説の幻獣「不死鳥」に三人の亜人が果敢に挑む。
不死鳥は上空から火球を放ち、三人を翻弄する。
ヴェルザード達は空から雨のように降り注ぐ火球を必死にかわし続けながら反撃のチャンスを狙っていた。
「魚人水砲 !」
火球の雨が止んだのを見計らい、先制攻撃を仕掛けたのはマルクだ。
腹が膨れ上がる程深く息を吸い込み、高出力の水ブレスを放ち、不死鳥に浴びせた。
炎属性の相手には水属性の技が効果的だ。
だが、不死鳥にはその常識が通用しなかった。
「無駄だ……私の体は不死身……半魚人程度の水で私の体にダメージを与えることは出来ん !」
「ちっ……焼け石に水だな…… !」
どれだけ不死鳥の体に水をかけても蒸発するだけで何の効果も無かった。
「やはり直接攻撃するしかあるまい」
「でも相手は空飛んでるんだぜ ?どうやって近付くんだよ」
「決まっているだろう、飛んで行くんだ」
エルサは二人の耳元で作戦を提示した。
「成る程……分かったぜ」
ヴェルザードとマルクはエルサの考えた作戦に乗ることにした。
「小賢しい……下等な亜人共の浅知恵で何が出来る……」
「まあ見てろよ鳥野郎、行くぜ !」
エルサ、マルク、ヴェルザードは一斉に大地を蹴り上げ、不死鳥に向かって走り出した。
「やはり大したことは無さそうだな……」
不死鳥は嘲笑いながら嘴から火を放ち、向かってくる三人を攻撃した。
ヴェルザードは血の短剣、エルサは剣、マルクは両腕のヒレをそれぞれ振るい、降り注ぐ火球を弾き返した。
「はぁっ !」
マルクは走りながら両腕を身体の前で組み、ヴェルザードが高くジャンプし、マルクの腕の真ん中に足を乗せた。
マルクは肩に力を入れ、腕の真ん中に飛び乗ったヴェルザードをバレーのトスのように力強く投げ飛ばした。
「うおおおおお !」
勢いを利用し、風に乗りながら不死鳥に向かって突撃するヴェルザード。
「意外と面白い試みだな……だが無駄な努力だ !」
ボボボボボボボボボボ
キキキィン キィン
不死鳥は無数の火球を放ち、ヴェルザードを撃ち落とそうとする。
ヴェルザードは短剣を振るい、火球を弾き返し身を守った。
「この流れを途絶えさせるわけにはいかねえ……そうだろ、エルサ !」
「ああ !」
弾丸のように一直線に向かっているヴェルザードの後方で声が聞こえた。
エルサだ。
ヴェルザードを上回るスピードで一直線に飛んでいた。
「ヴェルザード !」
エルサの声を聞き、ヴェルザードは空中で体を丸めた。
エルサはヴェルザードを土台にして踏みつけてバネにし、勢いをつけて高く飛び上がった。
ヴェルザードはエルサに託すとそのまま落ちていった。
ヒュオオオオオオオオオオ
突風よりも速いスピードでエルサは不死鳥に向かって突撃した。
「そう来たか……ならば撃ち落としてやろう !」
不死鳥は炎を吐き散らし、エルサを撃ち落とそうとするも生半可な攻撃では今のエルサのスピードを殺すことは出来なかった。
「回転突撃 !」
エルサは全身に風を纏い、ドリルのように回転して不死鳥の翼を貫いた。
「ぐはぁっ…… !」
不死鳥の翼に巨大な穴が開き、真っ赤な血が噴出した。
「やった !」
歓声を上げるヴェルザードとマルク。
エルサは華麗に地面に着地をしたが魔力を消耗し過ぎたのか、よろめき、膝をついた。
「はぁ……はぁ……致命傷まではいかないまでも……ダメージを与えられたはず……」
エルサは息を切らしながら空を見上げた。
だがその瞬間、彼女は絶句した。
不死鳥の翼に開いたはずの穴が綺麗に塞がっており、傷痕すらも残っていなかった。
「そんな…… !」
「体を張った所悪いが、私の身体は不死身なのだよ……いくらこの身が引き裂かれようが、無限に再生出来るのだ……」
勝ち誇った様子で言い放つ不死鳥。
精も根も尽き果て、ヴェルザード達はなす術が無く、万策が尽きた。
いくら攻撃を仕掛けても、相手が不死身では全てが徒労に終わってしまう。
三人は空に君臨する不死鳥を前に立ち尽くすしか無かった。
「どうしよう……このままじゃ負けちゃう……」
「主、お願いがございます……主の魔力を私に分けてください。そうすれば最低でも一分間は実体化出来ます」
不安に駆られる私にランプの中のリトが提案をしてきた。
リトは不死鳥と深い因縁がある。
不死鳥と渡り合えるのは現状リトしかいない。
「わ、分かりました……」
「俺も分けるぜ !」「僕の魔力も使ってくれ、大して残ってはいないが……」
グレン、クロス、コロナも協力してくれた。
私達四人はランプに手をかざし、体に残された魔力を少しずつリトに送り込んだ。
ランプが金色の光を放った。
「ありがとうございます、お陰であの鳥頭を直接ぶん殴りに行けますよ !」
そう言うとリトはランプの中から勢い良く加速しながら飛び出し、ヴェルザード達の前に現れた。
「リト !インターバルはもう良いのか ?」
「まあ全快とまでは行きませんが二分間は戦えます……貴方方は休んで見物でもしていてください」
「相変わらず自信家だな」
リトは得意気に語った。
ヴェルザード達は真打ちの登場に安堵の表情を浮かべた。
「その姿……片時も忘れたことは無いぞ……イフリートよ……この私を数千年間封印した男……貴様だけは絶対に許さん……肉体を残さず塵にしてくれるわ !」
不死鳥の態度が急変した。
先程までの優雅で余裕に満ちた態度からリトを見た途端憎悪を剥き出しにした。
「貴女は殺しても死にませんからね……この私の手で、再び眠りについてもらいますよ ?今度は一万年くらいですかね ?」
リトはニヤリと笑いながら空を見上げ、不死鳥を挑発した。
To Be Continued




