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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
不死鳥の涙編
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第二百十七話・母と娘



エクレアとコロナ。

数少ない純粋な魔女である二人が対峙する。

一人は騎士団の一員として日夜人々の為に戦っている魔女の少女。

もう一人は五人の魔術師を束ね、伝説の幻獣を復活させようと企む悪の魔女。

光の道を歩む娘と闇に堕ちた母……。

運命の糸がここに来て絡み合うことになった。

コロナ一人に任せるのは気が引けるが、このメンバーの中で体力や魔力に余裕があるのはコロナだけだった。

私達は固唾を飲んで見守るしか無い。

無限(メビウム)結束(ユナイト)不死鳥(フェニックス)(ティアー)、勝敗の行方は幼い少女に託された。


「まさか……魔術師達の黒幕がコロナの母親だったなんてな……」

「魔女狩りで死んだって聞いてたけどな……」


一同はコロナとエクレアが親子であることに未だに信じられずにいた。


「あの女はエクレアであってエクレアでは無い……」


クロスはエルサに肩を貸しながらエクレアを見つめた。


「エクレアは自分の身を犠牲にしてまで人間達からコロナを逃がし、僕に託した……そんな彼女が今更コロナを利用しようだなんて考えられない」


クロスの言うことは正しかった。

あまりにも不自然過ぎる。

自分が守ろうとした子供を身勝手な欲望の為に利用するなんて有り得ない。


「あのエクレアって言う魔女……何処かで会ったような気がしますね……」


ランプの中でリトは呟いた。


「知り合い……なんですか ?」

「いえ、会ったことはありません……しかし彼女の雰囲気が誰かに似ている気がするんです……」


リトは不思議そうにランプの中でモヤモヤしながら考えていた。

エクレアが以前と性格が別物ということと何か関係があるのだろうか……。




「どれ、四大元素魔法の力がどれ程のものか、見せてもらうぞ」


エクレアは指輪を嵌めた方の手で煽り、コロナを挑発した。


「はっ !」


コロナは杖を上に掲げた。

杖の先端がオレンジ色の光を放つ。


大地(アース)(リライト) !」


オレンジ色に輝く光の巨大な波が地面を這うように突き進み、エクレアを飲み込もうとする。


「四大元素魔法の一つ……土魔法か……昔は争いを怖がり攻撃魔法を覚えなかったが、成長したな」


エクレアは迫り来る巨大な波を前にして余裕の態度を崩さなかった。


「だが、本物を教えてやらねばな……巨大岩球(ビッグロックボール) !」


エクレアは指輪をオレンジ色に発光させると魔獣程の大きさの巨大な岩石を出現させ、コロナの放つオレンジ色の光の波にぶつけた。

巨大な岩の塊は徐々に光の波を押し返し、コロナを吹っ飛ばした。


「きゃあ !」


衝撃で吹っ飛ばされ、勢い良く地面を転がるコロナ。顔中泥だらけになり、服も汚れにまみれた。


「コロナちゃん !」

「待って…… !」


コロナは杖を支えにしながらゆっくりと立ち上がった。

エクレアとコロナでは実力に差がありすぎる。

やはり幼い少女一人で立ち向かうなんて無謀だったんだ……。


「ほう、まだ立ち上がれるか……流石私の娘だ」

「貴女は……お母さんじゃない !」


コロナはエクレアの言葉を否定し、己を奮い起たせると再び杖を掲げ、今度は青色に発光させた。


水砲激流(アクアストリーム) !」


青く光る杖から高出力の水のビームが放出された。


氷槍(アイスランサー) !」


エクレアは拳を握り、指輪を嵌めた腕で突き出し、正拳突きの構えをとった。

すると指輪から氷で創られた槍のように鋭利な塊が一直線に飛んでいき、水のビームの中を突っ切っていった。


「わっ !」


飛んで来る氷の槍が目の前まで迫り、コロナは間一髪の所で右にダイブして避け、辛うじてかわすことに成功した。

後一秒でも反応が遅れていたらコロナの顔面に槍が突き刺さっていただろう。

だがエクレアは例えコロナが死亡しても構わない様子だった。

不死鳥(フェニックス)復活の為の贄は死体でも問題ないらしい。

とても母親とは思えない思考回路だ。


「四大元素魔法の使い手 !悪いことは言わない !今すぐ降参しろ !」


コロナに向かってエイワスが声をかけた。


「エクレア様のような偉大な魔女に君なんかが敵うわけがない !このままだと本当に殺されるぞ !」


敵とは言え、幼い少女が殺されることに良心の呵責で胸が痛んだのか、エイワスはコロナに降参を勧めた。


「外野は黙っていろ !コロナは自分の意志で決めたのだ……魔女の凶行は魔女である自分が止めると……」


エクレアに一喝され、エイワスは黙るしかなかった。


「私は……まだ……やれる…… !」


コロナはもう一度立ち上がった。

土、水の魔法も通用しなかった。ならば次はこの技を使うしかない。


疾風上昇(ウインドーアップ) !」


全身に風を纏い、身体能力を向上させる魔法だ。

遠距離技が通用しないのなら接近戦で挑むしかない。

彼女は魔女だが、一応杖を使っての剣術を心得ている。

コロナは杖を構え、風に乗って加速しながらエクレアに向かっていった。


「はぁぁぁぁぁぁぁ !」


ガシッ


剣術で挑む為、杖を振り下ろしたコロナだがエクレアはあっさりと杖を掴み、押さえてしまった。


「そ……そんな…… !」

「適切な状況判断と戦術の切り替えの良さは中々良かったが、相手が悪かったようだ……」


エクレアは黒い竜巻を全身に纏った。

コロナは風圧に巻き込まれ、足元を掬われそうになり、今にも足が地面から離れそうになっていた。


「これが私の嵐の魔法……台風上昇(タイフーンアップ)だ……ふん !」

「うぐっ !」


エクレアは風を纏った拳を握り、コロナの腹をめり込ませながら勢い良く腕を突き上げた。


「きゃあああああ !」


コロナは風圧で天高く飛ばされ宙を舞い、そのまま地面へ落下した。


「コロナ !」


クロスは血相を変えてコロナの元へ駆けつけようとした。


「部外者は引っ込んでいろと言ったはずだが ?」


エクレアは氷の衝撃波を放ち、クロスの行く手を阻んだ。


「くっ…… !」


全身が凍りつくような冷たい瞳で睨まれ、

クロスは悔しさを堪えるしか無かった。

空中から地面へ叩きつけられ、コロナはボロボロになりながらもゆっくりと立ち上がった。

身体中が痛くてたまらない。今にも泣き叫びたいくらいだ。

勝ち目はほぼ0……。

風の魔法でもエクレアの方が上だ。

どれだけ魔法を放ってもエクレアがそれらを上回る力で跳ね返してしまう。

だがコロナにも切り札が無いわけではない。

かつて憤怒(サタン)災厄(カラミティ)の一人、雪女のアイリを打ち破った強力な魔法があった。


「はぁぁぁぁぁぁぁ !」


コロナは杖を掲げると真っ赤に燃え上がる球体が空に浮かび上がった。


「ほう…… ?」


エクレアは興味ありげに空を見上げた。


光冠爆破(コロナダイナマイト) !」


コロナは力の限り叫ぶと巨大な炎の球体はエクレア目掛けて迫ってきた。


「これがお前が持つ最強の魔法か……素晴らしいぞ……」


エクレアは狂気に満ちた笑顔を浮かべていた。

だがいくら彼女でも特大の炎の塊を喰らって無事で済むはずがないと誰もが思っていた。


業火(インフェルノ)障壁(ウォール) !」


だがエクレアには秘策があった。

彼女は指輪を発光させると自らの体を灼熱の業火で包み込んだ。

炎によって創られた巨大な障壁がコロナの放った炎の塊を取り込み、逆に吸収し始めた。

その光景を目の当たりにし、皆は絶句した。

一番ショックが大きかったのはコロナだった。

最大の切り札があっさり攻略されてしまったからだ。

結局コロナの放った光冠爆破(コロナダイナマイト)はエクレアの造り出した障壁によって無効化されてしまった。


「悪くなかったぞ…… ?寧ろこの歳でそのような上級魔法を習得していたとは……稀に見る天才だ」


エクレアによる称賛の言葉は耳に入らなかった。

自分が負ければ仲間達も犠牲になる。

だけど自分の力はまるでエクレアには通用しない。

コロナは絶望し、杖を落として膝をつき、茫然自失となっていた。


「手札はもう切れたのか……残念だ……」


戦意を喪失したコロナに近付き、彼女に向けて手のひらを突き出すエクレア。

無情にも、処刑を始めようとしていた。

手のひらから紫色に発光する魔力の塊が現れる。


「コロナ !逃げろ !コロナ !」


クロスや仲間達の声すら、コロナには届いていなかった。

ゾーラ達も見ていられなくなり、目を背けた。


「さようなら……愛しい我が娘よ」


ピカァァァァァン


無慈悲にもエクレアの手のひらから禍々しい紫色の光線が放たれ、コロナに直撃した。


「コロナァァァァァァァァ !!!」


To Be Continued

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