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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
不死鳥の涙編
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第二百十五話・二人を信じろ



ウエンツは雷人形態に変身して魔力を使い果たし、心身共に決壊寸前だった。

だな寸での所で雷獣が自らの意志で彼と分離したことで一命を取り止めた。

後数秒遅かったら命を落としていただろう。


「ウエンツ !」


シャロン達は無我夢中でうつ伏せに倒れるウエンツに駆け寄った。

ゾーラは全身に力が入らず、呻き声を上げるウエンツを優しく抱き起こした。

雷獣はウエンツの側に寄り添い、静かに膝を折り曲げ、仔犬のように座り込んだ。


「すまない……僕は……負けてしまった……」


ウエンツは蚊の鳴くような声で仲間達に謝った。


「馬鹿野郎……お前はもう充分戦ったよ……」


シャロンは痛々しい仲間の姿に涙を流しながら答えた。


「やっと終わりましたね……」


リトは静かに呟くと緊張感が解けたのか脱力感に襲われ膝をついた。


「おいおい大丈夫かリト」


マルクとグレンもリトの元に駆け寄った。


「ハハハ……実体化を繰り返したお陰で持続時間が伸びたのは良かったんですが……調子に乗りすぎましたね」


リトは微かな笑みを浮かべた。


「おーい !無事かー !」


遅れてヴェルザードと私はシュヴァルに乗りながら魔術師のアジトに辿り着いた。

私とヴェルザードは大急ぎで皆の元へ駆けつけた。


「お前ら、無事だったか !」


マルク達は安堵し、歓声を上げた。

私は脇目も振らずに膝をついているリトの傍に寄った。


「リト……勝ったんですか…… ?」


恐る恐る問いかける私にリトは優しく微笑んだ。


「ええ……しかし魔力を使い果たしてしまいました……少し休ませて下さい」


そう言うとリトは消滅し、ランプの中へと戻っていった。

活動時間が過ぎたようだ。


「お疲れ様……」


私はランプをそっと抱き締めた。


「あ、そうだ……こいつお前らの仲間だろ ?やるよ」


突然ヴェルザードは思い出したかように脇に抱えたコルトを魔術師達に向かって放り投げた。


「コルト !」


コルトはシュヴァルに長い距離を連れ回され、目を回していた。

魔術師一同はコルトを乱雑に投げつけられ、困惑した様子だった。


「これで不死鳥(フェニックス)(ティアー)とやらも全員敗退だ……不死鳥(フェニックス)復活計画だが何だか知らねえが、もう諦めな」


五人の魔術師の中で戦える者は居なかった。

リーダー格のウエンツまでも敗れてしまったのだ。

悔しそうに歯を食い縛るゾーラ達。


「だが屋敷の中にはエクレア様が残っている !私達のような魔術師とは比べるのも恐れ多い偉大なる魔女なのだ !」


エイワスは力強く力説した。

そうだ、まだ彼等のような魔術師達を指揮する黒幕が残っていた。


「エクレア様には誰も勝てねえよ、勿論イフリートもな」


嫌みったらしい笑みを浮かべるシャロン。


「そのエクレアって人は屋敷にいるんですよね…… ?」

「ああ、俺達は儀式の邪魔が入らないよう外を見張ってたんだ……易々と突破されたがな……」


ゾーラは憎々しく屋敷の方を見ながら言った。


「屋敷にはクロスが向かってる……後エルサ姉ちゃんも……コロナを救うために……」


グレンは私に話してくれた。


「俺達は魔力を使い果たしてまともに戦えねえ……下手に加勢するより二人を信じて待つしかないな……」


ヴェルザードは屋敷を見つめながら言った。

確かにヴェルザードの言う通りだ。

皆激闘の末、体力を消耗している。これ以上戦うのは却って危険だ。

リトだって魔力を消耗して暫くは実体化(リアライズ)出来ない……。

エクレアと呼ばれる魔女の力がどれほどのものかは分からない。

だけど二人とも強い……。必ずコロナを救い出してくれるはず…… !




廃墟も同然の屋敷の大広間でクロスとエクレアは戦っていた。

だが結果は見えていた。

エクレアの持つ魔女としての圧倒的な力を前に使い魔に過ぎないクロスは太刀打ち出来ず、一方的に苦戦していた。


「おや、どうしたのだ ?大事な魔女の娘を助けるのでは無かったのか ?」


地べたに這いつくばるクロスを見下ろし、憎らしげに煽るエクレア。


「黙れ……貴様に用はない……僕が……コロナを……助ける !」

クロスは翼を広げ、加速して低空飛行しながらエクレアを通りすぎ、コロナのいる場所へ向かおうとした。


「そう簡単には行かせんよ」


エクレアは中指に嵌めた赤く輝く指輪を掲げた。


重力(グラビティ)負荷(ロード)


突然クロスは重りがのし掛かったかのように不自然に落下した。


「ぐわっ !」


クロスの身体に重力が加算され、身動きが取れなくなった。

まるで大木にのし掛かられたのような痛みがクロスを襲った。


「所詮は使い魔、貧弱な肉体で我が重力魔法に耐えられるかな ?」


苦しむクロスの顔を眺め悦に入るエクレア。


「僕は……コロナを…… !」


クロスは苦悶に満ちた表情で必死に手を伸ばした。


「見上げた根性だな……だがこれ以上コロナに近付けさせるわけにはいかん……貴様の役目は終わりだよ……死ぬがよい」


カツカツと足音を立て、エクレアは冷酷な表情でクロスに近付いた。


「そうはさせんぞ !」


いつの間にかエクレアの目の前にエルサが現れ、先手必勝で彼女を剣で斬りつけた。


「貴様は……ハイエルフ !」


エルサの不意打ちに驚き、集中力が途切れたエクレア。

クロスを支配していた重力が解かれ、彼は自由となった。


「はぁ……はぁ……エルサ……すまない……」

「この魔女は私が引き受けた、君はコロナを助け出せ !」


剣を握りしめながらエルサはクロスに向かって叫んだ。


「エルサ……後は頼んだ !」


クロスは翼を広げ、加速しながら屋敷の地下へ向かっていった。

コロナが何処に監禁されているかは解る。彼女の服に忍ばせた羽根が魔力を通じて教えてくれるからだ。


「ハイエルフか……先程の使い魔よりかは楽しめそうな大物が現れたな」

「ただではすまんぞ……私は強いからな……」


エルサとエクレア、二人の女は互いに睨み合い、火花を散らした。

ジリジリと詰め寄り、緊張感が走る。

身の毛も弥立つ程の殺気が広間全体の空気を支配する。

ハイエルフと魔女……果たして勝つのはどちらか……。


To Be Continued

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