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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
不死鳥の涙編
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第二百十話・リト&ワカバvsウエンツ&雷獣



雷獣の相手はリトが、魔術師ウエンツの相手は私が務めることになった。

リトは砂を巻き散らすように大地を蹴り、雷獣に向かって飛び掛かった。


「はぁぁぁぁぁ !!!」


リトは高速で指先から赤い火の弾丸を数十発放ち、雷獣を牽制した。

だが雷獣は身軽にジャンプをし、あっさりとかわしリトの頭上をを飛び越えた。

行き場を失った火の弾丸が地面に落ち、弾けるように軽く爆発を起こした。


「中々のスピード……大したものですねぇ」


幻獣と呼ばれるその存在は魔獣すら凌駕する鋼のような肉体と高い魔力を秘めていた。

雷獣は全身にスパークを纏うと巨大な二本の角を発光させ、青白く輝く電撃を放った。


「くっ…… !」


リトは雷獣の放つ強力な電撃を必死に避け続けた。

射程範囲が思ったより広く、かわすのに精一杯で反撃の余地が無かった。

電撃を浴びた大地が焼け焦げ、食い散らかされたかのように酷く抉れた。

例えリトでもまともに喰らえば致命傷になりかねない。


グオオオオオオオオ


間髪入れずに雷獣は雷が落ちた時のような咆哮を上げ、リトの喉元に喰らいつこうと襲い掛かった。


「逃げ回ってても勝てませんねぇ !はぁぁぁぁぁぁ !!!」


リトは声を張り上げ、潰れるほど強く拳を握り、腹の底から力を込め、赤く燃えたぎるようなオーラを纏うと勇猛果敢に雷獣に突撃していった。




一方私は腕に雷の剣を宿しながら繰り出されるウエンツの攻撃を対処していた。

魔術師とは言え、ウエンツは騎士団長レベルまで剣術を磨き上げていた。

私は反撃の隙が与えられず、ひたすらに防戦一方だった。

攻撃の手を緩めず、絶え間無く繰り出される剣撃を前に私は次第に後退りしていった。


「所詮は召喚士(サモナー)……今までの戦いは全てイフリート任せにしていたんだろう……他人の力で粋がり、英雄を名乗るとはおこがましいぞ !」


ウエンツは無情に電撃を帯びた手刀を風を切り裂く勢いで振り下ろした。


「きゃあっ !」


ウエンツの手刀が振り下ろされた瞬間突風が巻き起こり、私は悲鳴を上げながら地面を転がった。

直撃は避けたものの、風圧だけでこの威力……。

もしまともに斬られれば一撃でお陀仏だろう……。


「貴女は僕の敵ではないよ、大人しくイフリートが倒される様を見物していろ」


ウエンツは私を冷徹な目で見下すと掌を翳し、バチバチと電撃を放つ準備を始めた。


「わ、私だって……」


私は砂を掴むように拳を握り、ゆっくりと立ち上がった。

悔しかった……。私はずっと誰かに頼っていたわけじゃない……自分だって誰かの役に立てると信じて、必死に修行してきた。

私はリトと並んで、一緒に戦いたい。

もう彼一人に重荷を背負わせたくない。

そんな想いが、私を奮い立たせた。


「今ここで私が倒れたら……リトは再び二対一の劣勢を強いられる……だから、私が貴方を止めます !」


私はキッとウエンツを睨み付け、剣の矛先を向けた。

ウエンツはなおも冷めた目で私を見つめた。


「その怪物の牙で創られた剣も……宝の持ち腐れってやつだ……貴女ごときに僕の野望は止められない……雷獣砲(サンダービーストブラスト) !」


ウエンツは強力な電撃を勢い良く放った。


竜巻激槍(トルネードスティンガー) !」


私は足に力を入れ、剣に風の魔力を纏わせると腰を捻らせながらストレートに突き出した。

剣先から竜巻が光線のように放たれ、ウエンツの放つ電撃とぶつかり合った。


チュドドドドン


二つの力が拮抗し、大爆発を起こした。

衝撃で巻き起こる砂煙。

私は煙を利用しながら走り抜け、ウエンツに接近した。


「やぁぁぁぁぁぁ !」


キィン !


先制攻撃を仕掛けたのは私だ。

素早く剣を振り、ウエンツの胸を狙った。

ウエンツは一瞬反応が遅れたものの、即座に対処した。

私の剣とウエンツの手刀がぶつかり、火花を散らせた。


「不意討ち程度で僕を倒せると思うなよ ?」

「もちろん分かってますよ !」


私は後方にジャンプし、ウエンツから距離を取った。

戦いの余波で砂埃が吹き荒れる中、剣を構え直し、呼吸を整えた。


「はっ !」


私はエルサやブラゴとの修行の日々を思い出しながら、風と一体になるように剣を振るった。

体が弾むように軽い。

呼吸をする暇もなく私はウエンツと斬り合いを繰り広げた。

剣と手刀が擦れ合い、鈍い音がリズム良く響き渡る。


「何だこの女……急にスピードが上がったぞ…… !」


二人の斬り合いが続く中、徐々にウエンツに戸惑いが生まれ始めた。

私は最初こそウエンツの剣術に翻弄されたが戦っていくうちに目が慣れ、相手の太刀筋が僅かながら読めるようになってきた。

そして私自身も今までエルサやブラゴの下で厳しい稽古に励み、未熟ながらも多くの敵と戦い抜いてきた。

伊達に英雄と呼ばれてはいない。


「この速さ、まるで……エルフのようだ…… !」


私は攻撃の手を緩めず、円弧を描くように斬撃を放ち、ウエンツを追い詰めた。


「くっ…… !」


ウエンツは集中力が途切れ、腕から雷の剣が消滅した。

苦悶の表情を浮かべながら、ウエンツは後方へ後退りをした。


「はぁぁぁぁぁ !」


訪れた好機を逃さず、私は地面が割れる程力強く大地を踏みつけ、豪快に剣を振り上げた。


「この力強さ……まるでオーガ…… !」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ !」


ズバアッ


私は喉が潰れるほど叫び、両手で剣を構え、大きく振り抜き、ウエンツを切り裂いた。

大気が震撼する程の風圧が巻き起こり、ウエンツは肩から血を流しながら吹っ飛ばされ、壁に叩き付けられた。


「がはっ !」


ウエンツは血を吐き、立ち上がろうとするがよろめいて尻餅をついてしまった。


「はぁ……はぁ……」


ずっと呼吸をするのを忘れながら無我夢中で剣を振り続けた為、私は膝をつきながら呼吸を荒くした。

息が苦しい……。下手をすれば酸欠であの世に行くところだった。


「おのれ……この僕が…… !」


ウエンツは憎悪に満ちた瞳で私を睨み付けていた。

手負いとは思えない程殺意に満ち溢れており、私は警戒を怠らず、身構えた。




「うおおおおおお !!!」


リトは拳に炎を纏い、雷獣の胴体に強烈なパンチをお見舞いした。

雷獣は激痛に呻き、口から唾液を飛ばした。

だが雷獣も負けていない。

体内に溜め込んだ雷の魔力を解き放ち、リトの拳を通して電気を感電させた。


「うわぁぁぁぁぁぁ !」


リトは全身に電撃を浴び、顔を歪ませながら絶叫した。

まるで体内を棘で貫かれるような激痛がリトを襲う。


「こう……なったら…… !魔人の恐ろしさ思い知らせて差し上げましょう !」


リトは電撃の痛みに耐えながら全身に黒いオーラを纏い始めた。

筋肉は膨張し、顔つきは凶悪になり、野性味溢れた魔人そのものへと変わっていった。


「うおおおおおおお !」


黒い姿へと変貌を遂げたリトは強引に電撃を遮断させ、15メートルある巨体を拳一発でふっ飛ばした。

雷獣は悲鳴を上げながら殴り飛ばされたが空中で体勢を立て直し、足の爪を地面に食い込ませながら踏み止まった。

黒いリトは雄叫びを上げ、自らの胸板を叩きながら雷獣に向かってゆっくりと歩みだした。


To Be Continued

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