表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
不死鳥の涙編
209/400

第二百七話・金属の体



コルトは全身に鉄屑を固めた硬い金属を纏った。

まるで英雄クラスしか纏うことを許されない高級な甲冑のようだった。

コルトは拳を握り、勢い良くパンチを繰り出した。

俺も血のグローブをはめた拳をぶつけ、相殺する。


キィン


二つの拳がぶつかり、鳴り響く金属音。

衝撃で風圧が巻き起こる。


「う…… !」


振動で痛みが伝わり、俺は反射的にコルトから距離を取った。

対してコルトは平然としていた。

俺は拳を見つめると微かにグローブにヒビが入っていた。


「いてて……マジかよ……」


コルトの体の硬度は先程よりも桁違いに上がっていた。

鎧というより体の一部のようだ。

血のグローブをはめていても痛みが身体中を駆け巡る。

生身で殴り合ってたら確実に骨が砕けていた。


「へへへ、どうだ、俺の硬さは !」


得意気になって挑発するコルト。

俺は歯を食い縛り、拳の一点に魔力を集中させ、コルトの胸に渾身の一撃を加えた。

コルトの胸板にピキピキとヒビが入った。


「思ったより脆いようだな !」


どうやら力を一点に集中させたのが功をなし、僅かながらコルトにダメージを与えたようだ。

俺はこの機を逃さず、呼吸を忘れ、コルトの体を連続して殴打した。


「ぐう…… !」

「今だぁ !」


何度も重い打撃を叩き込まれ、コルトはよろめき、膝をついた。

俺はその隙を逃さず、脚に血の魔力を込め、斧のように蹴り上げた。


ズバッ


コルトの右腕が切り落とされ、地面に落下した。

落ちた振動で鈍い音と共に僅かに地面が揺れた。

どれだけ硬くても間接部分は弱かったらしく、簡単に切り落とせた。


「ぐわぁぁぁぁぁぁ !」


コルトは片腕を切り落とされ、想像以上の激痛に襲われ、悶絶した。

同情はしない、これは戦いだ。俺は正義の味方でも何でもない……敵は容赦なく倒す。

俺は血の剣を生成すると動けないコルトに刃を向けた。


「これで終わりだ」


俺は首を狙い、高く剣を振り上げた。


シュンッ


勢いつけて剣を振り下ろした瞬間、何かが剣を正面から掴み、止めた。


「何…… !?」


そこにいたのは、銀色の肌に覆われた、もう一人のコルトだった。


「馬鹿な…… !あいつは動けないはず……まさか…… !」


俺は理解した。

さっき切り落としたコルトの腕がスライムのような液体に変化し、俺に気付かれぬようそこから人型へと変身したということを。

コルトの肉体は金属生命体そのものだった。

どれだけ斬られようと、バラバラにされようと、無限に分裂出来る、厄介なものだった。


「へへへ……驚いたか……俺は鉄を自在に操れる……そして俺自身も金属と一体化してるんだぜ、そいつは俺の片腕から生まれた分身体だ」


さっきまで涙目で腕を押さえていたはずのコルトは嘘のようにケロっとして嘲笑っていた。

どうやら痛覚は最初から無く、先程の痛がる仕草も演技に過ぎなかった。


ザクッ


「ぐはっ…… !」


コルトの分身体は俺から剣を奪い、逆に動揺する俺の腹を突き刺した。

傷口から大量の血が溢れるように流れる。

吸血鬼(ヴァンパイア)の動力源は血……。それが体内から失われれば、命は無い。

俺は目眩と激痛に襲われ、フラフラとよろめき、立っているのがやっとだった。


「はぁ……はぁ……なめんなよ……この俺を !」


俺は流血し、血に染まった腹に手を当て、血の球を生成した。


(ブラッド)天体(スフィア) !」


俺は視界が霞む中、コルトの分身体の頭を狙い、無我夢中で血の塊を投げつけた。

球はコルトの分身体の頭に直撃し、砕け散った。


「オラ !もう一発だ !」


俺は二個目の球を投げ、コルトの分身体の全身を吹っ飛ばした。

分身体故に本体より頑丈では無かったようだ。


「甘いなぁ」


だがバラバラになった分身体の残骸は水銀のように液体に変化し、それぞれ無数のコルトの分身体となって分裂した。


「う……気持ち悪いな……」


俺はボロボロの体を押して蝙蝠の翼を生やし、一旦空へと避難した。

体力の限界もある……これ以上相手をするのは危険だ。

安全地帯に逃げてから策を考えよう。


「逃がさねえよ !お前ら !」


コルトの分身体達は一斉にジャンプし、空中にいる俺に向かって襲い掛かった。

分身体達は全身を槍に変化させ、俺を突き刺そうとした。


鋼鉄分身槍(アイアンマルチアロー) !串刺しになれぇ !」


ザクザクザク


「ぐわぁぁぁぁぁぁァァァァ」 !!!



無数の銀色の槍は俺の体を貫き、串刺しにした。

身体中から真っ赤な血が噴き出る。

俺は激痛に襲われ、絶叫しながら地面に落ちていった。

地面に落下した俺はうつ伏せに倒れた。

蝙蝠の翼も消え、もう反撃するだけの力は残っていなかった。

今度こそ勝利を確信し、ゆっくりと近付くコルト。

倒れている俺の近くまで来るとしゃがんで語りかけてきた。


「楽しかったぜ、久し振りに本気を出せた !感謝してるよ」


そう言いながらコルトは分身体達を引き寄せ、自らの体に取り込ませ、一つになった。

失われた片腕は再生し、更に槍のような形状に変化した。


「さあ、これでおさらばだ !あばよ !吸血鬼(ヴァンパイア) !」


コルトは槍の形をした腕を振り下ろし、動けない俺を刺し貫こうとした。


To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ