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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
不死鳥の涙編
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第二百六話・鉄を操る者



ノスフェ湖の湖畔を舞台に、俺は鉄の魔術師コルトと戦いをおっぱじめた。

ワカバとリトは雷の魔人ウエンツを相手にしている。


ウエンツは俺やワカバを騙すため猫を被り、邪魔の入らない辺境の地に誘い込み、二人がかりで襲い掛かった。

目的はどうやら俺達を倒すことらしい。

全く回りくどい連中だ。


「ホラホラ !どうした !」


俺とコルトは小手調べに殴り合いを繰り広げた。

殴ったと思ったら既に頬に一撃を喰らってしまう。

蹴ったと思えばすぐに蹴り返される。

魔術師は日陰者のイメージが強かったがコルトは好戦的で喧嘩慣れしていた。


吸血鬼(ヴァンパイア)さんよぉ !最上位魔族としての矜持見せてくれよ !」

「ぐっ…… !」


コルトの容赦ないパンチが連続で繰り出され、俺の顔面をクレーターが出来そうな程殴打する。


「調子に乗るなよ…… !」


パンチを打たれ、頬を凹ませながらも俺はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

片腕が獣の毛皮に覆われていく。

狼の鋭い爪が特徴の「獣型(ビーストタイプ)」だ。


「お返しだ !」


ズバッ ズババッ


俺は風のように素早くコルトの上半身を狼の爪で引っ掻き、引っ掻き傷を刻み込んだ。


「いってっ !」


ヒリヒリと痛みに襲われ、怯むコルト。

俺はその隙を狙い、回し蹴りを繰り出しコルトを岩盤まで蹴り飛ばした。


「ぐおおおおおお !」


コルトが激突した衝撃で岩盤はめり込み、破片が飛び散った。


「いてて……流石だぜ吸血鬼(ヴァンパイア)……一撃がクソ重てえ……」


コルトは多少の痛みを感じていながらも、割りと平気そうに服についた埃を雑に払っていた。

魔術師のくせにタフな体をしているな……。


「さて、そろそろ俺の魔法を見せてやろうか」


コルトはニヤリと笑うと片腕を上に掲げた。

すると砂鉄が旋風によって舞い上がり、彼の腕を包み込んだ。

コルトの片腕は銀色に染まっていく。


「こいつは……」


俺は思わず息を飲んだ。

コルトの片腕はアンバランスな程肥大化し、鈍器のような鉄の塊のように変化していた。


「俺は鉄の魔術師コルト !あらゆる鉄を自在に操り、時としてこの身に宿すことが出来るんだぜ」


コルトは巨大化した腕を俺に向けた。

そして大地を踏み鳴らしながら俺を狙って走り出した。


「こいつの威力を喰らってみな !」


俺は自らの腕を切り、血を小さな球体に凝縮し、コルトに投げつけた。


(ブラッド)天体(スフィア) !」


最近使っていなかった技の一つだ。

俺の血を鉄球のように重く硬く凝縮して相手に投げつけるえげつない攻撃。

だがコルトは巨大化した片腕を僅かに振り、血の塊を粉々に粉砕した。


「まるでSクラスの武器じゃねえか……」


俺は冷や汗をかいた。

あんなものを直に喰らったら脳ミソが砕け散る……。

接近戦は危険だ。

俺は血で槍の形を作り、コルトに向けて投げつけた。


「飛び道具ばっかじゃねえか !ビビってんのか !?」


コルトは嘲笑うかのように飛んできた槍を巨大な鋼鉄の腕で弾き、破壊した。


「くっ……」


やはり飛び道具程度じゃコルトにダメージを与えられない……。

俺は自らの血で剣を生成し、その手に握った。

覚悟を決め、接近戦を臨む。


「うおおおおおお !」


深紅(ディープレッド)邪剣(セイバー)を手に俺は走り、コルトに斬りかかった。


キィン !


金属音が鳴り響き、俺の剣と鋼鉄の腕がぶつかった。

だが剣はいとも簡単に折れてしまった。

剣自体は俺の魔力を通わせていた為、多少の攻撃には耐えられたはずだった。

コルトの腕はそれすらも上回る程に頑丈で全てを砕く力を秘めていたようだ。


「残念だったな !」


コルトは勝ち誇った様子で愕然とする俺の頭上に鋼鉄の腕を振り下ろした。


ドガァァァァン


たった一撃だった。

凄まじい轟音が湖中に響いた。

衝撃で大地に隕石が落ちたかのような巨大なクレーターが出来た。

地面には赤々と血が付着している。


「ハッハッハ !潰れちまったかなぁ !?」


狂ったように高笑いをするコルト。

だが次の瞬間、コルトの後頭部を何者かが勢い良く蹴り飛ばした。


「なっ !?」


コルトは思い切り吹っ飛ばされ、再び岩盤に激突した。

壁に頭ごと埋まり、必死に抜け出そうともがいていた。


「はぁ……はぁ……危なかったぜ……」


俺はコルトに殴られる瞬間、闇霧(ダークスモッグ)で霧になり、ギリギリの所で致命傷を回避した。


「プハアッ……てめえ不意討ちとかマジないわ !卑怯 !魔族の恥 !」


壁から顔を抜け出せたコルトは思い付く限りの罵倒を俺に浴びせた。


「こいつ……中々厄介だな……」


俺は策を考えた。

頑丈な肥大化した鉄の塊を振り回すような敵の攻略方法を……。

飛び道具も接近戦も通用しない……。

下手に近付けばこちらの骨が砕けることになる……。

厄介な相手だった。


「球も槍も剣もダメ……だったら……」


俺は思考を巡らせるうち、一つのアイデアを思い付いた。

まずは腕をかき切り、出血させる。

そして魔力によって血液を浮遊させ、塊へと凝縮させる。


「はぁぁぁぁぁ」


俺は自らの血を手袋のような形に変え、両手にはめた。

真っ赤で艶やかなルビーのように輝く血の手袋……。

勿論ただの手袋ではない。

あらゆる障害物を粉砕する高い攻撃力を誇る新たな武器「(ブラッド)手袋(グローブ)」だ。


「待たせたな……続きをやろうぜ」


俺は握り拳を作りながら構え、コルトを煽る。


「何やっても無駄な努力だと思うぜ~ ?」


俺の手にはめられたグローブを見てニヤニヤが止まらないコルト。


「さっきまでとは一味違うぜ」


俺は指でコルトを挑発した。


「ほう……そこまで言うんなら見せてもらうか」


コルトは巨大な鋼鉄の腕を振り上げ、地響きを鳴らしながら走り出した。


「うおおおおおおおお !」


ドゴッ ドガッ


俺は大振りなコルトの攻撃を見切り、赤いグローブをはめた拳でパンチを繰り出し、コルトの胸、腹を殴った。


「ごふっ !」


コルトは吐血し、僅かに顔を歪めながら後退りした。


「もっと見せてやるぜ……」


巨大な腕を持つ代償に動きが鈍くなったコルト。

その弱点を突き、俺は素早く腕を振り、左フック、左ジャブを決め、コルトの顔面を殴打した。

今の俺の拳は血のグローブによって攻撃力、硬度が何十倍にも跳ね上がっている。

謂わば鉱石の塊を拳に纏っているようなものだ。

コルトは頬を凹ませ、鮮血を流しながらフラフラとよろめいた。


「さ、さっきより重いな……だが、俺は負けねえぇぇぇ !」


コルトは物凄い気迫で巨大な鋼鉄の腕を俺の頭を目掛けて勢い良く振り下ろした。

俺は即座に反応し、拳を強く握り、振り下ろされた鋼鉄の塊を切れのある重い一撃で粉砕した。


「マジか !」


コルトの巨大な鋼鉄の片腕は決壊し、音を立てて粉々に砕け散った。


「へへ、こりゃ本気を出すしかねえか」


コルトは余裕の表情を崩さなかった。

まだ切り札を隠し持っているようだ。

俺は警戒し、一端距離を取るため高く後ろにジャンプした。


「俺は鉄を自在に操れるって言ったよな ?鉄をカチカチに固め、自らの腕に纏わせる……だがそれだけじゃねえんだよ……俺の力は……」


コルトはそう言うとぐっと腰を屈め、力を込め始めた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


コルトは獣が唸るような低い声を出すと大地が震えだし、大気がうねり、砂や小石が浮遊した。

異様な雰囲気を前に俺は圧倒された。


「はぁぁぁぁぁぁ !!!」


コルトは喉が張り裂けんばかりに叫ぶと大量の鉄屑が竜巻に乗って彼の全身を包み込んだ。

その時彼の体に変化が表れた。

大量の鉄屑が融合し、銀色の硬い装甲へと変わり、コルトはそれを鎧のように自らの体に纏った。


銀色の光沢が輝き、兜のような頭部には四本の角が生え、両肘からも鋭い突起が伸びた。

装甲からマスク状の外殻が現れ、コルトの口元を覆った。


「これが……鉄の魔術師の真骨頂……全身金属武装(フルメタルアーマード)だぜ……」


コルトは全身を禍々しい金属の鎧で覆った武装形態へと変身した。

その姿はまるで正義と対極にある悪魔のような騎士だった。

感じる魔力も今までとは比べ物にならない。

俺は小刻みに震えながらも身構えた。


「さあ、吸血鬼(ヴァンパイア)……もっと俺を楽しませてくれよ」


コルトは薄ら笑いをしながらゆっくりと戦闘体勢に入った。


To Be Continued

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