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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
不死鳥の涙編
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第二百二話・陰湿な元殺し屋



不死鳥(フェニックス)(ティアー)に拐われたコロナを助ける為、エルサ、マルク、グレン、クロスの四人は魔術師達に戦いを挑んでいた。


グレン、クロスは手を組み、二人がかりでゾーラに挑んだ。

二人は果敢にゾーラに攻撃を仕掛けるが、彼は自らの肉体をガラスのように透明になることで周囲に溶け込み、相手の視界から完全に気配を断つことが可能だ。

今までの敵のようにただ闇雲に攻撃しても掠りもしない。


「おらよ !」


ドガッ


グレンは攻撃を繰り出した瞬間に死角から殴られ、地面を転がった。

クロスは目が慣れたのかゾーラの動きがある程度読めてきたがまだまだ完璧では無かった。

実際は透明になって移動してるだけに過ぎないが、二人にしてみれば消えては別の場所に現れたりの繰り返しでまるで瞬間移動をしてるようだった。


「はぁ……はぁ……」


グレンとクロスは息を切らし、肩で呼吸をした。

どれだけ攻撃をしても掠りすらしない。

ただただ体力を無駄にするだけだった。


「俺は元々殺し屋をやっていたんだ、己の体を透明化させ気配を断ち、標的(ターゲット)に気付かれぬよう近付き一撃で仕留める ……そんなのは朝飯前よ、お前らはまだガキだから手加減してやってるだけさ」


ゾーラは憎たらしい顔で二人を嘲笑った。

幼い頃から殺し屋として育てられ、幾多の標的(ターゲット)を葬ってきた。

本気になれば、ゾーラは一瞬で相手の急所を突き、一撃で葬り去ることが出来る。

彼は遊んでいたのだ。

反撃をさせず、自身は無傷のままなぶるように二人にダメージを与える……。

性格の悪さが滲み出ていた。


「くそぉ、なめやがって !」


グレンは全身に力を込め、黄色に光るオーラを纏った。

身体中にスパークがビリビリと走る。

雷の魔力によってグレンの攻撃力、スピードが上昇した。


「行くぜぇ !」


グレンは助走をつけると物凄いスピードでゾーラに向かって走り出した。

常人では捉えきれない動きで瞬時にゾーラの背後に回った。


「だりゃっ !」


グレンは剣を一振りした。

だが剣が当たる瞬間、ゾーラは再び姿を消した。


「いくらスピードを上げても無駄だ、俺の反射神経を持ってすればどうってことない、攻撃が当たる瞬間に消えてしまえばいいだけだ」


ゾーラは憎たらしい声色でグレンを挑発した。


「くそぉ…… !ぐはっ !」


グレンは見えない拳に腹を殴られ、血を吐きながら膝をついた。


「グレン !」


クロスはグレンが殴られた瞬間を目を凝らさず良く見ていた。

ゾーラを攻略する突破口を開く為に。


「見極めろ……奴が攻撃をする瞬間を……」

「何呑気に観察してんだよ !」


ガッ


「しまっ…… !」


クロスは背後からのゾーラの気配に一瞬反応が遅れ、きつい蹴りの一撃を喰らってしまった。

クロスは蹴り飛ばされ、仰向けに叩きつけられるように倒れた。

一撃一撃が重い。

まるで急所を的確に撃ち抜かれるようだった。


「諦めろ、ガキが二人手を組んだ所で俺には勝てねえ」


ゾーラは首を回し、倒れる二人を見下しながら言った。


彼は自らの体を透明に出来る無の魔術師。

だがそれだけだ。

ウエンツのように雷を撃てるわけでもコルトのように鉄を操れるわけでもエイワスやシャロンのように虫や樹を使役出来るわけでもない。

ゾーラの扱える魔法は彼等に比べると地味で劣る。

故に殺し屋時代で培った高い身体能力と相手の急所を的確に見抜く洞察力で補っているのだ。

透明化という自身のアイデンティティーを最大限に生かす為に。


「さて、いつまでもガキをなぶっててもしょうがねえから、そろそろトドメ刺そうかな~」


ゾーラは首を回しながらゆっくりと近付いてきた。


「くそ……俺はコロナを助けられねえのかよ…… !」


グレンは悔しさから地面を殴った。


「まだだ……僕はコロナの母に託されたんだ……何があっても彼女を守ると……」


クロスはよろめきながらも立ち上がった。


「僕はお前を倒し、コロナを助ける !」


クロスは鋭い眼光でゾーラを睨み付けた。

その気迫にゾーラは僅かに圧された。


「使い魔の癖に粋がるんじゃねえよ……大人しく寝てやがれ !」


ゾーラは大地を蹴り走りながら姿を消した。

クロスは身構え、目を閉じながら集中した。


(落ち着け……感じるんだ……ゾーラが何処を走っているのか……)


クロスに緊張が走り、心音がバクバクと鳴る。


シュンッ


クロスは僅かにゾーラの筋肉の音を感じた。

振り下ろされる見えない蹴りをクロスは遂に見切った。


(シャドー)(ハンド) !」


シュルルル


「何 !?」


クロスの背後を狙ったはずのゾーラは足元から現れた影に絡み付かれ、動きを封じられた。


「くっこんなもの…… !」


ゾーラは再び姿を消すが、絡み付く影がくっきり見えてしまっていた。


「かつてお前は触手で動けないミライを一方的に殴った……因果応報ってやつだな !」


クロスは翼を剣のように振り回し、動けないゾーラを滅多切りにした。


「ぐわぁぁぁぁ !」


ゾーラは悲鳴を上げながら傷口から血を飛び散らさせた。


「ちきしょう……舐めんなよ !」


ゾーラは力ずくで全身に絡み付く影を引きちぎった。


「今ので俺を攻略出来たなんて思うなよ !」


ゾーラは怒りに顔を歪ませながら透明になり、周囲に溶け込んだ。


「今度は俺が行くぜ !」


グレンは電撃を帯びながら勢いつけて走り出した。


「俺の動きがそう簡単に読まれてたまるかぁ !」


怒声と共に見えない拳がグレンを襲う。

だがグレンは紙一重でかわし、逆にカウンターをし、剣で斬りつけた。

ゾーラは痛そうに腕を抑えた。

傷口から痛々しく血が滴り落ちる。


「ぐう !」

「悪いな !俺も目が慣れてきたんだよ !」


グレンはニヤリと笑みを浮かべた。


「くそガキ共がぁぁぁぁぁ !!!」


逆上し、冷静さと余裕を失ったゾーラ。

動きも当然悪くなり、二人に簡単に見切られるようになった。

いくら透明になろうと無意味で逆にグレン、クロスに反撃された。

それでも透明になり続けているうちにゾーラは魔力切れになってしまった。


「ハァ……ハァ……そんな……」


ゾーラは息を切らしながら膝をついた。

本来相手を倒すのに時間をかけないのだがグレン、クロスに粘られ、長時間透明になり続けるうちに魔力が切れてしまった。

こうなってしまえばゾーラは喧嘩が得意なだけの人間。魔術師の力が無くなってしまった。


「ちきしょおおおおお !」


プライドを傷つけられ、ゾーラは激昂しながら地面を殴り付けた。

拳からは血が流れた。


「だが透明になれなくても、てめえら二人ボコるのはわけねえぜ」


ゾーラはニヤリと笑みを浮かべると不気味に立ち上がり、拳をゴキゴキと鳴らした。


「へえ、純粋な喧嘩ってわけか、だったら丁度良い……クロス、これ持っててくれ」


そう言うとグレンはクロスに神器を預けた。


「どういうつもりだ ?」


クロスは訳が分からず困惑した様子でグレンに問い掛けた。


「向こうが丸腰なんだ、こっちも神器無しで戦う……素手と素手の勝負だぜ」


グレンは拳を鳴らしながらゆっくりと歩み寄った。


「この俺とタイマンだと ?笑わせるなよ ?」


ゾーラは情けをかけられたと思い、苛立ちを露にした。

グレンとゾーラは至近距離まで近付き、互いを睨み合った。

両者から緊迫した空気が流れる。


グレンとゾーラ……。

オーガの戦士の子と無の魔術師。

互いの意地とプライドを懸けた、拳と拳のぶつかり合いが始まろうとしていた。


To Be Continued

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