第二百一話・不死鳥復活計画
魔術師達の活動拠点である古びた屋敷……。
そこへエルサ、マルク、グレン、クロスの四人が拐われたコロナを助けにやって来た。
立ち塞がるのは三人の魔術師。
エルサ達は彼等によって傷つけられたミライ、ルーシーの仇を取るべく燃えていた。
「手加減はせんぞ…… !」
「血祭りに上げてやるぜ !」
エルサは敵意を剥き出しにしながら剣をゆっくりと抜いた。
マルクは相手を威圧するようにヒレとヒレを刃物を研ぐように擦り合わせた。
「不死鳥復活計画の邪魔はさせないぞ !」
「そんなに怖い顔したって怖くねえよ !」
エイワスは魔導書を、シャロンは虫達を操る杖をそれぞれ懐から取り出した。
「「うおおおおおおお !!!」」
エルサとマルクは大地を蹴り、風を切りながら二人に向かって走り出した。
ゲシッ ドガッ
「あぐっ !?」「ぐほっ !?」
だがその瞬間、見えない何者かの妨害を受け、エルサとマルクはその場に倒れ込んだ。
「何だ…… ?突然後ろから蹴られて……」
「透明人間にでもやられたような……」
目の前で倒れるエルサとマルクに、シャロンは可笑しそうに笑った。
「だっせ !あんだけイキッといてこけてやんの !」
「違う、奴等が転んだのではないよ、ゾーラだ」
エイワスが呟くと、倒れている二人の後ろからゾーラが一瞬で姿を現した。
「悪いが正攻法ではなく搦め手で倒させてもらうぜ、お前らはこの俺によって何も出来ぬまま無様に敗北する運命だ、あのハーピーとダークエルフみたいになぁ !」
「何だと……」
高笑いするゾーラ。
エルサとマルクは地面を這ったまま、怒りで歯軋りをした。
「敗北すんのはてめえだ !」
ゾーラの背後目掛けてグレンが斬りかかった。
「おっと」
だがゾーラは再び姿を消し、グレンの一撃をかわした。
「オーガのガキが、まだまだ経験が足りねえぜ、折角の不意打ちも動きが大振り過ぎて意味がねえ」
何もない所からゾーラの憎たらしい声だけが聞こえた。
「確かに俺はガキだ……実戦経験が足りねえ……一人じゃゴブリンロードにすら勝てねえ……だけどなぁ !」
ガッ
突然クロスが何もない所を斬りつけた。
するとゾーラが姿を現し、ふらつきそうになった。
「馬鹿な……俺の姿が見えるのか…… ?」
「何となく動きを読んだだけだ」
クロスはドヤ顔をしながら答えた。
彼は何度もゾーラが消えたり現れたりするのを見ているうちに何処を移動しているのかが自然と読めるようになっていた。
「グレン !二人でこいつを倒すぞ !」
「おう !」
グレンとクロスは互いにアイコンタクトを取った。
「上等じゃねえか、ガキ共がいくら集まっても無意味だということを教えてやるぜ」
ゾーラはニヤリと余裕の表情を見せた。
「二人とも、いつの間にか強くなったな……」
「こりゃ子供扱い出来ねえぜ……」
エルサとマルクは微かに笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がった。
エイワスとシャロンは思わずビクッとなった。
「俺達大人がのんびり寝てるわけにはいかねえなぁ !」
「全くその通りだ !」
マルクとエルサは戦闘体勢に入った。
「俺はあの紳士ぶった胡散臭いやつを……」
「私はあの娘を相手にするぞ」
マルクとエルサは互いの顔を見合わせると呼吸を合わせ、二人に向かって走り出した。
「樹の魔術師をなめるなよ……」
「虫の魔術師もな !」
屋敷の中でコロナを監禁したエクレアは水晶を手に持ち、エルサ達と魔術師達の戦いの場面を写し出していた。
「フフフ、始まったか……まあ精々足止めをしておいてくれ……所でコロナよ」
「話しかけないで…… !あなたは……お母さんじゃない……!」
エクレアの呼び掛けを遮るように叫び、コロナは睨み付けた。
彼女は気付いていた。見た目はかつて自分を育ててくれた母親そのものだが、中身はまるで別人だということを。
「お母さんは……私を逃がすために……囮になって……村人達に捕まった……私に生きてって言ってくれた……だから……あなたは偽物……本物のお母さんじゃない…… !」
エクレアはその言葉を聞き、無表情でコロナを見下ろした。
「まだ幼い小娘だと思っていたが、勘が鋭く、利口なようだな……大したものだ」
エクレアは表情こそ無かったが感心しながら腕を組んでいた。
「……私に……何をさせる気なの……」
「不死鳥の復活だよ……」
エクレアは静かに語り始めた。
「数千年前、まだ異種族同士の争いが絶えなかった時代……不死鳥は火山の頂を支配し、やって来る人間共を焼き尽くしていた……だが一人の勇者と魔人によって倒され、その不死と言われる肉体は封印されてしまった……」
エクレアは天井を見上げた。
「以来 不死鳥は数千年もの間、再びこの地に支配者として返り咲く時を待ち続けた……だが封印を解く為には、火、水、土、風の穢れ無き四属性の力が必要なのだ……四大元素魔法を扱え、高い魔力を持つ魔女である君の力が……君自身をコアにすれば、不死鳥は復活する……」
エクレアはまるで自分が不死鳥であるかのように語った。
「私はそんなことに協力しない……」
コロナはそっぽを向きながら言った。
意味が分からなかった。
何故「不死鳥」を復活させたいのか……。
その為に何故仲間が傷付かなければならないのか。
「そんな事を言っていられるのも今のうちだ……君を助ける為に仲間が傷付き倒れていくのを見て平気でいられるかな…… ?」
エクレアは嫌らしい表情を浮かべ、この場を去った。
コロナは不安に押し潰されそうになりながらうずくまった。
「クロス……お母さん……ロウ……皆……」
コロナは杖をギュッと握りしめ、小声で呟いた。
彼女を巡って、無限の結束と魔術師達の戦いは更に苛烈を極めることになる。
To Be Continued




