第二百話・悲劇の母エクレア
皆さんこんにちわ、烈斗です(´ω`)
去年の6月くらいから書き始めて遂に200話突破しました!
これからも物語は続いていくので応援宜しくお願いします!
遠い日の追憶……。
少数の魔女と人間が共に暮らしている小さな村があった。
四大元素魔法を扱える魔女、エクレアは女手一つで娘を育てながら魔法で薬を開発し、生計を立てていた。
エクレアは魔女として高い才能を秘めていたが争いを好まず、穏やかな性格だった。
「お母さん見てて !」
小さな庭でコロナは張り切りながら母親の前で魔法を披露した。
コロナは掌から小さな風を生み出した。
母親からいつも魔法を教わっていたのだ。
最初は上手く行かなかったが、母を喜ばせたい一心で必死に練習し、ようやく魔法を使えるようになったのだ。
「あら、すごいじゃない、風の魔法を操れるなんて」
「えへへ……」
コロナは母に褒められ、少し照れていた。
「コロナはきっと立派な魔女になれる……私の子だもの」
母は優しく彼女の頭を撫でた。
コロナは嬉しくて満面の笑みを浮かべた。
その後もコロナは母から魔法を教わった。
火、水、土、風……。
四つの属性を操れる稀に見る天才としてコロナは周囲の人間達からも持て囃されていた。
村の皆も優しく、コロナは幸せだった。
あの日までは……。
「うわぁぁぁぁ火がぁぁぁぁ !!!」
「誰か助けてぇぇぇ !!!」
何の前触れもなく、魔獣による襲撃で村は炎に包まれ、十数人程の犠牲を出した。
幸い魔女達の力を結集させたことで、魔獣を追い払うことが出来た。
だが事件はこれで終わりではなかった。
あろうことか村人達は魔獣が村を襲った原因は魔女にあると言い出し、片っ端から魔女を捕らえ、処刑した。
所謂魔女狩りである。
怒りに囚われ、村人達は自分達がやっていることは正義だと信じて疑わなかった。
命の危険を感じたエクレアはせめて娘だけでも逃がそうと使い魔のクロスを与え、村から連れ出した。
エクレアはコロナを連れ、村から離れた森への入り口付近まで逃げた。
しかし村人達は血眼になって探している。
見つかるのは時間の問題だろう。
「コロナ、良く聞いてね……あなたはすぐにここから離れなさい !振り返っちゃ駄目よ」
エクレアはコロナの肩を揺さぶり、言い聞かせた。
「お母さんは…… ?」
不安そうに尋ねるコロナに、エクレアは何とか気持ちを抑え、笑顔を取り繕った。
「ごめんね……お母さんは、一緒に行けないの……」
エクレアは意を決してコロナに言った。
彼女の腕には痛々しく血が流れていた。
逃げる途中で村人の投げた槍がかすったのだ。
手負いの自分と逃げてもいずれは捕まり、二人とも処刑される。
「私が囮になる……だからあなたはクロスと一緒に遠くまで逃げ延びるのよ」
「嫌だよぉ……お母さんと離れたくないよ……」
コロナは悲しそうな表情で大粒の涙を浮かべた。
「お願い……あなたが助かるにはこれしか無いの……」
エクレアはコロナを優しく抱き締めた。
「ごめんなさい……本当はもっと……あなたに色々なこと教えたかった……魔法も……いっぱい教えたかった……もっと一緒に居たかった……」
「お母さん……」
エクレアはとうとう堪えきれず涙を流した。
コロナは嗚咽を漏らし、震えながらエクレアの胸にうずくまった。
「居たぞ !魔女だ !」
「見つけて火炙りにしてやれ !」
村人達の怒声が聞こえた。
エクレアはハッとなり、コロナを突き放した。
「さあ、もう時間がないわ、早く逃げなさい !クロス、後は頼んだわよ !」
「分かりました、命に代えてもコロナをお守りします !」
小さなカラスは人間の男の子に変身し、無理矢理コロナの腕を引っ張った。
「お母さん !?お母さん !!!」
クロスに引っ張られ、コロナは泣き喚きながら森の中へと消えていった。
「お願い……コロナ……生きてね……」
エクレアは涙を浮かべながら精一杯の笑顔でコロナの姿が見えなくなるまで見送った。
これが、母と子の、最後の別れだった。
「う……ここは……」
懐かしく、悲しい夢だった。
今でも鮮明に覚えている、母との尊き思い出と、悲しき別れ……。
コロナは目が覚めるとそこは暗闇に覆われ、不気味な雰囲気の屋敷だった。
まるで廃墟のようにボロボロで土台柱は虫にでも喰われたかのように腐っていた。
「私は確か……魔術師に捕まって…… !そうだ !ミライお姉ちゃん……ルーシーお姉ちゃん……クロス…… !」
コロナは辺りを見回したが、誰も居なかった。
彼女は思い出した。
魔術師に誘拐されたことを……。
自分のせいでミライとルーシーが傷つけられたことを。
コロナは胸が締め付けられるようだった。
「ここは私達魔術師の隠れ家……ようこそ、四大元素魔法の使い手……手荒な真似を許して欲しい」
突然コロナの前に、ローブを纏った長身で髪の長い妙齢の女性が現れた。
妖艶で大人びた雰囲気を醸し出していた。
コロナはその姿を見た瞬間、まるで亡霊にでも出会したかのように絶句した。
彼女が会いたがっていたがもう二度と会えないと諦めていた存在……彼女の母親、エクレアと瓜二つだった。
「お母……さん……」
コロナは驚きのあまり、上手く声が出せなかった。
開いた口が塞がらなかった。
エクレアはしゃがんでコロナと同じ目線になると、にっこりと微笑んだ。
「君の力が必要なんだ……手を貸してくれぬか ?」
エクレアは彼女に向かって手を差し出した。
廃墟のように荒れ果てた屋敷……。
ゾーラ、シャロン、エイワスの三人は屋敷の外で退屈そうに待機していた。
エクレアとコロナの再会を誰にも邪魔させぬよう、見張りをしているのだ。
「しかし、四大元素魔法つってもあいつただのガキだぜ ?そこまで必要な存在だったのか ?」
シャロンは腕を頭の後ろに組みながら言った。
「さあな、エクレア様の大事な娘らしいけどな」
「ええ ?全然似てねえじゃん」
シャロンは意外そうに驚いていた。
「四大元素魔法の使い手……不死鳥復活計画に必要不可欠なコアらしいぞ」
エイワスは腕を組ながら答えた。
三人は暇を持て余し、雑談していた。
魔術師集団、不死鳥の涙の真の目的は魔獣すら凌ぐと言われる伝説の幻獣、不死鳥を復活させ、その涙を手に入れることだった。
「不死鳥の涙は死者を甦らせるという驚異的な効能があるとされる……当然高値で売れる……」
ゾーラはゲスな考えを抱きながら不気味な笑みを浮かべた。
「てめえは金のことしか考えてねえのかよ」
シャロンは呆れながら言った。
「そういうお前は不死鳥の涙を何に使うんだよ」
ゾーラに問われてシャロンは思わずどもった。
「そ、そりゃおめえ……死んだおばあちゃんを生き返らせるだよ……」
シャロンは少し顔を赤くしながら小声で答えた。
「プハッお前おばあちゃん子かよそんな柄悪いのに !」
ゾーラは吹き出し、腹を抱えて笑い転げた。
エイワスもつられて笑いを堪えていた。
「笑ってんじゃねえよクズ野郎 !てかてめえも何笑ってやがる !」
シャロンはエイワスに指を指した。
「ごめんごめん、シャロンって意外にピュアなんだなって思って」
エイワスは笑顔で弁明した。
「ちっ、まあ良いけど……で、俺らはいつまでここで待機してりゃいいんだよ」
シャロンはふてくされながら聞いてきた。
「俺達は四大元素魔法の使い手を取り返しにやって来る奴らを返り討ちにすりゃあ良いのさ」
ゾーラは指を鳴らしながら言った。
「しかし本当に来るのか ?」
「俺達に恐れをなして、ビビって見捨てたりしてな」
シャロンは腹を抱えて汚く笑った。
「誰がビビったって ?」
その時、男の声が聞こえた。
「ほらな ?現れただろ ?」
ゾーラが目をやると、そこにはエルサ、マルク、グレン、クロスの四人の姿があった。
四人共落ち着きを払ってはいるが瞳には燃えたぎるような怒りが写し出されていた。
「ハイエルフに半魚人にオーガに使い魔カラス……間違いない、無限の結束だ……」
エイワスは本で確認しながら言った。
「よくここの場所が分かったな……」
ゾーラはニヤニヤしていた。
「コロナの衣服に僕の羽根を忍ばせてある……特殊な魔力で彼女の居場所を察知できるんだ」
クロスは鋭い目付きでゾーラを睨み付けながら言った。
「おー誰かと思えばさっき俺がハーピー、ダークエルフと一緒にボコったやつじゃねえか、性懲りもなくまたやられに来たってのか ?」
「ふざけるな……貴様らを倒し、コロナは返してもらうぞ !」
クロスは目を血走らせ、怒りに満ちた表情でゾーラを睨んだ。
「よくもミライちゃんにあんな酷いことを……てめえら覚悟は出来てんだろうなぁ !」
「妹を傷付けて、生きて帰れると思うなよ !」
クロスに続いてマルク、エルサも怒りを露にした。
二人の気迫に圧され、エイワスとシャロンはたじろいだ。
「う、うるせえ !兎に角ここから一歩も通さねえ !」
「我等の計画を邪魔するものは容赦しない……」
気迫に負けそうになりながらもシャロンとエイワスは啖呵を切った。
異様な緊張感とピリピリとした空気が張り詰められた。
まさに一触即発だった。
To Be Continued




