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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
不死鳥の涙編
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第百九十七話・コロナ拐われる



任務を終えて帰る途中だったコロナ達の前に、突如として二人の魔術師が現れた。

一人は小柄で乱暴そうな少女シャロン。

もう一人は紳士的な男、エイワス。

彼等は不死鳥(フェニックス)(ティアー)を名乗った。


「俺達の噂は聞いてるんだろ ?ならこれから自分達の身に何が起こるか、分かるよな ?」


シャロンは邪悪な笑みを浮かべながら舌で自らの唇を舐めた。

ルーシー、ミライ、クロスはコロナを隠すように陣形を取り、身構えた。


「フフフ、君達は確かに強い……オーラを見ただけで理解できる……だがそれでも我々には及ばない……」


エイワスはにっこりと微笑んだ。


爬虫(レプティル)騎士団(ナイツ)をやったのは君らだな……だけど僕らは簡単には倒せないよ !」


ルーシーは剣を構え、大きく振りかぶった。


竜巻激槍(トルネードスティンガー) !」


ルーシーは剣の先から渦巻き状の魔力を発現させ、エイワスに向かって一直線に放った。


「無駄だよ」


エイワスは指を鳴らすと巨大な大木が地面を突き破るように現れ、竜巻激槍(トルネードスティンガー)を盾のように防いだ。


「か、硬い…… !」

「言っただろう ?君達がいかに強かろうと我々の足元にも及ばぬと……」


エイワスは紳士らしい上品な笑みを浮かべた。


「お前ばっかりずりいよ、おれにも楽しませろよ」


シャロンはニヤニヤしながら腕を回し、ゆっくりと近付いて来た。


「俺達の目的はてめえらを潰し、四大元素魔法の使い手を捕まえることだぜ」

「四大元素魔法…… !」


クロス、コロナはぞっと背筋を凍らせた。


「何それ~」


ミライだけはピンと来ておらず、全員ずっこけた。


「火、水、土、風の属性魔法を一人で使いこなせる魔女……コロナのことか…… !」

「ピンポン~、コロナちゃんて言うんだ、一緒に来てもらうぜ」


シャロンはにやけながら手を差し出した。


「貴様らにコロナは渡さん !」

「行くよ~ !」


ミライとクロスは翼を広げ、威嚇の体勢を取った。


羽根乱針(シャトルラッシュ ) !」


黒と白の羽根が混ざり合いながら槍のように無数に放たれ、シャロンに襲い掛かった。


巨大蟲車輪(ビッグホイール) !」


シャロンは叫ぶと、巨大なだんご虫のような化け物が現れ、車輪のように大地を抉りながら回転し、降り注がれる羽根の嵐を鎧のように硬い殻で弾き返した。


「俺は多種多様な虫達を操れるんだぜ」


シャロンはニヤリと笑った。


「二人とも、選手交替だよ !あの女は僕が倒す !」


ルーシーは後ろに下がり、ミライと背中合わせになった。


「分かったよ~」


そう言うとミライは翼をはばたかせ、風を起こした。

凄まじい勢いで砂埃が巻き上がった。


「くっ……目に埃が…… !」


エイワスは砂煙に思わず目を覆った。


「今だよ~」

「行くぞ !」


ミライとクロスは低空飛行をしながらエイワスに向かっていった。


「やぁぁぁぁぁぁ !!!」


ルーシーは剣を構え、風を切るように大地を蹴り、シャロンに向かって走り出した。


「ダークエルフか、返り討ちにしてやるぜ !」


シャロンは腕を大きく掲げると、数百匹の虫達が空を泳ぎながらルーシーに襲い掛かった。


「邪魔するな !」


キィン ズバッ


ルーシーは凡人では黙視出来ぬ速さで襲い来る虫達を切り裂いた。

バラバラに切り裂かれた虫達はボトボトと地面に落ちていった。


火炎球(ファイアボール) !」


コロナも後方から炎を放ち、虫達を焼き払い、ルーシーを援護した。


「ありがとうコロナちゃん !でやっ !」

「くぅ…… !」


カキィン


間合いを詰め、ルーシーの振り下ろした剣とシャロンの持っていた短剣がぶつかり、金属音が鳴り響いた。


「このやろー、良い度胸じゃねえか !」

「虫に頼ってるようじゃ、僕には勝てないよ !」


ルーシーとシャロンは激しい斬り合いを展開した。

風のように舞い、素早く立ち回るルーシーを相手にシャロンは次第に追い詰められていった。

元々使役系の魔法が得意なシャロンは、護身用に剣術を心得てはいるが小さい頃から剣を振り続けてきたルーシー相手に勝てるはずが無かった。



「虫共 !こいつを攻撃しろ !」


シャロンの声を聞き、おびただしい数の虫達の群れが一斉に背後からルーシーを狙った。


穿孔疾風(ドリルウインドー) !」


コロナは叫ぶとドリルのように回転する風の弾丸が放たれ、次々と虫達を打ち落とし、ルーシーを助けた。


「くそぉ…… !」

「だから言ったでしょ、虫に頼ってちゃ、僕達には勝てないって !」


ルーシーはシャロンの死角を狙い、片足で蹴り上げた。


「がはっ !」


シャロンは腹を蹴られ、短剣を落とし、膝をついた。


「くそ……俺じゃこいつらに勝てねえのか…… !」


シャロンは悔しさに顔を歪ませながら拳で地面を殴り付けた。


その頃、ミライとクロスはエイワスを撹乱するように彼の周辺を飛び回った。


「目障りだなぁ……」


エイワスは目を細くしながら上を見上げた。


「ま、私の植物達が捕らえるんだけどな」


地面を突き破るように生え、際限なく伸びる植物が触手のようにうねり、飛び回るミライとクロスを狙った。

二人は加速し、風を切りながら懸命に植物から逃げ続けた。

植物は何処までも二人を追い掛けた。


空斬(エアスラッシュ) !」

(シルバー)(ウイング)~ !」


ミライは翼を硬化させ、クロスは翼で真空波を放ち、植物を切り裂き、難を逃れた。


「一筋縄では行かないか……」


エイワスは内心の苛立ちを隠しながらも冷静さを装った。


勇敢(カーレッジ)(バード) !」


クロスはカラス形態に変身すると限界を越えて加速し、槍のように勢いよく飛び込み、鋭い嘴でエイワスを刺し貫こうとした。


「無駄だ !」


エイワスの前に巨大な大木が出現し、盾のとなってクロスの前に立ち塞がった。


「こんなもの……貫いてやる !うおおおおおおおおお !!!」


クロスは構わず突撃し、大木に激突した。

ドリルのように物勢い勢いで大木を削り、貫通して大きな穴が開いた。


「何…… !」

「うおおおおおおお !!!」


クロスはエイワスの懐に飛び込み、鋭い嘴を激突させた。


「くっ…… !ぐわっ !」


エイワスは幸い護身用の分厚い本で衝撃を吸収し、致命傷は免れたものの、クロスの勢いに押され、空中に浮遊した。


「キャッチ成功~♪」

「なっ、離せ !」


急かさずミライは脚でエイワスを捕まえ、そのまま空高く上昇した。


「やめてくれ~目が回る~ !」


紳士っぷりが嘘のように取り乱し、悲鳴を上げるエイワスを無視し、ミライは空中で縦に周回し、勢いをつけてエイワスを地面に叩き落とした。


隕石投撃(メテオストライク)~ !」


エイワスは高所から地面に叩きつけられそうになったが植物達が密集し、クッションの役割を果たしてくれたお陰でダメージを受けずに済んだ。

だが空中で振り回された影響でエイワスは目を回し、ぐったりしていた。


「こ、この樹の魔術師である私をここまでこけにするとは……ゆ、許せない~」


エイワスは既に酔い、満身創痍だった。


「よし、勝てるな…… !」

「うん !」


クロスとミライは地上に降り、ハイタッチを決めた。


コロナ達を狙った魔術師の集団……不死鳥(フェニックス)(ティアー)のエイワスとシャロン……。

二人をあっさりと返り討ちにし、決着がついたと思われた。


「シャロン、エイワス、何こんな奴らに手こずってるんだよ」


その時、何者かの声が聞こえた。


「だ、誰 !?」


ルーシー達は新手の存在に警戒し、身構え、辺りを見回すが誰も居なかった。


「あれ……おかしいな……」


ルーシーは不審に思ったが気配すら感じなかった。

見えない存在に流石のルーシーも恐怖心を抱き始めた。


「そんなに硬くなる必要はねえよ」


ドゴッ


「かはっ…… !」


突然ルーシーは腹部に激痛が走った。

腹筋がめり込み、赤く腫れ上がった。

まるで見えない敵に殴られたようだった。


「す、姿を見せてよ !」


ルーシーは痛みを堪えながら剣を振り回した。

だが


ドゴッ ドガッ バキイッ


「っ……あっ……きゃあっ !?」


ルーシーは息をする暇もないくらい一方的な暴力を受けなぶられ、血を吐きながら膝をついた。


「はぁ……はぁ……ど、どうして……」

「お前じゃ俺の姿は見えないぜ !」


ゴキキ


見えない何者かが背後からルーシーの首を締め付ける。

ルーシーは苦痛に顔を歪ませ、必死の形相でもがいた。

首は徐々に絞まり、ルーシーは意識が朦朧とし出した。


「ルーシーお姉ちゃん !」


コロナはすぐさま駆け寄ろうとした。

だが相手が見えないため、手の出しようが無かった。

コロナはただルーシーが絞め落とされる様を黙って見てるしか出来なかった。


「ルーシーちゃん~ !」


ミライとクロスはエイワスを放ってルーシーの元に駆け寄ろうとした。

だがルーシーに気が向いてる隙を突かれ、蔦に二人は全身を拘束されてしまった。


「ちょっと、離してよ~ !このままじゃルーシーが~ !」

「先程のお返しはきっちりとさせてもらう、それが紳士というもの……貴方方はご友人が倒されるのをじっくりと見届けるがいい……」


落ち着きを取り戻したエイワスはニヤリと笑った。


ドサッ


ルーシーは涎を垂らし、目があらぬ方向を向き、力なく項垂れた。


「うっ……ん……」

「落ちたか……元魔王軍幹部のダークエルフも、敵が見えなければまともに戦えまい」


ルーシーは気を失い、崩れるように倒れた。


「ルーシー !!!」


コロナは一方的になぶられ、呆気なく倒れたルーシーを見て涙ながらに叫んだ。


「アハハ、ざまあみやがれ !」


シャロンは嘲笑いながら倒れているルーシーを踏みつけた。


「ルーシー……よくも……許さない~ !」


普段は温厚なミライは珍しく怒りを露にし、鬼のような形相で叫んだ。


「そんな顔をしても、怖くねえよ」


ゲシッ


「がはっ !」

「あぐっ !」


突然ミライとクロスは見えない敵に腹を蹴られたのか、吐血しながら悶絶した。


「ククク、エイワス、ずっと押さえてろよ」


姿を現したのはフードを被った怪しい青年……ゾーラだった。

フードに隠れて、表情は見えなかった。


「いや、やめて……」


コロナは嫌な予感がしたのか、ゾッとした。


「お前がルーシーを……許さない !」


ミライは涙を浮かべながら怒りの表情でゾーラを睨み付けた。

ゾーラはニヤリと笑うとミライの顔を鷲掴みにした。


「んっ…… !」

「四大元素魔法の使い手 !よく見とけよ」


ドガッ ドガッ バキッ バキイッ


ゾーラは蔦に拘束され、動けないミライをサンドバッグにした。

顔や腹を殴り、蹴り、徹底的にいたぶった。


「やめて…… !お願いだから !」

「くそ !やるなら僕にしろ !」


クロスとコロナは泣きながら懇願した。


「それだけじゃあ聞けねえなぁ、俺らと一緒に来る、そう言ってくれないとなぁ」


ゾーラはミライを殴りながらゲスな声で煽った。

コロナはフードをぎゅっと被り、恐怖に身を震わせた。


「お……お願い……します……ミライ……お姉ちゃんを……いじめないで……ください……一緒に行き……ます……から……」


コロナは絞り出すような小さな声を震わせながら言った。


「聞こえねえなぁ !もっと腹から声を出して !」


ゾーラは怒声を上げながらミライの顔を思い切り殴った。


「お願いです !一緒に行きます !だからミライお姉ちゃんを殴らないで !!!」


コロナは杖を握りしめながら張り裂けそうな声で叫びんだ。


「はい、素直で宜しい !おいエイワス、これ解いてやれ」

「ああ……」


ゾーラに言われ、エイワスは拘束を解いた。

クロスとミライは解放され、雑に放り投げられた。

ミライは執拗になぶられ、顔はパンパンに腫れ上がり、変わり果てた姿になり、呻き声を上げていた。


「さあ、来るんだ」


エイワスに言われ、コロナはうつむきながらゆっくりと彼等の元に歩んでいった。


「やめろ……コロナ……行くな…… !」


クロスは地面を這いずりながら必死にコロナに呼び掛けた。


「コロナ !」


コロナはゆっくりと振り返り、絶望しきった目でクロスを見つめた。


「クロス……ごめんね……今まで……ありがとう……」


コロナは力なく告げるとシャロン、エイワス、ゾーラと共に何処かへ消えてしまった。


「コロナァァァァァァァ !!!」


クロスの無念に満ちた悲しき叫び声だけが虚しく響き渡った。


To Be Continued

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