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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
不死鳥の涙編
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第百九十四話・ラゴン敗れる



爬虫(レプティル)騎士団(ナイツ)は任務中に謎の集団に襲われた。

謎の集団は想像以上の強さを誇り、ラゴン以外のメンバー全員が倒されてしまった。

彼等の目的は未だに不明。

残されたラゴンはドラゴニュートの力を解放し、ウエンツと呼ばれる青年に戦いを挑む。

厳つい竜の顔、巨大な二本の角、禍々しく広げられた翼、鎧のように硬い鱗に覆われたその姿は見るものを圧倒した。


「ドラゴニュート……それが君の本来の姿かい……」

「ああ、全力で行かせてもらうぜ !」


ラゴンは大地を蹴り、砂を巻き上げながらウエンツに殴り掛かった。


ザンッ ズバッ


ラゴンは怒濤の鉤爪攻撃を繰り出し、ウエンツを激しく攻め立てる。

ウエンツは両手をクロスさせ、防戦一方となった。


「どうした !もっと俺を楽しませろ !」

「やれやれ、竜族と言うものは根っからの戦闘馬鹿らしい……はっ !」


ウエンツは目を開眼させると全身にスパークを走らせ、自らを加速させ、短時間でラゴンのスピードを凌駕した。


雷獣剣(サンダービーストソード)


ウエンツは懐から魔導書を取り出し、呪文を唱え、更にもう片方の腕に電撃を帯びた光の剣を召喚させた。


「その魔法……てめえは魔術師か…… !」

「ご名答、ただし僕らはただの魔術師ではない……偉大なる魔女から力を授かった、選ばれし魔術師 !」


キィン キィン キキィン


竜の鉤爪と雷の剣による、激しい斬り合いが展開された。

刃と刃がぶつかる度、金属音が鳴り、火花が飛び散った。

スピードではウエンツが優勢でラゴンは徐々に押されていった。


「良いねぇこの手応え……ゾクゾクするぜ !」

「自分が不利なのにも関わらずその態度、見上げた根性だな」


ラゴンは自分が劣勢に追い込まれている状況すら楽しんでいた。


「はぁっ !」


ウエンツは片腕を大きく振り下ろした。

ラゴンは紙一重でかわすと翼を広げ、大空に逃げ、空中でウエンツを見下ろした。


竜人(ドラコ)噴火(イラプション) !」


ラゴンは無数の火球をウエンツに浴びせた。

ウエンツは避けも防ぎもせず、敢えて棒立ちのまま火球を全身に浴びた。

周囲は爆発し、煙が発生した。


「ウエンツ !」

「心配いらねえよ、見てみろよ」


ヤンチャそうな青年は指を指した。

煙が晴れるとそこには無傷のウエンツの姿があった。


「無傷か……とことん楽しませてくれるぜ !」


ラゴンは胸板がパンパンに膨れ上がる程息を吸い込んだ。


竜人火炎放射(ドラコブラスター) !!!」


ラゴンは顎が外れそうなくらい口を大きく開け、ウエンツに向けて火炎放射を放った。


「雷獣よ、君の力を借りるぞ……」


ウエンツはボソっと呟くと上を向き、掌を翳した。


雷獣砲(サンダービーストブラスト) !」


ウエンツは特大の電撃を手から放出し、ラゴンの放った火炎放射にぶつけた。

炎と雷が互いを食い合うように拮抗する。

冷たい風が吹くはずの荒野は熱気に包まれた。

激しい光線の撃ち合いが続く。


「ぐぐぐ…… !なんてパワーだ…… !」


やがてウエンツの放った電撃が押し始めた。

ラゴンの炎を飲み込むように徐々に侵食していく。


「俺は……負けねえ…… !はっ…… !」


この時、ラゴンは目を疑った。

一瞬、ウエンツの背後に巨大な雷獣らしき姿が写った。

その瞬間、ラゴンは背中が凍りつくような感覚に襲われた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


ウエンツは一瞬の隙を突き、力を更に込めた。

雷はあっという間に炎を押し返し、ラゴンを直撃した。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


ラゴンは光線の撃ち合いに競り負け、絶叫しながら地上へと落下した。

最後に残された希望であるラゴンも遂に敗北してしまった。


「終わったな……爬虫(レプティル)騎士団(ナイツ)は倒した……今の僕らは竜族よりも優れていることが証明された」


ウエンツはフードを取りながら倒れているラゴンに近付いた。

フードの下の素顔は女性と見紛う程の美形でメガネをかけ、黄金に輝く金髪が風になびいた。


「へへ……お前強いな……俺の敗けだぜ」


ラゴンは満身創痍で身動きが取れない状態だった。

ウエンツはラゴンの髪を乱暴に掴んだ。


「敢えて命は奪わない、それは僕のポリシーに反するからな、君達は僕達魔術師によって敗北したという苦い記憶を刻まれたまま惨めに生き続けろ」

「へへ、俺達は敗北を糧にまた強くなるさ……何度負けようがな……」

「ほう……」


ウエンツはラゴンの髪を引っ張り、顔を近づけさせた。


「かつて君達を敗北させ、竜族の強者達を人間共の傘下へと加えさせた連中……それは無限(メビウム)結束(ユナイト)とやらのことだろう ?」

「鋭いな……その通りだぜ」


ウエンツはラゴンを雑に叩き付けた。


「さ、僕達の次のターゲットは決まったよ、無限(メビウム)結束(ユナイト)……魔王を倒したからといって調子に乗るなよ……必ず倒して、四大元素魔法の使い手を手に入れる !」


ウエンツは宣言すると四人の魔術師を引き連れて荒野を去り、何処かへ行ってしまった。

荒野ではラゴン含めた六人の竜族が残され、大地に転がった。




ウエンツ率いる謎の魔術師の集団が暗躍を始めた頃、新生魔王軍(ネオサタン)の基地に運ばれたゴブリンロードが意識を取り戻し始めた。


「ここは……」


ゴブリンロードは目を覚ますと見慣れない場所に戸惑っていた。


「おはようございます、ゴブリンロードさん」


ゴブリンロードが目を覚ましたのを見計らい、ミーデ、トレイギアがやって来た。

ゴブリンロードは警戒し、拳を構えた。


「そんな怖い顔をしないで下さい、死にかけていた貴方の命を救ったのはこの私ですよ」


ミーデは胡散臭い笑顔で語りかけた。


「そ、そう……なのか……だとしたら……ありがとう……」


ゴブリンロードはたどたどしく礼を言った。

憑き物が落ちたように穏やかな様子だった。

理性を取り戻し、人の言葉を話せるようになった。

だがゴブリンロードの中に眠る潜在能力は健在だ。


「貴方は我ら新生魔王軍(ネオサタン)の元で働いてもらいます、悪いようにはしませんよ」


ゴブリンロードは暫くボーっと考えていた。


「貴様を倒した連中に復讐したいだろ ?ならばこの組織に入るのは好都合なはずだろ」


トレイギアもゴブリンロードに促した。


「そうだな……わかった……俺、魔王軍に入る」

「決まりですねぇ」


ゴブリンロードは単純で物分かりの良い男だった。


「貴方にも名前を付けて差し上げましょう、ゴブラ……貴方はゴブラです」

「ゴブラ……」


ミーデに名付けられ、ゴブリンロードはゴブラの名を賜った。

ゴブラは頭を垂れ、ミーデに忠誠を誓った。


「順調に幹部クラスが集まってきてますねぇ」


ミーデは部下が次々と増え、組織として回復してきている状況を実感し、上機嫌になっていた。


「所でミーデ、近頃謎の少数精鋭の魔術師軍団が暴れ、騎士団や冒険者パーティーを襲っていると聞いているが……あの爬虫(レプティル)騎士団(ナイツ)も倒されたとか……」


トレイギアは神妙な面持ちでミーデに報告した。


「謎の魔術師……あの魔女の差し金に違いありませんねぇ……今回は様子見です、無限(メビウム)結束(ユナイト)とどこまで張り合えるのか……お手並み拝見といきましょうか……」


ミーデはそう言いながら窓を眺め、黄昏た。


To Be Continued

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