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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
ケルベロスの逃走編
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第百七十五話・オールアプセクトハウス

長かった魔王編も終わり、いよいよ新章です!

何とか年内には終わって良かったです。

皆さん宜しくお願いします!



無限(メビウム)結束(ユナイト)爬虫(レブティル)騎士団(ナイツ)が魔界に乗り込み、魔王を倒し、魔界を牛耳る強大な勢力である魔王軍を壊滅させたという事実が国中に知れ渡った。


国は私達を讃え、騎士のランクを最上位であるS級へと昇格させ、家一つ購入出来る程の多額の報酬を与えてくれた。

S級になったことで過酷な環境に足を踏み入れたり災害級のクエストを受注することが出来るようになった。


私達の騎士団、無限(メビウム)結束(ユナイト)に新たな仲間が二人加わった。

オーガのグレンと元 憤怒(サタン)災厄(カラミティ)ダークエルフのルーシーだ。

オーガの里のブラゴから手紙が届き、グレンを頼むようお願いされた。

騎士団に入ることでグレンは外の世界を知り、見聞を広め、更に成長させるということだろう。

ルーシーは魔王軍壊滅に貢献したという功績が認められ、エルサの監視の元、自由に活動することを許された。


私達は瞬く間に町の人達から英雄として讃えられ、町の人気者になった。

だが魔王軍が壊滅したからと言って全ての脅威が無くなったわけではない。

魔獣や魔物、盗賊、闇ギルド等、人々を脅かす存在は後を絶たない。

私達は決して驕ることなく、今までと変わらず、人々を守る為の活動を続けるつもりだ。




「それにしても……広いですね……」


仲間が増えてエルサの家が狭くなってしまった為、貰った報酬で家を更に広く改装することになった。

敷地は以前のものより倍はあり、下手な別荘よりも大きかった。

私達はリトを除いて全員で10人になる。

広さはこれで丁度良いのかも知れない。

今日からここが私達の活動拠点となる。


「名前をどうするか……」

「名前ですか ?」


エルサは家の壁に触れながら言った。


「名前が無いと不便だろう」

「確かにな……」


皆が悩む中、私はふと名案を思い付いた。


「全てを受け入れる家って意味で、オールアプセクトハウスなんてどうですか ?」


人間、魔人、吸血鬼(ヴァンパイア)半魚人(マーマン)……等……

私達は生まれも育ちも皆バラバラだけど一つに結束し、今日まで頑張ってきた。かつて敵だった者ですら今は仲間になっている。

誰であろうと関係なく受け入れられる場所……そう意味を込めたかった。


「オールアプセクトハウスか……良い響きじゃないか」


エルサは嬉しそうに私の肩を叩いた。


「流石主……相変わらず素晴らしいネーミングセンスですね」


ランプの中のリトが調子良く私をおだてた。


「あんまりそう言われると恥ずかしいですよ……」


私は少し照れながら顔を隠した。

こうして、私達の新たな活動拠点の名前は「オールアプセクトハウス」に決定した。




「お兄ちゃん……まだ起きないね……」

「そうだな……」


私達はとある寝室に入った。

寝室のベッドでヴェロスは眠り、未だに意識が戻らずにいた。

魔獣カードを使い、暴走してリトに倒され、一命はとりとめたものの昏睡状態が続いていた。

ルーシーは悲しい表情で眠るヴェロスの手を握った。

私達が魔界に行ってる間、「堅固(ソリッド)山猫(キャッツ)」の皆が交代で世話をしてくれていた。


「エルサ、こいつ明らかに元気そうな顔してんのに、全然起きねえんだ……」


リーダーのイリスが腕を組ながら言った。


「超魔獣に変身した代償がそれほどまでに大きかったということか……」

「違うよ……」


ルーシーが口を開いた。


「お兄ちゃんは目覚めたくないんだと思う……起きたら自分の罪と向き合わなくちゃいけなくなるから……」

「ルーシー……」


ヴェロスはこれまで数え切れない程の人を殺し続けた。

だがそれは魔導師デビッドに唆され、歪んだ価値観を植え付けられたからだ。

デビッドの支配から解放された今、彼は罪の意識に苛まれてしまうだろう。


「お兄ちゃんは……強くてクールで、少し怖いけど……本当は弱虫なんだよ……」


ルーシーはポツリと語った。

私とエルサはルーシーの口からヴェロスの過去を聞いた。


「そうか……弟さんを二人も……」

「それで人間に恨みを……」


ヴェロスは立ち止まれなかった。

人をいくら殺した所で、彼の心が満たされることは無かった。

それでも殺し続けるしか出来なかった。

復讐心に身を委ねて居なければ、ヴェロスは二人の弟を亡くした悲しみと絶望に押し潰されてしまうからだ。


「お兄ちゃん……お願いだよ……起きてよ……」


ルーシーは目に涙を浮かべ、ヴェロスの手を強く握った。

エルサは隣で静かにルーシーの肩を優しくさすった。

私は何も言葉が出てこなかった。


ヴェロスはいつか目を覚ましてくれるのだろうか……。

私達はただ待ち続けるしかなかった。


To Be Continued

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