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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
突入、魔王城編
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第百七十一話・追い詰められる魔王



一方外の世界では、コダイが力を振り絞り、スケルトンキメラの動きを押さえ、時間を稼いでいた。

スケルトンキメラは腕をがっちりと握りられ、抵抗出来ずにいた。

両者は岩のように動かず、緊迫した空気が張り詰められた。


「魔王様、そんな獣ごときに何を手こずっておられるのですか……」


ミーデは苛立ちを押さえられずに観戦していた。


「ぬぉぉぉぉ、いい加減に手を離せ !」


遂に保たれていた均衡が崩れた。

激昂したスケルトンキメラは力任せにコダイの手を振りほどき、勢い良く体当たりをし、コダイをふっ飛ばした。


「はぁ……はぁ……この我が…… !」


ようやく解放され、自由の身になったスケルトンキメラだが何処か苦しそうだった。


「魔王の様子がおかしいですよ…… ?」

「腹でも下したのか…… ?」


一同はスケルトンキメラの異変に気付き始めた。

体内で何かが起こっているのか、スケルトンキメラは苦しそうに腹をおさえていた。


「ぐぅ……おのれ……イフリートめぇ……ぐわぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


スケルトンキメラは空を見上げて絶叫すると、全身から闇のエネルギーが漏れ出した。

そしてスケルトンキメラの腹を何かが勢い良くぶち破った。

衝撃で骨の一部がが砕かれ、散乱した。


「お前は…… !リト !」


スケルトンキメラの体内から脱出し、ヴェルザード達の前に現れたのはリトだった。

リトは私を抱き抱えていた。


「皆さん、遅くなってすみませんでした」


リトは申し訳なさそうに苦笑いをしていた。


「いや、お前もワカバも無事で何よりだぜ……」


ヴェルザード達はホッとし、表情を和らげた。


その様子を遠目から眺めていたミーデは信じられないような顔をしていた。


「そんな……イフリートが復活するなんて……魔王様…… !」


ミーデは怒りから拳を震わせていた。


「さ、後はこの私に任せてください」


リトはついさっきまで人質だったとは思えないくらい堂々と胸を叩いた。


「いや、そうは行かねえよ……俺達も最後まで戦う、もう弱音を吐いたりはしねえ」


ヴェルザードはリトの肩をポンと叩き、笑みを浮かべた。


「そうですか……分かりましたよ、リリィさん !主のこと頼みましたよ」


リトはリリィに呼び掛けた。


「分かりました !ワカバちゃん !」


リリィは疲弊していた私の肩を支えてくれた。


実はスケルトンキメラが停止している隙にコロナは水の魔法・(ヒーリング)しの(ドロップ)で重傷を負った仲間達を回復させていた。

全身の骨が砕けたエルサも見事に完治した。


「助かったよ、コロナ」

「どういたしまして……」


エルサに頭を撫でられ、コロナは照れ臭そうにしていた。


「何はともあれ、これで全員揃ったようだな」


リト、ヴェルザードを始め、10数人もの魔族達がスケルトンキメラを前にして立ち上がった。

スケルトンキメラは動力源であるリトを失ったがパワーはそれほど落ちてはいなかった。

計画が崩れ、計り知れない怒りを露にしながらスケルトンキメラはリト達を見下ろし、睨みつけた。


「許さんぞ貴様ら……全員踏み潰してやる…… !」


スケルトンキメラは天に向かって咆哮を上げると、地響きを鳴らしながら襲い掛かってきた。


「皆さん、来ますよ !」


リトの合図と共に皆は一斉にスケルトンキメラに向かって走り出した。

いよいよ魔王との最後の戦いの火蓋が切って落とされた。


黒羽(クロウ)分身(アバター) !」


まずはクロスが先陣を切った。

クロスは複数の分身体を作るとスケルトンキメラの周囲を飛び回り、撹乱した。


「目障りなカラス共め……叩き落としてやる !」


スケルトンキメラはクロスの分身達を叩き落とそうと手で払った。

飛び回るクロスに構うあまり集中力が散漫になっていった。


「何処見てやがる !でやっ !」


ズバッ キィンッ スパッ ガゴンッ


マルクのヒレ、ミライの翼撃、ルーシーの剣、ララの尻尾、ザルドの爪、ゴルゴの硬い拳による集中砲火を浴びせた。


「くっ……何故再生しない…… !」


何度も攻撃を受けるうちに砕かれ、ボロボロになっていく骸の鎧。

イフリートを失ったことで魔力が急低下し、再生が追い付かなくなっていた。


「はぁぁぁぁぁ !神器解放・迅雷鬼剣(サンダークリップオーガ) !」


ズバッ


グレンはスケルトンキメラの後ろに回り込み、神器・迅雷鬼剣(サンダークリップオーガ)を勢い良く振り下ろし、巨大な尻尾を一刀両断した。


「ぐわぁぁぁぁっ !」


スケルトンキメラの尻尾はグレンによって切り離され、地面に叩き付けられた。


(ナイン)つの属性光線(エレメントビーム) !!!」


9つの蛇・大蛇(ヒュドラ)に変身したヒュウは9つの頭から一斉に光線を吐き、スケルトンキメラに浴びせた。


「蛇ごときがぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


大量の光線をシャワーのように浴び、スケルトンキメラは絶叫し、爆発した。

煙が晴れるとスケルトンキメラは息を荒くしながら膝をついた。

確実にダメージが蓄積され、魔獣の骸で覆われた体が崩壊に向かっていた。


「この我が……押されているだと……」


スケルトンキメラは悔しさから地団駄を踏み、大地を揺らした。

絶対的な支配者である魔王が下等な魔族達に翻弄されていることは屈辱以外の何物でも無かった。


「悔しがってる暇なんてないわ !」


メリッサは堂々としながら一歩前に出た。


「図に乗るなぁぁぁぁぁ !」


逆上し、冷静さを欠いたスケルトンキメラはメリッサを食らわんと襲い掛かってきた。


「ふんっ !」


メリッサは蛇の長い髪から光線をスケルトンキメラの足元を狙い、放った。


「何だと…… !?」


スケルトンキメラの足は石化によってカチコチに固められ、動けなくなってしまった。


「このような小細工……我には通じん !」


脱出しようと石化した足を上げようともがくスケルトンキメラ。

その真上をラゴンが颯爽と飛び回る。


「じゃあ俺は小細工抜きで行くぜぇぇぇぇ !!!」


ラゴンは口から炎を吐き、上空からスケルトンキメラに浴びせた。

さっきまでのスケルトンキメラなら撃ち返せていたが弱体化し、ダメージが蓄積していた為、全身火だるまになっていた。


「く……不完全だったとは言え、ここまで追い込まれてしまうとは……」


炎に飲まれ、呻くスケルトンキメラ。

最早反撃も許されず、サンドバッグになっていた。

ヴェルザードとエルサ、そしてリトが前に出る。


「よくもワカバを苦しめてくれたな……」

「ワカバを傷つけた罪……その身を持って購ってもらうぞ……」


ヴェルザードとエルサは剣を握り、大きく構えた。


「ほざくなぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


ボォォォォォォォ


スケルトンキメラは怒りで我を忘れながら二人に向かって炎を吐き散らした。


「おっと !」


急かさずリトが二人の前に立ち、真正面から炎を受け止めた。

リトは炎によるダメージを受けず、逆に吸収して自分の魔力にすることが出来るのだ。


「ワザワザ魔力を与えてくれて、感謝しますよ」

「ぐぬぬ……」


スケルトンキメラは屈辱に身を震わせた。

リトが炎を食らっている間、後方にいたコロナは杖を掲げ、ヴェルザードとエルサに魔法をかけた。


火力上昇(ファイアーアップ)(グランド)(アーマー) !」


赤とオレンジの光が二人を包み込む。

火の魔法は攻撃力を、土の魔法は防御力を一時的に高めることが出来る。


「力がみなぎってくるぜ……」

「ありがとうコロナ、これで思う存分暴れられるぞ」


ヴェルザードとエルサは同時に大地を蹴り、加速しながらスケルトンキメラに向かっていった。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


ズバァッ


ヴェルザードは深紅(ディープレッド)邪剣(セイバー)を大きく振り上げ、スケルトンキメラの体を縦に斬りつけた。


「ぐおっ…… !」


骸の破片が飛び散りながらスケルトンキメラは怯んだ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


バサァッ


間髪入れずにエルサは竜巻を纏った剣を振るい、横に切り裂いた。


スケルトンキメラの体に十字の傷が切り刻まれた。

二人の剣によって刻まれた傷は赤と金色が混ざったように輝き、眩い閃光を放った。


「合技・森林(フォレスト)(クルーシファイ) !」


ドガァァァァン


スケルトンキメラは全身から光が溢れ、大爆発を起こした。

ヴェルザードとエルサ……吸血鬼(ヴァンパイア)とハイエルフの最上位種族の合体技が炸裂した。

並の魔獣……いや、超魔獣クラスですら消し飛ぶ程の威力だ。

だが、スケルトンキメラはしぶとく耐えていた。

全身の骸の鎧が黒く変色し、ボロボロになっていたが、スケルトンキメラは執念だけで持ち堪えたようだ。


「い、今の威力は中々だったぞ……我で無ければ消し飛んでいたわ……」


スケルトンキメラはフラフラになりながらも精一杯の虚勢を張った。


ミーデは魔王が追い詰められている様子を見て落胆し、膝をついた。


「貴方もしぶといですねぇ、まあ、そうこなくちゃ叩きがいがありませんからね」


リトはスケルトンキメラを見上げながら近付いた。


「イフリート……」

「貴方は不完全な形で儀式を行ったことに加え、取り込んだはずの私を逃がしてしまった……直に貴方を覆っている魔獣達の骨もバランスを失い崩壊するでしょう……詰みましたね、魔王サタン」


リトはと口元をニヤケさせながらスケルトンキメラを煽った。


「ほざくな !剣の状態で手も足も出なかった貴様が、我に敵うはずがなかろう !」


スケルトンキメラは子供のように癇癪を起こし、反論した。


「それはどうですかね……」


リトは意味深な笑みを浮かべながら言うと、深く深呼吸をした。

一同はリトに注目した。


「はっ !」


リトは赤いオーラを全身に纏った。

激しく燃え上がる炎に包まれながら、リトは深く瞼を閉じ、瞑想に入った。


「イフリート……何をする気だ…… !」


やがてリトを覆ってた熱く激しい炎のオーラは穏やかになびき、真っ赤に燃えていた炎は落ち着きのある青色に変化した。

リトの筋肉質な体はやや細身になり、赤かった髪はアイスグリーンに近い青く透き通った色に染まった。


「その姿は…… !」


リトは魔人形態とも違う、穏やかになびく青い炎を身に纏いった新たな姿へと変身した。

スケルトンキメラは今まで見たこともないリトの姿に驚愕し、言葉を失った。


「さ、始めましょうか……」


リトは静かな口調で宣言した。


To Be Continued

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