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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
突入、魔王城編
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第百六十九話・コダイ参戦



スケルトンキメラによって次々と仲間は倒されていった。

最後に残ったのは、私とリリィとコロナ……。

コロナは私達を庇い、小さな体でスケルトンの前に立ち塞がった。

スケルトンキメラが腕を振り下ろし、小さな命が奪われようとしたその時、私の持っていたランプから赤い光が放たれた。


「何だ…… !?この目障りな光は…… !」


ランプから放たれる眩い光はスケルトンキメラすらも怯ませた。


「これは……一体…… !」


予期せぬ出来事に一同が戸惑う中、ランプの中から巨大な恐竜のようなモンスターが勢い良く現れ、スケルトンキメラを牽制した。


「ぐおっ !」


スケルトンキメラは吹っ飛ばされ、、地響きを鳴らしながら倒れた。


「コダイ…… ?」


コロナを間一髪で救ったのは、かつて私が仲間にし、ランプの中に封印していた古代の魔獣、コダイだった。

元々はミーデに召喚され、私を襲おうとしたのだが紆余曲折あって私の仲間になったのだ。

コダイには超魔獣ミノタウロスをも圧倒する高い潜在能力が秘められている。


「ありがとう……コダイ……」


コダイは私を静かに見下ろし、ゆっくりと頷いた。

ティラノサウルスのように凶悪な顔付きだが、私を見つめる瞳は穏やかで宝石のように煌めいていた。

コダイを召喚するには莫大な魔力が必要になる。

今までは私の持つ魔力では召喚出来なかったが、数々の修行を経て、やっと召喚することが出来た。


グギャオオオオオオオ


コダイはスケルトンキメラを威圧し、凄まじい咆哮を上げた。


「古代の魔獣か……まさかイフリートだけでなく、そんなものまで手駒にしていたとはな……侮れん小娘よ……」


期待に胸を踊らせながらスケルトンキメラはその巨体でゆっくりと立ち上がった。


「コダイお願い、力を貸して !」


私の願いが届いたのか、コダイは頷くと、スケルトンキメラに向かって走り出した。

走る度に大地が揺れ、足音が響いた。


「我はこの地に眠る魔獣達の骸を纏っている、謂わば魔獣共の合体 ! たかが一魔獣でしかない貴様に、我を倒せるはずがなかろう !」


スケルトンキメラは獰猛な雄叫びを上げ、コダイを威嚇した。


スケルトンキメラとコダイの二大怪獣が激突した。

巨体同士が激しくぶつかり合い、大地は揺さぶられ、凄まじい轟音が鳴り響いた。


グギャオオオオオオオ

ギシャァァァァァァァ


両者は雄叫びを上げながら互いに攻撃を繰り出した。

動く度に大地は震え、岩があちこちに飛び散った。

その様子を私達はただ見ているだけしか出来なかった。




「古代の魔獣……またしても現れましたか……」


遥か遠くから、ミーデがスケルトンキメラとコダイの戦いを苦々しく見物していた。

ミーデはリリィとの戦いで皮膚がボロボロになり、気を失っているペルシアを小脇に抱えていた。

城が崩去る直前に彼が倒れていたペルシアを救い出したのだ。


「ま、イフリートもいない今、魔王様が負けるなんて万に一つもありませんがね」


ミーデは薄ら笑いを浮かべていた。




スケルトンキメラとコダイの激闘は意外な展開を見せる。

コダイの振り下ろされた爪の一撃がスケルトンキメラの体を引っ掻き、骸の鎧を砕いた。

破片があちこちに散乱した。

コダイがやや優勢のようだ。


「ほう……貴様、大した力ではないか……」


エルサでも貫くのがやっとだった魔獣の頑丈な鎧をコダイの鋭利な爪は意図も容易く切り裂いた。

私達は再び希望を抱き、二体の巨獣の戦いを息を呑みながら見守った。


コダイの猛攻は続く。

怯んだ隙を狙い、スケルトンキメラの胴体を何度も殴打し重い一撃を叩き込んだ。

更に大木のように太く強靭な足で蹴り上げ、スケルトンキメラを後退りさせた。


ボオオオオオオオオ


極めつけにコダイは口から膨大な炎を吐き、スケルトンキメラに浴びせた。


「くぅ…… !」


あれほど頑丈でヒビ一つ入らなかったスケルトンキメラの鎧が黒く焼け焦げた。

スケルトンキメラは魔獣相手に自分が劣性であることが屈辱で怒りに身を震わせた。


「図に乗るな !獣風情が !」


激昂したスケルトンキメラは赤黒い稲妻を全身に走らせ、振り返りながら巨大な尻尾を振り回し、コダイの顔面に叩き付けた。


「コダイ !」


スケルトンキメラの強靭な尻尾の威力は凄まじく、一撃でコダイをダウンさせた。

コダイが倒れた衝撃で大地が震動した。


「さっきは魔獣の分際でよくも王である俺に好き放題やってくれたな……思い知れ !」


ドガッ ドガッ


スケルトンキメラはダウンしているコダイをその巨大な足で容赦なく踏みつけた。

何度も踏みつけられ、コダイは抵抗出来ず、一転して戦局は逆転した。


「フハハハハ !我の力に平伏すが良い !」


スケルトンキメラは勝ち誇ったように笑い、コダイの腹を蹴り飛ばした。

コダイは滑るように大地を転がり、衝撃で土埃が嵐のように舞った。

明らかにスケルトンキメラの力が増していた。

古代の魔獣ですら、スケルトンキメラの敵ではないということか。


「リトさんの力が吸収されてるんです……」


リリィは恐る恐る口にした。


「そんな…… !」


リトが魔剣に取り込まれてからどれくらい経っただろう……。

魔王の力が強まる度、リトの魔力は弱まり、やがて完全に消滅してしまう……。

だけど今の私にリトを救う手段が無い。

私は絶望にうちひしがれるしか無かった。


「もう一度……リトに会いたかったな……」


もう二度とリトに会えない……そう思うと悲しみが胸に込み上げてきた。

私は涙を流しながらか細い声でぼやいた。

その時、頭の中にふと妙案が浮かんだ。


「そうだ……私がリトに会いに行けば良いんだ…… !」


私はすぐに無謀にもスケルトンキメラの前に立ちはだかった。


スケルトンキメラは横たわるコダイにとどめを刺そうと腕を振り下ろす直前だった。


「小娘、何のつもりだ ?」


リリィやコロナ、ヴェルザード、そして魔王ですらも困惑していた。

私は構わず深く息を吸い込み、大声を張り上げた。


「魔王サタン !私は貴方の后になります !だから、これ以上仲間を傷付けないで下さい !」

「ワカバちゃん !?」


私の言葉を聞き、少しの間固まっていたがスケルトンキメラは高笑いした。


「フハハハハハハハ !良いぞ良いぞ !遂に我に従う気になったか !」


魔王は上機嫌になり、私に向かってゆっくりと近付き、静かに見下ろした。

私は魔王の目を真っ直ぐ見つめた。


「ダメだワカバ !あんなやつの言う通りになんかなるな !」

「そうですよ !ワカバちゃんが犠牲になる必要なんてありません !」

「ワカバお姉ちゃん行かないで !」


ヴェルザード達は必死になって私を止めようとした。


「黙れ黙れ !この娘の決意を無駄にするものではないぞ !」


魔王に一喝され、三人はそれ以上何も言えず、全身が凍り付いたかのように一歩も動けなかった。


「私が貴方に従えば、仲間に手は出さないですか ?」


私は強い口調で魔王に問い掛けた。


「仲間の為に自らを差し出すとは殊勝な心掛けよ……だが……」


スケルトンキメラはゆっくりと私の前に立ち塞がり、赤い目を発光させると光線を放ち、私に浴びせた。


「きゃっ !?」


私は光線の引力によって引き寄せられ、瞬く間にスケルトンキメラの体内に吸い込まれていった。


「ワカバ !」


ヴェルザードが叫ぶも遅かった。

私の体は完全に魔王に取り込まれてしまった。


「フハハハハハハハ !!!愚かな女だ !この我が約束を守るはずがなかろう !」


魔王は最初から約束を守るつもりなんて皆無だった。

青ざめるヴェルザード達を見下し、嘲笑った。


「貴様らによって魔王軍は壊滅的な被害を受けた……許すはずがない !あんな口約束、本気で受け取ると思ったのか ?貴様らを決して生かさんぞ ?」


リトだけでなく、私までも魔王の手に堕ちてしまった。

ヴェルザードは悔しさから歯を食い縛り、地面を殴り付けた。


「さあ……絶望した顔のまま、無惨に死ぬが良い……」


スケルトンキメラは戦意を無くしたヴェルザード達に向かって腕を振り上げた。

だがその時……


ガシッ


「こいつ !まだ動けるのか !」


コダイが起き上がり、スケルトンキメラの両腕を握り、抑え込んだ。

両者の力は拮抗し、石像のように動かない。


「コダイ……」


コダイだけは直感で理解していた、私の真意を……。


To Be Continued

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