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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
突入、魔王城編
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第百六十二話・メイドの友達



突然私の頭の中にリトの声が聞こえた。


「主……聞こえますか…… ?私です、リトです !」


リトは念話(テレパシー)を使い、私の脳に直接語りかけてきた。


「リト……無事だったんですね……今何処にいるんですか ?」

「魔王の部屋です……まずいことになりました……魔王が儀式を始めようとしています……このままでは魔王が力を取り戻してしまいます !」


リトの声が焦っているように聞こえた。

事態は予想以上に深刻のようだ。


「早く魔王の部屋に行かないと…… !でも場所が広くて見つからないんです……」

「その心配は無用です !」


突然私の中の第六感が研ぎ澄まされ、リトの居場所が頭に浮かんだ。


「何これ……地図を見てないのに……リトが何処にいるのか分かる…… !」

「私が念話(テレパシー)で魔王の部屋の場所を伝えています、これなら迷わずに真っ直ぐ辿り着けますよ」

「分かりました、すぐに行きます !」


時は一刻を争う。

私はリトの念話(テレパシー)を頼りに魔王の部屋に向かった。




私が魔王の部屋へ向かっている間、リリィがペルシアを足止めしていた。

吸血鬼(ヴァンパイア)の使い魔であるリリィと上位魔族らしいペルシアとでは力の差は歴然だった。


「貴女……ワカバ様の友達ですか…… ?」


憎々しい声でペルシアは問う。


「そうですよ、ワカバちゃんは私が初めて出会った友達です」


リリィははっきりと答えた。


「そうですか……ならば殺します」


ペルシアは宣言すると腕に紫色に光る剣を宿した。


「わ、私にはこれがあります !」


リリィは特注のフライパンを握り締めた。

敵の炎球すら防ぐ特別製だ。


「はぁぁぁぁぁ !」


ペルシアは走り出し、リリィに向けて剣を宿した腕を振り下ろした。

リリィはフライパンで攻撃を防いだ。

衝撃により火花が飛び散った。


「私をただの召し使いと侮らない方が良いですよ……私は魔王軍……ミーデ様の下で任務をこなし、数多くの冒険者や騎士を殺してきました……貴女ごときに負けるはずがありません !」


ペルシアは怒濤の勢いでリリィを攻める。

魔王軍の戦闘員として修行を積んだペルシアによるキレのある攻撃に非戦闘員であるリリィは対処しきれずにいた。

防戦一方である。


「くっ……」

「動きが鈍いです !はぁぁぁぁ !」


ドゴォッ


ペルシアは俊敏に動き、無防備なリリィの脇腹に鋭い蹴りを入れた。


「かはっ !?」


血を吐きながらリリィは壁に叩き付けられた。


「う……」

「もう終わりですか…… ?所詮ただのメイド……私の敵ではありませんでしたね」


ペルシアは膝をつくリリィの眼前に掌を突き出し、紫色のエネルギー弾を放とうとしていた。


「さようならです……貴女を消し飛ばしたらワカバ様を探しに行きます……」


ブァァァン


ペルシアは近距離からエネルギー弾をリリィに浴びせ、爆炎が巻き起こった。


「あっけなかったですね……さて、ワカバ様を探しに……」


煙が晴れるとリリィの姿は影も形も無かった。

完全に消滅したと思い、勝利を確信したペルシア。


ガブッ


「いっ……何ですか ?」


突然首筋に鋭い痛みを覚えたペルシア。

彼女は振り向こうとすると、小さな蝙蝠が彼女の首に噛み付き、血を吸っていた。


「貴女は…… !?」

「私の正体は蝙蝠です……これくらい朝飯前ですよ !」


実はペルシアがエネルギー弾を放った瞬間、リリィは小さな蝙蝠形態に変身し、難を逃れたのだ。

リリィはペルシアに吸血し、魔力を奪っていた。


「離しなさい !この蝙蝠メイドが !」


ペルシアは必死に暴れ、無理矢理リリィを引き剥がした。


「くっ……少し魔力を奪われてしまいましたが……貴女を消すくらいの力は充分に残ってます」


ペルシアは噛まれた首を押さえながらニヤリと笑った。


「私も、上位魔族の血を吸ったおかげで、パワーアップしたようです」


リリィは僅かだが紫色のオーラを醸し出した。

これなら上位魔族相手でも少しは渡り合えるはずだ。


「しかし驚きました……この私に無謀にも戦いを挑んできた貴女の正体が、何てことのないただの使い魔だったなんて……」


ペルシアは馬鹿にしたようにリリィを見下した。


「随分舐めてくれますね……自慢じゃないですけど、私は闇ギルドに潜入したり、憤怒(サタン)災厄(カラミティ)と戦ったりしたんですよ ?メイドが本業ですけど !」

「あの憤怒(サタン)災厄(カラミティ)を ?それは感心ですね……ですが……それでも私には勝てません、大人しく殺されなさい !」


ペルシアは一瞬驚くがすぐに冷静になった。

手を突き出し、エネルギー弾丸を放つ準備をした。


「させません !」


キュイイイイイン


リリィは口を開け、超音波を発し、音の衝撃波を放った。

ペルシアはすかさずエネルギー弾を放ち迎え撃った。


パァァァァン


「そんな…… !」


音の衝撃波とエネルギー弾がぶつかり、互いに消滅した。

音波すらかき消す高エネルギーにリリィは戸惑いを隠せなかった。


「並の魔族なら鼓膜にダメージを受けたでしょうが、音速よりも速くエネルギー弾を撃ち相殺してしまえばなんの問題もありません」


ペルシアは相手が狼狽えた所を狙い、エネルギー弾を拡散、四方八方に放った。


ババババババ


休む暇もなく襲い来るエネルギー弾の嵐に対し、リリィはフライパンで弾きながら逃げ回った。


「はぁ…… !はぁ…… !これじゃ……キリがない…… !」


使い魔であるリリィの体力では限界があった。

徐々に疲れが出始め、足取りが重くなった。

必死にかわし続けるものの、エネルギー弾が服を掠り始めた。


「これで最後です !」


無数のエネルギー弾が空中に浮遊し、リリィを包囲した。

彼女の逃げ場は最早無い。


「はぁ……はぁ……もう、走れない……」


疲労がピークを迎え、リリィは膝をついてしまった。


影球包囲弾丸(シャドーシージュボール) !!!」


チュドドドドン


ペルシアの合図と共に無数のエネルギー弾が一斉にリリィを襲った。

彼女は集中放火を浴び、爆炎に包み込まれた。


「あれだけの攻撃を浴びて、無事なはずがありません……」


ペルシアはホッと一息つき、去ろうとした。

だが……


バサァッ


煙の中からリリィが小さい蝙蝠となって現れた。

翼を羽ばたかせ、ペルシアに食らいつくそうと飛びかかる。


「な……何ですって !?」


ペルシアもこれには驚きを隠せなかった。

またしても小さくなり、エネルギー弾の嵐の中をやり過ごしたというのだ。


「はぁ……はぁ……超音撃(ウルトラソニック) !」


キュイイイイイン


リリィは不意打ちの超音波を発した。

近距離で超音波を聞いてしまったペルシアは苦しそうに頭を押さえた。


「くっ……おのれ…… !小細工なんて通用しません !」


ペルシアは片手で頭を押さえながら震える手をかざし、リリィに向けてエネルギー弾を放った。


「今です !」


カァンッ


リリィは待っていましたと言わんばかりに瞬時に人間態に戻り、フライパンを豪快に振り、力一杯エネルギー弾を跳ね返した。


「しまっ !?」


打ち返されたエネルギー弾はペルシアに直撃した。


チュドォォォン


「きゃぁぁぁぁぁぁ !!!」


ペルシアは爆炎に巻き込まれ、絶叫しながら崩れ去った。

自分で放った攻撃に自分が倒されるという皮肉である。

仰向けになって倒れ、ペルシアは気を失っていた。威力の高いエネルギー弾を直に喰らったせいか、ペルシアの顔面は深刻なダメージを受けていた。彼女の肌は黒く焼け焦げ、とても見れたものでは無かった。


「はぁ……はぁ……」


リリィは勢い良く回転したせいか、酔って気持ち悪さに吐きそうになっていた。


「で……でも……この変態を倒すことは出来ましたね……」


友達と言いながら、ワカバを自分勝手に独占しようとした女はワカバの最初の友達であるリリィによって倒された。


「友達は人形ではありません……友達を傷付けようとする人は私が許しません……」


リリィはよろめきながら立ち上がり、ワカバの後を追った。


To Be Continued


追記

どうもリリィとペルシアの決着の付け方に納得が行かなかったので一部修正させて頂きました、ご了承下さい。

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