表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
突入、魔王城編
162/400

第百六十話・優秀な兄、出来損ないの弟



第三層の大部屋にて、マルクとミライに敗れた四天王のヒルデビルドゥは横たわり、苦しそうに呻き声を上げていた。

一命はとりとめたものの、魔獣カードを使った代償で体はボロボロになり、身動きがとれない状態にあった。


「くそぉ……魔界四天王のこの僕が……あんな下等種族に倒されるなんて……おまけに、魔獣カードを使っておきながら……」


ヒルデビルドゥは悔しさから拳を震わせた。


「おやおや……これはまた随分と派手にやられましたねぇ」

「ミーデ……」


ヒルデビルドゥの前に、影からミーデが出現した。


「丁度良かった……回復薬を僕によこせ……少しは動けるようになるだろう」


ミーデはゆっくりと兄に近付いた。


「早くしろ……弟だろ……僕を助けろ…… !」


のんびり歩いてくるミーデに対し、ヒルデビルドゥは苛立ちを露にし、罵声を浴びせた。


「出来損ないの愚弟が……」


ヒルデビルドゥは小声でミーデを罵倒した。


「はいはい待っててくださいよ」


ミーデは仰向けに倒れているヒルデビルドゥの側に寄り、しゃがむと


ザシュッ


ヒルデビルドゥの心臓を手刀で刺し貫いた。


「ぐはぁぅ !」


ヒルデビルドゥは吐血し、胸元から血が広がり、真っ赤に染まっていった。


「何故だミーデ……何故……」

「何故 ?決まってるじゃないですか、今まで私を散々馬鹿にし、虐げてきた酷い兄を、どうして今更助けると思うんですか ?虫が良すぎますねぇ」


苦しむヒルデビルドゥの顔を見ながらミーデはニヤリと笑い、愉悦を感じていた。


「貴方は私を出来損ないの愚弟と呼び、いつも馬鹿にしてくれましたよねぇ……ずっと貴方に復讐したいと思っていました……その日が叶う時がこんなに早く来るとはねぇ……」


ここぞとばかりに、ミーデは息も絶え絶えな兄に恨み言を囁いた。


「下等な魔族に敗北する四天王など不要です、これからはこのミーデが、魔王様と共に魔王軍を復興していきますので、安心して死んでくださいね」

「おのれぇ……」


ヒルデビルドゥは無念を抱きながら震える手をかざし、やがて息絶えた。


「ククク……兄さん、今までご苦労様でした……さあ、これからが本番ですよ」


ミーデは血塗れの手で水晶を持ち上げた。

部下のペルシアと通信を始めるようだ。


「ペルシアさん、聞こえてますか ?」


水晶にペルシアの姿が映し出された。


「はい、ミーデ様」

「いよいよ魔王様の儀式の時が来ました、ワカバさんを魔王部屋まで連れてきなさい」


ペルシアは少し間を置いてから返事をした。


「……分かりました……」

「私は少し用事を済ませてからすぐに向かいますからね」


ミーデは水晶を懐にしまい、ヒルデビルドゥの亡骸に向けて手を突き出した。

するとヒルデビルドゥの口から白い球体のようなものが吐き出された。

ミーデはその魂を引き寄せ、破裂しそうになるくらい強く握り締めた。


「四天王の魂……まずは一つ目……ククク、師匠、カミラ様、ゴルゴ様……貴方達の魂も頂きますよ、悪く思わないで下さい、全ては魔王様のためですから……」


ミーデはヒルデビルドゥの魂を見つめながら邪悪な笑みを浮かべていた。




私はペルシアが料理を作っている隙を狙い、こっそりと部屋を出た。

絶対に部屋から出るなと釘を刺されたが、大人しくしているつもりはない。


見張りに見つからないよう、私は慎重に廊下を歩き、魔王の部屋を目指していた。


「魔王の城だけあって広いなぁ……無事辿り着くかなぁ……」


幸い、殆どの兵達はヴェルザード達率いる侵入者の迎撃に向かった為、廊下はもぬけの殻も同然だった。


「あら、貴方、そこで何をしてるんですか ?」


そこへ一人のメイドが通り掛かり、私に気付いた。

まずい !見つかった…… !


「はぁっ !」


私は咄嗟に掌を突き出すと風が繰り出され、メイドを攻撃した。


「きゃっ !?」


メイドは一瞬のうちに吹っ飛ばされ、壁に頭を打ち付け、気を失った。


「ど、どうしよう……」


武器を介していない為、威力は最小限まで抑えられ、メイドは気絶で済んだ。


「そうだ…… !」


私は咄嗟に思い付き、気絶している彼女と衣服を交換した。

メイド服さえ着れば、簡単には警戒されずに堂々と廊下を渡り歩ける。


「行こう !」


私は決意し、魔王の元へ向かおうとした。


「何処へ行こうというのですか ?」


突然私の足元に影が現れ、そこから手が生えてきた。


「きゃあっ !」


驚きのあまり私は悲鳴を上げた。

影から這い出るように現れたのは、瞳の輝きを失ったペルシアだった。


「ペル……シア……」

「どうして……逃げようとするんですか…… ?ワカバ様ぁ……」


ペルシアは不気味に笑いかけた。


To Be Continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ