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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
突入、魔王城編
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第百五十三話・超魔獣デビル



魔界四天王の一人、悪魔のヒルデビルドゥはマルク達によって追い詰められ、遂に禁断の切り札に手を出した。

理性と命を引き換えに魔族に強大な力をもたらす魔獣化カード。

ヒルデビルドゥはカードをその身に取り込み、醜い巨大な怪物に成り果ててしまった。

筋肉は破裂しそうな程膨れ上がり、肌の色は赤黒く染まり、美しく整った顔はおぞましい猿のような顔つきに変わり、竜のように長い尻尾を生やしていた。

その姿はまさに悪魔そのものだった。


「この前のミノタウロスよかは小さいな……」


かつてのロウに比べると超魔獣デビルはそれほど巨大化はしていない。

天井に頭がつくぐらいだ。

だが感じる魔力はロウの時の非では無かった。


「フハハハ、全身にみなぎるこの波動……俺は究極の力を手に入れたぞぉぉぉ !!!」


超魔獣は己の掌を見つめ、高笑いをした。


「こいつ !喋れんのかよ !」


マルクは超魔獣が会話出来ることに驚いて目を丸くした。

魔界四天王だけあって辛うじて理性を保てるようだ。

それでも口調も変わり、粗暴になってる時点で精神に異常を来しているのは確かだが。

最早かつての面影は欠片も残っていなかった。

魔獣化カードを取り込んだことで超魔獣デビルは常に命を削り続けている。このままではヒルデビルドゥは力尽き、死を迎えるだろう。


「たかが俺達二人を倒すために馬鹿な真似をしやがって……ミライちゃん、二人で何とかあの化け物を倒すぜ !」

「分かったよ~ !」


マルクとミライは気を引き締め、戦闘体勢に入った。

緊張で汗が頬を伝った。

超魔獣デビルは二人を見下ろし、高笑いをした。


「虫けらのように小さいお前らなど、俺の敵ではない !」


超魔獣デビルは口を大きく開き、紫色に禍々しく輝く破壊光線を放った。


魚人水砲(フィッシャーハイドロ) !!!」


マルクはすかさず水のブレスを吐き、超魔獣デビルの破壊光線を相殺しようとした。

ぶつかり合い、拮抗する二つのエネルギー波。

だが徐々にマルクが押され始めた。

ヒルデビルドゥの破壊光線がマルクの水ブレスを飲み込むように迫ってくる。


「くそ…… !何て力だ…… !ぐわぁぁぁぁぁぁぁ !」


光線の撃ち合いに押し負け、マルクは壁まで吹っ飛ばされ、勢い良く壁に叩き付けられた。


「フハハハハハハハハ、雑魚が !次は貴様だ鳥娘 !」


超魔獣デビルは笑い声を上げると、今度はミライに狙いをつけた。


「逃げろ……ミライちゃ……ん…… !」


マルクは掠れた声で、震わせながら精一杯手を伸ばした。


「私だって……負けないよ~!」


ミライは超魔獣デビルの周辺を飛び回り、撹乱する作戦に出た。

デビルの巨体はこの部屋では狭すぎて身動きが出来ない状態にあった。


「ホラホラ~!こっちだよ~!」


飛び回る蝿を叩き潰そうとするように超魔獣デビルはミライを狙って腕を振り回した。


羽根乱針(シャトルラッシュ)~ !」


デビルの大振りな攻撃をかわしつつ、ミライは無数の羽根を飛ばし、デビルに浴びせた。

デビルは鬱陶しく手で振り払った。


「小娘がぁ !はぁぁぁ !」


デビルは口から無数のエネルギー弾を放ち、部屋中に散らばせた。

エネルギー弾はまるで生きてる鳥のように空中を飛び回り、ミライを執拗に追い掛けた。


「何なの~しつこい~ !」


懸命に翼を羽ばたかせ、必死に逃げるミライ。

だがミライはいつの間にかエネルギー弾に包囲され、集中砲火を浴びてしまった。


「きゃあああああ !」

「ミライちゃぁぁぁぁん !!!」


ミライは全身を焼かれ、地上へ落ちていった。


「どうだ !思い知ったかぁ !所詮下等種族 !俺には勝てない !」


ゴリラのように胸を叩き、 興奮気味に雄叫びを上げるデビル。


「あの野郎……調子に乗りやがって !」


壁に打ち付けられ、倒れていたマルクは気合いで立ち上がると気を失っているミライに駆け寄り、抱き起こして肩を貸した。


「立てるか ?ミライちゃん」

「マルクくん~……ありがと~……」

「あの化け物……俺達の手に負えないぜ……普通の魔獣の数十倍強い…… !」


超魔獣デビルは壁を引っ掻き、だだっ子のように暴れていた。

僅かに保たれていた理性が決壊を始めたようだ。

とうとう口数も減り、獣のような叫び声しか上げなくなっていた。


「このままだと、奴は命尽きるまで暴れ続けるぜ…… !」


我を失い、暴走を続ける超魔獣デビル……。

最早止める術な無いのか……。


「そうだ…… !落ち着かせれば良いんだ~ !」


ミライはポンと手を打ち、作戦を閃いたようだ。


「何か思い付いたのか ?」

「まあ聴いててよ~」


ミライはフラフラしながらゆっくりとデビルの元に歩み寄った。

デビルは鋭い目付きでミライを睨み付けた。


「聴いてよ、私の声を……私の歌を……」


ミライは静かに息を整えると、澄んだ声で歌を歌い出した。

小鳥のさえずりのような美しい音色が、部屋中に響き渡った。

殺意を剥き出しにし、今にも襲いかかろうと涎を垂らしていたデビルも思わず聴き入っていた。


「やっぱすげえな……ミライちゃん……」


マルクも呆然としながらミライの歌を聴き入っていた。

不思議と傷が癒されるような感じがした。

デビルの険しかった顔は大人しい小動物のように穏やかになり、殺気立ち、全身から止めどなく溢れていたオーラは消失し、デビルは沈静化し、戦意を失った。


「さっきまでの暴れっぷりが……嘘のように大人しくなりやがった…… !」


だがデビルは突然苦しみ出し、仰向けに倒れ込んでしまった。

衝撃で地面が揺れた。


「どうしたんだ !?まさか……限界が来たのか…… !?」


デビルの体は崩壊寸前だった。体内に取り込まれたカードが彼からエネルギーを奪い、蝕んでいた。

デビルは体の内側を剣で抉られるような想像を絶する激痛に顔を歪ませていた。


「可哀想だよ~……助けられないの~ ?」


ミライはマルクの肩を揺さぶった。


「んなこと言われても……いや待てよ ?」


マルクはデビルの胸の辺りから紫色の光が漏れているのに気付いた。


「あそこにカードが埋まってんだな……あれだけを上手いこと取り除けば、助かるかも知れねぇ」


かつてリトが魔獣化したヴェロスからカードのみを取り除き、救ったことがある。

決して不可能では無い。


「でも、そんな器用なこと出来るの~ ?」

「さあな……だが何もやらねえよりはマシだろ」


マルクは両腕のヒレを擦り、火花を飛び散らせた。


「一か八か……沈静化してる今がチャンスだぜ……」


マルクは息を飲み、覚悟を決めると大地を蹴り、高く飛翔し、天井まで届きそうな場所まで跳んだ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ !魚人穿孔(フィッシャースクープ)ゥゥゥゥ !」


マルクは天井に足をつけ、蹴り上げると勢いに任せ、隕石のように落下し、デビルの胸目掛けて突撃した。


「でりゃぁぁぁぁぁぁぁ !!!」


ズブァッ


マルクは突撃するとデビルの胸の発光した部分のみをヒレで切り裂き、埋め込まれたカードを抉り取った。


「ぐおおおおおおおおおお !!!」


デビルは絶叫し、全身が発光した。

やがてデビルの巨体はみるみるうちに縮小し、元のヒルデビルドゥの姿に戻った。

ヒルデビルドゥは気を失っていた。

魔力が枯渇し、衰弱している状態だったが、何とか一命を取り止めたようだ。


「助かったの~ ?」

「多分な……ロウの時みたいな手遅れにはなっちゃいねえ……はずだ……」


マルクは懐から水筒を取り出すと、仰向けに倒れているヒルデビルドゥの口に注いだ。


「これで少しは楽になんだろ……暫くは大人しく寝てな……」


ミライはマルクの側に寄り、肩を支え、笑顔で微笑んだ。


「マルクくん、やったね~」

「へへっ……ミライちゃんが、あの怪物を大人しくさせてくれたおかげだぜ、お前の歌は本当に良い……おかげで俺もだいぶ元気になったぜ」


マルクはやや頬を染めながらミライに微笑み返した。


「そんなこと~……あるよ~へへへ~」

「さ、エルサ達の所に向かうぜ」

「うん」


二人は第三層を後にし、先に急ごうとした。


「ぼ……僕は……魔界四天王なんだ……いつか……誰よりも……偉くなって……あいつらを……見返して……やる……」


ヒルデビルドゥの掠れた悲痛な寝言が聞こえた。

四天王の中でも若手である彼は、他の三人に対してコンプレックスを抱いていた。どんなに頑張っても超えられない壁を感じていた。

魔獣カードに手を出したのも、功を焦ったが故のことである。


「…………」


マルクとミライは何も言わず、その場を去った。


To Be Continued

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