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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
突入、魔王城編
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第百四十四話・愛に狂った女



突如俺達の前に姿を現した絶世の美女。

彼女は魔界四天王の1人、吸血鬼(ヴァンパイア)のカミラ。俺と同種のようだ。

彼女は透き通るような白い肌、赤く艶っぽい唇、貴族のような佇まい、この世のものとは思えない程美しく高貴な女だった。


吸血鬼(ヴァンパイア)ってのはどいつもこいつも美形ばっかなのか ?」


ヒュウは俺の顔をマジマジと見つめながら言った。


「お主らは中々の強さじゃな、我ら魔王軍をたった10数人で蹴散らすとは、憤怒(サタン)災厄(カラミティ)を倒しただけのことはある……だがよくこんな辺境な魔界に辿り着けたな」


カミラは感心した様子だった。


「アンタらんとこのダークエルフが寝返って道案内してくれたおかげだよ」


俺はカミラを煽った。


「あの小娘……後で妾が罰を与えてやらねばな……だが今はお主らの相手が先じゃ」


カミラは憎たらしく吐き捨てると腕に力を込め始めた。

彼女の手が赤紫色のオーラを纏い、禍々しく発光した。


「来るぞ、ヒュウ」

「ああ……」


俺は血の剣を構え、ヒュウは蛇の首になった腕をカミラに向けた。


「はぁぁぁぁ !」


俺とヒュウは一斉に走りだし、カミラに斬りかかった。

ヒュウは蛇の首を伸ばし、カミラの首筋を狙い、噛みつこうとした。


「青いな……若人よ……」


カキィン


カミラは素手のみで俺の剣を受け止めた。

腕が押さえつけられたかのように動かない…… !

ヒュウの蛇の腕もカミラに掴まれ、動かせなくなっていた。


「くっ……なんて力だ…… !」

「己の血液を武器へと変える……吸血鬼(ヴァンパイア)特有の能力のようじゃが……まだまだひよっ子じゃな、そっちの蛇男も動きが鈍い、止まって見えるぞ」


カミラは余裕綽々としていた。

女王の風格さえ感じる程だ。


「何千年も生き続けた妾には勝てん !はぁっ !」


キィン カキィン キキィン


金属音が鳴り、火花が飛び散る。

俺がいくら剣を振るおうと、カミラは表情一つ変えず、素手でいなしてくる。

恐らく手に魔力を集中させ、鋼鉄のように頑丈になっているのだろう……。


「どけ !ヴェル !はぁっ !」


ヒュウは蛇の首をカミラの全身に巻き付かせ、拘束し、動きを封じた。


「ハッハッハ、これでてめえは動けねえぜ……ぐっ !」


だがカミラは手刀でヒュウの腕をバラバラに切り落とし、拘束から逃れた。


「うごぁぁぁぁぁぁ !」


ヒュウは痛みに悶え、腕を押さえながら絶叫した。


「妾の前に平伏すが良い…… !お主らでは妾に傷一つつけられんぞ ?」


くそっ !とんでもねえ強さだ…… !今までに戦った奴等とは桁が違う !


「舐めるなよ…… !はぁぁぁぁ !」


ヒュウは片腕を再生した。

かなり体力を消耗するらしい。

俺とヒュウは一旦カミラから離れ、距離をとった。


「アンタ、数千年生きてるって言ったよな ?どういうことだ ?吸血鬼(ヴァンパイア)と言えど、寿命はそんなに長くねえ……精々数百年がやっとだろ」


俺はカミラの言ってた言葉に疑問を感じ、質問を投げ掛けた。

そんなに長い時間を生きられる者などいるわけがない。

しかも20代と変わらぬ若さを保ち続けている。

ましてや同じ吸血鬼(ヴァンパイア)だ。


「妾が数千年もの時を何故生きていられるのか、気になるようじゃな……では教えてやろう……」


カミラは指を鳴らすと、突然俺とヒュウの足元から人が地を割って飛び出してきた。


「何 !?」


カミラの使役する不死族(アンデッド)隊が俺達を襲う。

ゾンビに屍鬼(グール)、スケルトンなど様々だ。


「くっ……離せ !」


不気味に唸り声を上げながら不死者(アンデッド)達は俺とヒュウにしがみついた。

どれだけ力を入れようと簡単には引き剥がせない。


「こいつら…… !」

「驚いたか ?こやつらは妾の可愛い下僕じゃ、妾の言うことをなんでも聞いてくれる有能な駒……」


不死者(アンデッド)はその名の通り、死なない。というより既に死んでいる。

つまり、カミラの操り人形というわけだ。


「こやつらは元々は人間だったのじゃ、妾が直々に人間界から調達してのう」

「人間を ?何のためにそんなことを !」


カミラはゲスな笑みを浮かべた。


「妾は美しい……じゃが人は誰でも歳を取り、やがて老いて死んでしまう……妾も例外ではない……じゃが妾は気付いたのじゃ……老いる前に若い人間から血を吸い尽くし続ければ、若いままでいられると」

「何だと…… !?」


カミラの操り人形である不死者(アンデッド)達は皆、彼女の身勝手な欲望によって拐われ、命を奪われた犠牲者達だった。


「勿体ないので死体を有効活用して新たな生を与えてやったのじゃ、寧ろ感謝してほしいものよ」


カミラは高笑いをした。

彼女は若い人間の血を吸い続け、その度に寿命を伸ばし、永遠の若さを求め続けた。


「悪趣味なやつだ」


ヒュウは引いていた。


「そんなに若作りに拘って、どうしたいんだ ?」

「決まっておろう……我らが仕えし、魔界を統べる絶対的な支配者……魔王様のお側にいるのに相応しい女でいる為じゃ !」

「は ?」


俺とヒュウは目が点になった。


「魔王様は勇者によって倒され、お体を失われてしまった……じゃがあのお方は必ず復活される !その為には長い年月をかける必要があったのじゃ……もし魔王様が復活しても、その時の妾が醜い老婆になっては台無しじゃろ ?じゃから妾はいつまでも美しい若い女でい続けなければならぬのじゃ !」


カミラは熱く熱弁した。

要は一人の男に熱中する恋する乙女だったわけだ。

その為に多くの命が犠牲になったのは見過ごせないがな。


「お主らも妾の血となり肉となり、糧となってもらうぞ !同じ吸血鬼(ヴァンパイア)と竜族の大蛇(ヒュドラ)の魔力……さぞこの身を芯まで潤してくれることじゃろう」


カミラは恍惚の表情を浮かべながらこちらに近付いてきた。

まずい !俺達はこの女の餌にされてしまう


「安心せい……お主らの死体は我が不死族(アンデッド)隊の兵士に加えてやろう、さぞかし強い兵になるじゃろう……」


絶対にお断りだ !


「妾は若く生き続けなければならんのじゃ……魔王様の為に……魔王様の一番の女でいる為に…… !」


カミラは俺の目の前まで来ると手を伸ばした。


「ヴェル !」


ヒュウが叫ぶ。


「悪いな……アンタの若作りの犠牲になるなんて……死んでもゴメンだ !」


俺は蝙蝠の翼を生やし、翼型(ウイングタイプ)に変身し、不死者(アンデッド)達を振り払った。

不死者(アンデッド)達は呻き声を上げながら風圧で地面を転がった。


「ちっ……大人しくしていれば痛い目に遭わずに済んだものを……哀れな奴じゃ」


カミラは舌打ちをした。


「やるじゃねえかヴェル、はぁぁぁぁぁぁぁ !」


ヒュウも本気を出し、気合いを込めながら絶叫した。

九つの首を持つ本来の姿、大蛇(ヒュドラ)へと変身した。


「それがお主らの本気か……」


カミラは全く動じず、なおも余裕の表情だった。


「このイカれたババアに思い知らせてやろうぜ」

「俺達の力を !」


魔界四天王・カミラとの第二ラウンドが始まろうとしていた。


To Be Continued

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