第百四十三話・吸血鬼と大蛇
「はぁぁぁぁぁ ！」
俺は蝙蝠の翼を生やし、翼型へと変身した。
ヒュウも片腕を蛇の首へと変質させた。
少し本気を出してやるか。
俺達は他の皆を城に行かせ、残った魔王軍の相手を務めることになった。
「さあ、ゴミ掃除の時間だぜ」
俺は空を飛び、空中に待機した。
そして自らの血液を固め、深紅の邪剣を生成し、構えた。
「はぁっ ！」
俺は剣を振り、空から衝撃波を放ち下にいる魔王軍に浴びせた。
「ぎゃあああ ！！！」
風圧で土砂が舞い、魔族達は悲鳴を上げながら吹っ飛ばされていった。
「眠ってろ ！！麻痺牙 ！」
ガブッ
片腕を伸縮自在に伸ばし、
ヒュウは片っ端から魔族達の肩に蛇の牙で噛み付き、麻痺毒を流し込んだ。
噛まれた魔族達は全身が痺れ、次々と倒れていった。
「後は魔獣のみだな」
魔獣達は俺とヒュウを鋭く睨み付け、今にも食い殺さんとする勢いだった。
「悪いが、お前ら程度、今の俺達の敵じゃねえ」
俺は翼を広げ、風を斬りながら大空を飛び回り、魔獣へと向かっていった。
「うおおおおおおおお ！」
ズバッ
俺は剣で一体の魔獣の胴体を一撃で真っ二つに切り裂いた。
反撃の隙は与えない。一撃で仕留めてやる。
「流石は吸血鬼、半端無い火力だな……俺も遅れを取るわけにはいかねえ」
ヒュウは片腕の蛇の口を大きく開け、二体目の魔獣にその銃口を向けた。
「大蛇凍結 ！」
ヒュウは蛇の口から凄まじい冷気を放った。
魔獣は全身に冷気を浴び、たちまちのうちに氷漬けになり、動けなくなった。
「イヤァ ！」
バゴォン
ヒュウはもう片方の拳で凍った魔獣を殴り、粉々に砕いた。
「どうした、もう終わりかぁ ！」
ヒュウはもう一体の魔獣に冷気を浴びせ、カチカチに凍らせた。
「はぁぁぁ ！」
ドゴォン
ヒュウは高く飛び上がり、雪像のように動かなくなった魔獣を蹴り飛ばし、粉々に砕いた。
凍った魔獣の欠片が辺り一面に散らばった。
「残るは一体 ！」
俺は血の剣をこちらに向かってくる魔獣を狙い、大きく縦に振りかぶった。
「うおおおおおお ！」
バシュッン
最後の魔獣は俺の剣の一撃で一刀両断され、崩れ落ちていった。
俺とヒュウにより、四体の魔獣は全員倒され、辺り一面は静かになった。
思ったより早く片付いたな……。
軍が弱体化してるとは聞いていたが……。
「ヒュウ、お前も中々やるな……この前より強くなってないか ？」
「ヴェル、お前達がオーガの里に行ったり憤怒の災厄と戦ったりしている間、俺達が何もしてないとでも ？俺達も敗北を経て、更に修行し、強くなってるのさ」
ヒュウはドヤ顔をしながら腕を組んでいた。
「そいつは頼もしいな……」
俺達は周りを見渡した。
仲間達は無事に城に入れたようだ。
何とか魔王軍は全員倒した。
最小限の力しか使わなかったおかげが、それほど疲れてもいない。まだまだ余裕だ。
「そろそろ俺達も城に行くか」
「ああ」
俺とヒュウは城へ向かおうとした。
「待つのじゃ ！」
その時、空から女の声が響いた。
俺達は声のする方向を向くと、城の屋根に１人の女が立っていた。
女は城の屋根からジャンプし、凄まじいスピードで地面に着地した。
「何だこの女 ！？」
俺達は思わず身構えた。
170センチはあるスタイルの良い長身……。
可憐で凛とした美人……。
そして彼女から感じる、ただならぬ魔力……。
さっきの雑魚共とはまるで違う。
「お嬢さん、随分派手な登場だなぁ、アンタも魔王軍か ？」
ヒュウは女を煽った。
「妾は魔界四天王の１人……吸血鬼のカミラじゃ、お主らに興味があってな……妾直々に相手をしてやるぞ」
カミラは不敵な笑みを浮かべた。
吸血鬼か……俺と同じ種族とはな……。
更に彼女から感じる魔力は俺以上だ。
しかも四天王を名乗ってるということは、こいつと同等かそれ以上の力を持つ存在が後三人控えてるってわけか……。
遊んでる場合じゃなさそうだ。
「ヒュウ、油断するな、この女はヤバい」
「お前が言うならそうなんだろうな」
俺とヒュウは警戒を強め、構えた。
「お主らのことはずっと見ていたぞ……面白い、妾の遊び相手になってくれぬか ？」
カミラは優雅に構え、手招きをして俺達を挑発した。
俺とヒュウvsカミラ……。
最初の四天王戦が始まろうとしていた。
To Be Continued
