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ランプを片手に異世界へ  作者: 烈斗
エルフの騎士編
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第十二話・いきなり災難



吸血鬼(ヴァンパイア)のヴェルザードと侍女リリィが仲間に加わった。

私達は町を目指し、林の中を歩いていた。


「本当にこの道で合っているんですか ?」

「昔通った覚えがある。間違いない」

「リトもそんなこと言ってたような……」


私は一抹の不安を覚えながらもヴェルザードに従った。


「所でヴェルザードさんは吸血鬼(ヴァンパイア)なんですよね。じゃあリリィさんも吸血鬼(ヴァンパイア)なんですか ?」

「まさか~私はご主人様の使い魔ですよ。私の本当の姿はー……」


突然リリィは煙を発生させた。

煙が晴れると、リリィの姿はなく、代わりに小さくて可愛いファンシーな蝙蝠が空中に羽ばたいていた。


「これが私の本当の姿です。人の姿の方が何かと便利なので普段はあまりお見せしませんが」


蝙蝠の姿になったリリィはニッコリ笑った。


「何というか……可愛いです」


私も小さな蝙蝠の姿のリリィを一目で気に入った。


「そう言ってくれると、私も嬉しいです~ ♪」

「おい、もうすぐ出口が見えてきたぞ」


ヴェルザードは指を指した。出口の方向から光が差し込んでいた。


「あぁ……やっとですよ……やっと暗い世界から解放される……」


暗くじめじめした林で過ごしてきた私はやっと日の光を浴びれると思うと涙目になっていた。


「俺は日に当たるのは好きじゃないんだがな……」

「え ?やっぱり吸血鬼(ヴァンパイア)って日光とかに弱いんですか ?」

「まあな、貧血になる」

「灰にはならないんですね」

「なるか」


ヴェルザードは無愛想に答えた。


「圧倒的に高い魔力を誇る最上位種クラスだけあって、弱点も多いらしいですね」


ランプの中のリトは皮肉るように言った。


「お前だって三分間しか実体化(リアライズ)出来ねえ欠陥品だろ、お互い様だ」


ヴェルザードがムッとして言い返した。


「なんですって ?また凸ピン喰らいたいですか ?」

「まあまあ二人とも……」


私は二人を落ち着かせようとした。またあんな派手なケンカをやられたらたまったものではない。


「皆さん、いよいよ町ですよ !」


いつの間にか人間態になったリリィがはしゃぎながら足早に走って行った。


「あ、待ってくださいよ !」




こうして私達は次のステージへと向かった。


「ここが町かー」


私は異世界に来て初めての町に着いた。

町の雰囲気はいかにも中世ヨーロッパ風でタイムスリップしたような気分になった。


「私も例に漏れず中世ヨーロッパ風な世界に転移してきたんですね……」


異世界モノの王道である。


「ワカバちゃん、ご主人様 !ついに町ですよ町 !」


ずっと暗い洋館で暮らしてきたリリィははしゃいでいた。とても嬉しそうでこっちも釣られて笑顔になる。


「町には珍しい服とか売ってるんですよね~早く着てみたいな~ ♪そう思いませんかご主人様……ってご主人様ァ !?」


リリィはヴェルザードに同意を求めようとしたがヴェルザードはボーッとしながらヨロヨロ歩いていて、今にも倒れそうになっていた。私はすんでのところで彼を支えた。ヴェルザードの顔は青ざめていた。


「ちょっ、どうしたんですか?大丈夫ですか ?」

「日に当たり過ぎた……気持ち悪い……歩きすぎて疲れた……」


……吸血鬼(ヴァンパイア)なのに体力無さすぎる……。


「情けないですねぇ……最上位種の名が泣きますよ」


リトが弱ったヴェルザードを見て嫌みを言う。


「リト、そんな事言っちゃダメですよ !」


私は煽るリトを諌めた。


「フン……ずーっとランプの中にいりゃ疲れも感じないだろうよ……気楽なもんだな……」


具合悪そうにしながらも悪態を忘れないヴェルザード。


「何ですって ?」「やるかぁ ?」


またもやいがみ合う二人。目線からバチバチ火花が飛び散るのが見えそうだ。


「もう二人ともやめてくださいって……」

「そうですよ!早く休める場所に行かないと !」


リリィの言う通りだ。少し休めば体調も良くなるかもしれない。


「血が足りないんだ……お前の血を吸わせてくれ……」


ヴェルザードが私にとんでもない頼みをしてきた。


「ええ !?」


私は困惑した。確かに血を吸えば回復するかもしれないけど……。


「許しませんよ !私は断固として !弱っている今の状態なら許してくれるとでも思ったのですか ?この卑怯者め !」


リトが猛烈に反対した。


「まあまあ、リト落ち着いて……」


私達があたふたやり取りをしていた時、正面から突き抜けるように鞄を抱えた男が走ってきた。


「邪魔だ !どけぇぇぇぇ !」


男は刃物を隠し持っていた。

更に男の後ろで女性の叫び声が聞こえた。


「誰かー !そいつを捕まえてー !」


「え ?まさか、ひったくり犯 !?」


この世界にも居るんだ……じゃなくて、このままじゃ私達も危ない !ヴェルザードはのびてるし、リリィは箒を構えてるけど頼りないし……二人ともダメみたいだ。私は……。


「もうどうにでもなれ !」


私はヤケクソになりながら向かってくる男に対してランプを突き出した。

私は怖くて目を瞑っていた。


「何だそりゃ !?ナメってっとぶっ殺すゾォォォォォ !!!」


男は私を狙って刃物を振り上げた。


赤色放射(レッドオーラ) !!!」


ランプから声が響いた。

すると赤く熱いオーラが私の体を包んだ。


「え……これは……」


私は恐る恐る目を開けると目の前の男は真っ青に震えており、手に持った刃物を落とした。


「な、なんだこの女……化け物か…… ?」

「……私が…… ?失礼な人ですね……」


まさか初対面の刃物持ったひったくりに化け物呼ばわりされるとは思わなかった。私はちょっぴり傷ついた。


「今のはランプの中から私の魔力を与え、貴方を包み込んだんです」


ランプの中でリトが答えた。


「そ、そんな器用な事が出来るようになったんですか……」

「度重なる実体化(リアライズ)により会得しました。おかげで実体化(リアライズ)せずとも貴方を多少の脅威からお守り出来ますよ」

「あ……ありがとう……ございます……」


男は震えながら、走ってきた方向へ戻り、逃げ出した。


「くっそぉ !何でこんな所にあんな化け物が !」


スパンッ !


刹那、男をかまいたちが襲った。男の衣服は瞬く間に切り刻まれ、裸体を露にした。

持っていた鞄は無傷だった。


「いやぁぁぁん」


男は腕で大事な部分を隠しながら座り込んだ。

私には何が起きたのか分からなかったが、リリィ、ヴェルザードは何かに気付いたようだった。


「この速さ……この魔力……ただ者ではありません…… !」

「まさか、町に来てそうそうやべぇ奴と出くわすとはなぁ……」


リトも何か感じ取っている様子だった。


「この力……興味深いですね」


やがて、剣を構え、鎧を纏った女が男の前に現れた。女はゆっくりとへたりこんだ男に近づき、男の顔に剣を付き出した。


「ひっ !?」

「か弱き者に力を奮い、欲望のままに蹂躙する……。これ以上貴様に好き放題させん !」


男を全裸にひんむいた女は鋭く言い放った。

挿絵(By みてみん)


To Be Continued

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