第百三十六話・一致団結
皆さんこんにちは、烈斗です。
約40話以上かかった憤怒の災厄編も終わり、遂に新章です!
宜しくお願いします!
俺やマルク、リリィ、ミライ、コロナ、クロスは水晶を頼りにようやく憤怒の災厄のいる町へ辿り着いた。
町は半壊し、魔獣にでも襲撃されたかのような酷い有り様だった。
崩壊した建物に散乱する瓦礫……。
相当激しい戦闘だったのだろう……。
辺り一面は血に染まり、兵士達や冒険者達の屍が無惨に転がっていた。
とは言え、元々魔王軍幹部を誘き出す作戦を取っていたため、事前に住民の避難は完了していたことが幸いと言えようか……。
「派手にやったなぁ……」
「おい !エルサがいるぞ !」
辺りを歩き回っていた俺達は、エルサとルーシーが座り込んでいるのを発見した。
どうやら無事のようだ。
「ヴェルザードか……」
エルサは歯を食い縛り、静かに涙を流していた。
「エルサ…… 大丈夫か ?」
「ていうかこいつ憤怒の災厄の…… !」
マルクはルーシーの顔を見て警戒し、身構えた。
「待って…… !この人は……敵じゃないよ……」
コロナはルーシーを見て何かを察したのか、マルクを制止した。
「ルーシーは改心した……私達の敵じゃない、安心してくれ……」
エルサもルーシーを庇った。
「お前らが言うなら……大丈夫か……」
マルクは渋々納得し、警戒を解いた。
「教えてくれ……何があったんだ ?ワカバはどうしたんだ ?」
「ああ……実は……」
俺はエルサから事情を全て聞いた。
憤怒の災厄のヴェロスを打ち倒し、戦いは終わった。
だがその直後、ミーデとか言う悪魔が現れ、ワカバを連れ去った……。
エルサとルーシーは魔力を使い果たし、何も出来なかったと……。
「そんな……ワカバちゃんが…… !」
「また……守れなかったよ~……」
各々、ショックを隠せずにいた。
ワカバが拐われるのはこれで二度目だ。
「すまない……私はずっとそばにいながら……ワカバが連れ去られるのを黙って見てることしか出来なかった……騎士失格だ……」
「自分を責めるなよ、お前だってクタクタになるまで戦い抜いたんだから……それに俺達だってもっと早く駆け付けていればこんなことには……」
俺はエルサに励ましの言葉をかけた。
「それにしても、魔王軍はワカバを連れ去って、何を企んでやがる……」
憤怒の災厄は全員倒したが、魔王軍との戦いは終わらなかった。
その後俺達は他の騎士団達と協力し、死んでいった者達の土葬、町の復興に尽力した。
帰って来れたのは一週間後だった。
その間、ワカバが魔界でどんな目に遭わされているか……知るよしも無かった。
エルサの家に戻った俺達はルーシー、ヴェロスを匿うことにした。
ヴェロスはベッドの上でいつまでも目を覚まさずにいた。
「お兄ちゃん……」
魔獣化した代償は想像以上に大きかった。
ルーシーは悲しげな表情でヴェロスの手をいつまでも握っていた。
いつの日か目覚めることを信じて……。
捕らえた幹部達は牢獄に送られた。
アイリ、サーシャ、フライの三名だ。
デュークはオーガの里で引き取ることになった。
特に被害も出なかったので、雑用でもさせる気だとか。随分と寛容なことだ。
だがルーシーは半ば洗脳され、ヴェロスは意識不明の状態だ。牢獄送りは流石に気の毒だと思い、国は一旦見送ることにした。
それに、滅多に私情を挟まないあのエルサが妹の為に土下座をしてまで懇願した。
せめて妹に罪を償う機会をくれと……。
だが、これは逆に好機だった。
ルーシーは魔界への道のりを知っている。
本来魔界と人間界は遠く離れており、魔界への道を知る者は皆無で、こちらから向かうことは容易ではない。
だが魔界で暮らしていた彼女に従えば、魔界に乗り込んでワカバを助けることも不可能ではない。
俺はルーシーに頼んでみた。
一人の少女を助けるために国がわざわざ魔界に喧嘩を売りに動くとは思えない。
国に頼らず、俺達で解決するしかない。
その為にはルーシーの協力が不可欠だ。
「ルーシー、お前は牢獄送りにならずに済んだ、その代わり、お前には使命がある、魔界への案内をしてくれ、共にワカバを助けるために…… !」
「うん……こうなったのも……僕のせいでもあるし……いくらでも教えるよ」
ルーシーは魔界へのルートだけではなく、現在の魔界の情勢も教えてくれた。
魔界は深刻な人手不足に苛まれていた。
魔王サタンは肉体を失い、剣に魂を移している状態で、代わりに魔導師デビッドが軍の指揮を執っている有り様だった。
有能な臣下はほんの四人、兵の数も不十分。
更に幹部だった憤怒の災厄も既に全滅させられた。
ワカバを狙うのも、軍を再興する為なのかもしれない。
攻め込むなら弱体化している今が好機だ。
「確かにチャンスかも知れないですけど……それでも私達だけで行くなんて無謀ですよ……」
「うん……魔界には怖い魔物が沢山いると思うし……」
無限の結束の戦力は俺、マルク、エルサ、コロナ、クロス、ミライ、リリィの七人。それにルーシーが加わったとしてもたったの八人。
魔界全体を敵に回すには明らかに数が足りなかった……。
「面白そうな話をしてるじゃねえか」
そこへ、ラゴン達率いる爬虫の騎士団が勝手に家に入ってきた。
「爬虫の騎士団の皆さん !?」
「何勝手に入ってきてんだよ !」
俺は呆れながら指摘した。
「まあそう言うなよ、それよりお前らだけで魔界へ殴り込みに行くんだって ?水臭いな、俺らも混ぜてくれよ」
ラゴンは興味津々に言ってきた。
「お前らだけじゃ不安だろ ?それに、憤怒の災厄を譲ってやったんだ、今度は俺らにも戦わせてくれよ」
「確かに……今は少しでも戦力が欲しい……」
エルサは腕を組ながら検討していた。
「それに、今までお前達には迷惑をかけた、だから今度はお前達の力になりたいんだ」
ヒュウは俺に少し照れ臭そうに言った。
「ヒュウ……」
「私達は五人、あんた達と合わせて十三人……悪くないでしょ ?」
メリッサはドヤ顔を決めた。
確かに彼等は竜族の精鋭……。一人一人が一騎当千の実力者。かつて俺達も大苦戦した連中だ。
頼もしいことこの上ない。
「俺もいるぜ !」
そこへ、グレンも唐突に入ってきた。
水晶を頼りにここを突き止めたらしい。
「グレン !どうしてここに !?」
「オーガの里から抜け出して来たんだ、やっぱり神器は自分で取り戻さなくちゃって思ってさ」
かつてオーガの里で祀られていた神器・迅雷鬼剣はデビッドによって奪われてしまっていた。
「今更追い返すわけにも行かねえし、しゃあねえな !その代わり、足を引っ張るんじゃねえぞ !」
「ああ !マルク兄ちゃん !」
グレンとマルクは拳を合わせた。
この幼い少年も、鎧魔獣にとどめを刺す程の秘めた力が宿っている。戦力としては申し分ない。
いざという時は俺達が守ってやれば良い。
ブラゴに後で謝っておこう。
「よし……それじゃ、皆で魔界に行って、ワカバを助けに行こうぜ !」
「「「おー !!!」」」
無限の結束、爬虫の騎士団、ダークエルフにオーガ族……。
それぞれ生まれも育ちも違うてんでバラバラな俺達だが、たった一人の少女を救う為、一つに団結した。
もう恐れるものは何もない。
数日後、準備を終え、俺達は魔界へと足を運んだ。
To Be Continued




